実家を相続しても、誰も住まずに空き家になってしまうケースも多いのではないでしょうか。
両親が住まなくなった後、思い出の詰まった実家をどう扱うべきか悩む方は少なくありません。
この記事では、実家が空き家になったときの対処法や空き家のままにしておくリスクについて解説します。
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実家を相続しても、誰も住まずに空き家になってしまうケースも多いのではないでしょうか。
両親が住まなくなった後、思い出の詰まった実家をどう扱うべきか悩む方は少なくありません。
この記事では、実家が空き家になったときの対処法や空き家のままにしておくリスクについて解説します。


実家が空き家になってしまったとき「他の人はどうしているのだろう」と気になる人も多いでしょう。まずは、空き家をめぐる現状について、詳しく見ていきます。
総務省の2023年10月時点の調査によると、国内の空き家の数は過去最高の899万戸となり、年々増加しています。
空き家が生まれるきっかけの一つに「親の入院や介護施設への入所」があります。
特に、ひとり暮らしの親に病気の後遺症が残った場合、自宅を離れざるを得ない場合があるでしょう。
実際に、元医療ソーシャルワーカーの筆者が支援した入院患者さんのなかにも、自宅に帰れず、病院や施設で生活することになった方も多くいました。
このような状況で、子どもが実家を空き家のまま放置してしまうケースが少なくありません。
その背景には「いつか親が帰ってくるかもしれない」という期待や、「親の同意なしに勝手に実家を処分できない」といった不安も考えられます。
空き家を放置してしまう理由には、処分費用がかかることも挙げられます。売却や解体には一定の費用が必要で、古い建物の場合は思った以上に費用がかかることもあります。
このような経済的負担への不安から、「とりあえず様子を見よう」と先延ばしにしてしまう家族が多くなっているのです。


では、空き家になった実家はどのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、具体的な対処法を6つ紹介します。
実家を売却すると一括で現金を得られるため、介護施設の入所費用の足しにできます。
以前、筆者が医療ソーシャルワーカーとして働いていた頃、患者さんから自宅の売却について相談を受けたことがあります。
不動産会社と入院期間を踏まえた売却時期の検討を行い、売却代金で施設の入所一時金を支払うことができたため、安心して施設に入所できたケースがありました。
なお、査定価格は不動産会社によって異なるので、複数の不動産会社に査定を依頼し、市場価格を把握することが大切です。
実家を売却したくなかったり壊したくなかったりする場合は、賃貸に出すことを検討してみましょう。借主が見つかれば、定期的な家賃収入を得られて介護費用に充てられる場合があります。
一方で、賃貸経営には建物の維持、修繕などの管理が必要となります。
入居者が見つからない間も固定資産税などの維持費用が継続してかかるため、立地条件や建物の状態を慎重に検討してから判断しましょう。
建物を解体して更地にし、土地を有効活用する方法です。立地条件が良ければ、駐車場経営やアパート建設、土地の売却などの選択肢があります。
ただし、建物の解体費用がかかることに加えて、建物がなくなることで住宅用地の特例が適用されなくなって、固定資産税が上がる場合があります。
空き家管理を専門とする管理会社に維持管理を委託する方法です。定期的な換気や清掃、郵便物の整理、簡単な修繕などを代行してもらえるため、遠方に住んでいる場合でも建物の状態を保てます。
しかし、建物の老朽化は防げないため、将来的には売却や解体などの判断が必要になります。
空き家バンクとは、移住希望者や住宅を探している人とのマッチングを図る仕組みのことです。自治体が運営しており、仲介手数料の補助や改修費用の助成が受けられる場合があります。
ただし、空き家バンクは地方の自治体で多く実施されており、都市部では制度がない場合があります。
また、登録したからといって必ずしも買い手や借り手が見つかるとは限らないため、他の選択肢と並行して検討することが大切です。
実家の価値よりも負債や維持費用のほうが多い場合は、相続放棄を検討することもできます。
相続放棄をすると、実家だけでなく親の財産や借金をすべて相続しないことになります。
相続放棄は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きが必要です。
ただし、相続放棄後も次の相続人が決まるまでは管理責任が残る場合があります。
手続きは複雑なため、弁護士などの専門家に相談してから判断することをおすすめします。

実家が空き家になって放置しておくと、資産価値が下がったり近所とのトラブルが起きたりする可能性があります。
ここでは、実家を空き家のままにしておくリスクについて詳しく説明します。
空き家であっても、固定資産税や都市計画税を毎年支払ったり、火災保険や水道料金の基本料金がかかったりします。
冬期間には水道凍結対策なども必要となり、維持費は年間数十万円に及ぶ可能性もあります。
相続人が複数いる場合は、支払者を誰にするかでもめる原因にもなるので、速やかに対処法を検討しましょう。
空き家を放置すると、雑草や樹木の越境、害虫の発生などで近隣住民に迷惑をかける可能性があります。また、誰も住んでいないことがわかると、空き巣に入られるリスクも高まるでしょう。
こうした問題により近隣住民からクレームを受けてトラブルにつながる場合があります。
空き家を放置すると建物の劣化が進み、不動産としての価値が大幅に下落する場合があります。
人が住まない家は換気が不十分になり、湿気がこもってカビや腐食が発生しやすくなることにも注意が必要です。
空き家は長期間放置せず、資産価値があるうちに対処するようにしましょう。
特定空き家とは、自治体が指定する「管理が不十分な空き家」のことです。
特定空き家に指定されると、住宅用地の特例が適用されなくなり固定資産税が増額されてしまいます。
さらに、改善命令に従わない場合は強制的に解体される「代執行」が行われ、その費用も所有者が負担することになります。
このような法的措置を避けるためにも、空き家の適切な管理や早期の対処が不可欠です。

空き家になった実家の処分方法に迷うときは、以下のポイントを踏まえて検討してみましょう。
親に「実家をどうしたいか」を直接聞いてみることが大切です。
「売りたくない」「子どもに任せる」など親の意向を確認したうえで、どのように対処するかを検討しましょう。
駅からの距離や商業施設へのアクセスなど、立地が良ければ売却や賃貸がしやすく、悪ければ管理委託や解体などが選択肢になります。
不動産会社に査定を依頼して市場価値を把握することも大切です。
相続人が維持管理費用や解体費用を負担できるかを検討します。
経済的余裕がない場合は早期売却や相続放棄も視野に入れる必要があります。
介護費用との兼ね合いも考慮しましょう。
相続人が多いほど意見調整が困難になります。
事前に家族会議を開き、全員が納得できる方針を決めることが大切です。
後々のトラブルを避けるためにも、決定内容は書面に残しておきましょう。
介護施設によっては住民票の移転ができない場合があります。住民票を移せない場合は実家の住所を残す必要があるため、実家を維持する選択肢も検討しましょう。
後でトラブルにならないためにも、施設職員へ住民票の取り扱いを確認しておくことが大切です。

親が認知症などで判断能力が低下している場合、実家の売却や賃貸契約などの重要な法的手続きを行うには成年後見制度の活用が必要です。
成年後見人は家庭裁判所に申し立てを行い、選任されます。後見人は本人に代わって不動産の売却や賃貸借契約を締結できますが、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要となります。
手続きには時間がかかるため、親の認知症が疑われる段階で後見制度の利用を検討するとよいでしょう。

空き家になった実家を放置すると維持費や近隣トラブル、資産価値の下落などのリスクが生じます。トラブルを避けるためにも、売却や賃貸、管理委託など家族の状況に合った方法で適切に対処しましょう。
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ご家族で話し合うきっかけとして、ぜひ一度「マイナビあなたの介護」に相談してみてはいかがでしょうか。

社会福祉士
倉本 せんり
社会福祉士
倉本 せんり
元医療ソーシャルワーカー。現場経験をもとに、介護や障がい福祉を身近に感じられる記事を執筆。
元医療ソーシャルワーカー。現場経験をもとに、介護や障がい福祉を身近に感じられる記事を執筆。

北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。