近年では、高齢者の生活の質を高める手段の1つとして、介護の場でも美容ケアの重要性が注目されており、介護美容が取り入れられる機会が増えています。
しかし、「介護美容」という言葉を耳にしたことはあっても、「実際にはどんなことをするの?」「どんな効果があるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、介護美容のサービス内容や、高齢者や障がい者が介護美容を受けることで期待できる効果を紹介します。
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近年では、高齢者の生活の質を高める手段の1つとして、介護の場でも美容ケアの重要性が注目されており、介護美容が取り入れられる機会が増えています。
しかし、「介護美容」という言葉を耳にしたことはあっても、「実際にはどんなことをするの?」「どんな効果があるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、介護美容のサービス内容や、高齢者や障がい者が介護美容を受けることで期待できる効果を紹介します。
介護美容サービスには、以下のようなものがあります。
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それぞれ、どのような内容のサービスが受けられるのでしょうか。詳しくお伝えします。
スキンケアは肌に潤いを与え、清潔に保つために行う介護美容です。
化粧水や乳液、ローションやクリームなど肌質に応じて使用します。マッサージしながら行うことで、血行促進やリラックス効果が期待できます。肌の状態が整うことで、気分も明るくなるでしょう。
また、マッサージで唾液腺を刺激して唾液分泌が促されることで、口腔機能の維持・向上にもつながります。
美容師や理容師の資格を持った人が自宅や介護施設などを訪問して、ヘアカットやヘアカラー、パーマ、髭剃りなどを施術します。
意思疎通が難しい方や寝たきりの方、移動に介助が必要な方など、美容院に連れていくのが難しい場合でも、本人の心身状況に応じて臨機応変に対応してもらえるため安心です。
髪を切ったり、カラーやパーマをしたりすることは、見た目にも大きな変化があり、気分転換にもなりやすいです。
白髪だった方が落ち着いたダークカラーにすることで若返って見えたり、表情が明るくなったり、意欲が増すなどの効果が期待できます。
「化粧療法(メイクセラピー)」としても注目されているメイクは、見た目を整える効果があるのはもちろん、自己表現の方法としても重要視されている施術の1つです。
口紅(リップ)や頬紅(チーク)を塗るだけでも、女性らしさを感じることで、表情やしぐさに変化がみらやすいです。
身体的な衰えや孤独から、精神的にネガティブになりやすいこともある高齢者は、外出の機会が減少する傾向にありますが、メイクをして気持ちが前向きになり、自信を持つことで、外出や他者との交流の意欲が向上し、孤独感の緩和にもつながることが期待できます。
また、化粧療法を「回想法」として取り入れるケースもあります。回想法とは、過去に自分が化粧をしていた習慣を思い出したり、懐かしく思ったりすることで、脳を刺激し、活性化させ認知機能の改善を目指す、認知症の非薬物療法の1つです。
そのため、以前使用していた化粧品や、それに近いものを用意することもおすすめです。見るだけでも懐かしい思い出がよみがえるでしょう。
そのほかにも鏡の大きさや机の高さを調整するなど、自分でメイクできるように環境を整えることも大切です。
アロマセラピーとはラベンダーやヒノキなどのエッセンシャルオイル(植物から抽出した精油)の香りをかいだり、皮膚から吸収させたりすることにより、心身のリラックス効果が期待できる自然療法です。芳香療法と呼ばれることもあります。
希釈したエッセンシャルオイルをマッサージするように身体や顔に塗りこむトリートメント法では、次のような効果が期待できます。
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心地よい香りに包まれながらリラックスした状態で肌と肌が触れ合うことで、安心感につながります。また、高齢者に多い変形性関節症による膝痛や、がん患者の疼痛軽減などさまざまな症状・疾患に対して症状の緩和を目的に使用されることもあります。
その他にもエッセンシャルオイルを無水エタノールと混ぜたものをお湯に入れ沐浴をする方法や、アロマポットやアロマディフューザーなどを使用して、空間に香りを広がらせて香りを楽しむ方法などがあります。
エッセンシャルオイルには花の香りや森林の香り、フルーツの香りなどさまざまな香りがあり、性別を問わず取り入れやすい施術です。
ネイルケアでは、甘皮の処理や爪切りなどの爪をきれいに整えるケアや、マニキュアやシールなどを使用して爪に色を乗せて彩るなどの施術が行われます。
ジェルネイルは落とす際に爪に大きな負担になるため、施術に時間がかからないマニキュアでネイルをすることがほとんどです。
指先は視界に入りやすいため、きれいに整えられた爪を見るだけでも気分が高まりやすいほか、話のきっかけにもなり、他者と交流しやすい効果も期待できます。
介護美容は、介護が必要な方を対象に本人の心身状態や希望に応じて、自宅や介護施設などの場所で提供されます。介護美容を通して心身のケアがされることで、心の健康や生活の質(QOL)、日常生活動作(ADL)の向上が期待できます。ま
た、心身ともに自立し、健康的に生活できる期間である「健康寿命」の延伸にも効果が期待できるでしょう。
以下で詳しく解説します。
メイクをして明るくなった自身の表情や、ヘアケアをして外見が整うなど、見た目の変化があることで、自己肯定感や自尊心が高まりやすいです。
こうした変化から周囲からも褒められることで自信を持つことができ、人との交流も積極的になり、おしゃれをして外出するなど、ポジティブな行動につながり、生活の質(QOL)の向上にも効果が期待できます。
介護美容によりスキンケアを行ったり、メイクをしたりして身だしなみを整えることは、幸福感を高めることにつながります。
また、安心し、リラックスした状態で肌と肌がふれあうことで、幸せホルモンの1つであるオキシトシンが分必されやすくなるといわれています。
スキンケアやマッサージにより血流が良くなり、新陳代謝が促進される効果があります。
新陳代謝が促進されると免疫力アップやむくみ・冷えの軽減、良質な睡眠にもつながります。
スキンケアやメイクなどを自身で行う際には、手指を細かく動かしたり、鏡を見て首や顔を動かしながら確認したりする動作が必要です。
そのため、リハビリの一環として取り入れているケースもあります。
日本健康支援学会にて発表された調査結果では、メイクを週2回以上定期的に行っている高齢者は、行っていない方よりも日常生活自立度が高く、日中寝たり座ったりして過ごす時間も比較的少ない傾向にあります。
身だしなみが整うことにより外出意欲が高まり、外出により杖をついて歩く、車椅子を自走するなど身体を動かす機会が増加することで、日常生活動作(ADL)の維持や向上、心身活性化も期待できます。
また、日本免疫学会総会の発表によると、自身ができる範囲でスキンケアやメイクを継続して行ってもらうことで、免疫力が上昇する効果があることもわかっています。
見た目がきれいになり、自分に自信が持てることで笑顔や会話が増え、人とコミュニケーションを取る機会が増えるでしょう。
積極的に外出の機会を設けたり、人と関わったりするようになるため、社会的孤立を防ぐことにもつながります。
スキンケアやメイク、ヘアケアなどの介護美容の施術を行うことで、見た目がきれいに整います。これにより、幸福感が高まり心理的なリラックスやコミュニケーションの機会促進などの効果が期待できます。
また、介護美容を通して心身のケアを行うことにより、心の健康や生活の質(QOL)、日常生活動作(ADL)の向上を目指せます。心も身体も健康で、元気に明るい気持ちで過ごせることがなによりも大切です。スキンケアやアロマセラピーなど、取り組みやすいものから取り入れてみてはいかがでしょうか。
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北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
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