暑さが厳しくなってくる夏には夏バテしてしまう高齢者が増加します。夏バテになると、食欲が落ちて食べる量が少なくなったり熱中症になったりと、高齢者の健康維持に影響を及ぼします。
この記事では、夏バテを予防するのに効果的な栄養素や、高齢者におすすめの夏バテ予防メニューを紹介します。
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暑さが厳しくなってくる夏には夏バテしてしまう高齢者が増加します。夏バテになると、食欲が落ちて食べる量が少なくなったり熱中症になったりと、高齢者の健康維持に影響を及ぼします。
この記事では、夏バテを予防するのに効果的な栄養素や、高齢者におすすめの夏バテ予防メニューを紹介します。
まずは、高齢者が夏バテになりやすい理由や夏バテのサインについて解説します。
一般的に高齢者は若い人に比べて夏バテに陥りやすいです。さまざまな理由がありますが、その1つに体温を調節する体の機能が鈍ってしまうことが挙げられます。
私たちの体は暑さを感じると、その情報が脳に伝えられ、血流や発汗を促進することで体温を調節しようとします。しかし高齢者ではこの反応が遅れるため体温が上がりやすく、夏バテになったり、さらに悪化して熱中症になったりする危険性があるのです。
さらに高齢者はエアコンの使用をためらう傾向にあります。これは老化に伴って暑さを感じにくくなっているのも一因ですが、「冷気に当たるのが嫌」「電気代がもったいない」といった意識も大きく関係しています。エアコンを使用せずに暑い室内にこもっていると、当然、夏バテしやすくなってしまいます。
以下のようなサインが現れたら、夏バテの可能性があります。
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このような症状が出たら、夏バテの予防にいいとされる栄養素を取り入れた食事にしたり、涼しい環境を整えたりして夏バテが悪化しないようにしましょう。高齢者本人だけで難しい場合は、ご家族のサポートが必要になることもあります。
※写真はイメージです。
どのような食事をとれば夏バテを予防できるのかわからないという方も少なくないでしょう。そこでここでは、夏バテ予防のために取り入れたい栄養素を紹介します。
夏は食べやすいそうめんなどで食事を済ませてしまう高齢者も多いです。筆者が介護施設に勤務しているときに高齢者に食事内容をヒアリングした際、「暑い季節はそうめんだけ」「ところてんだけ」と答える方がいました。しかしそれだけではカロリーが不足してしまい、たんぱく質も足りないため夏バテを悪化させてしまいます。
食事には肉、魚、大豆製品、乳製品などの良質なたんぱく質を追加しましょう。冷しゃぶや冷奴などの冷たいメニューは、暑い季節でも比較的箸が進みやすいです。食欲がない場合は、ヨーグルトやコップ1杯の牛乳を追加するところから始めてみましょう。
ビタミンB1は体内で糖質をエネルギーに変える働きがあるビタミンなため、ビタミンB1が不足すると、エネルギーが十分に作られなくなってしまいます。
そのため、夏バテによって、食欲不振、だるさ、疲労感といった症状が現れている方は、ビタミンB1が不足している可能性があります。
ビタミンB1は豚肉、うなぎ、玄米、大豆、ごまなどに多く含まれています。過剰に摂取した分は尿から排泄され体内に溜めることができないため、毎日こまめに摂取する必要があります。1日1回は豚肉を食べるよう心がけたり、ご飯を玄米に置き換えたりするといいでしょう。
夏は暑さによるストレスや紫外線によるダメージを受けやすいため、ビタミンCの消費量が増加します。ビタミンCは体内で作ることができません。不足するとイライラしやすくなったり、貧血になったり、風邪に対する抵抗力が弱くなったりするため、意識的にとるようにしましょう。
ビタミンCはキウイフルーツやいちごなどの果物、パプリカやブロッコリーなどの野菜、さつまいもやじゃがいもなどのいも類に多く含まれています。ビタミンCは熱に弱いため、果物や野菜はなるべく加熱せずに生で食べるように工夫するといいでしょう。
夏バテ予防に効果的な栄養素を取り入れたメニューを3つ紹介します。
たんぱく質とビタミンB1がとれる豚肉に大葉を合わせ、さっぱりと食べられる一品です。食事がそうめんだけになっている方へのアレンジレシピとしておすすめです。
たんぱく質が補える枝豆としらすを入れたおにぎりです。手軽に食べられるため、朝食や間食にもぴったりです。しらすを鮭フレークやチーズなどに変えてもおいしく仕上がります。
たんぱく質の豊富な鮭を、さっぱりとしたレモンソースで食べるムニエルです。鮭は身がやわらかく、高齢者でも食べやすい食材の1つ。レモンにはクエン酸が含まれるため、疲労回復効果も期待できます。
夏バテを予防するためには、食事だけではなく生活習慣全体を見直すことが大切です。ここでは夏バテを予防するための生活習慣について解説します。
朝食を抜くと体を動かすエネルギーが不足して、体がだるいと感じたり、頭がぼーっとしたりします。暑い夏はエネルギーを消費しやすいため、朝ごはんからしっかり食べるようにしましょう。朝食は体内時計をリセットし、生活リズムを整えるうえでも大切です。
脱水も夏バテの原因の1つです。高齢者は体内の水分量が少なく、少しの発汗でも脱水状態になる危険性があります。そのため喉が渇いたと感じる前に、こまめに水分補給することが大切です。
しかし、中にはお茶を飲むとむせてしまう、トイレが近くなるなどの理由で水分をほとんどとらない高齢者もいます。ご家族が水分補給を促したり、野菜や汁物から水分をとれるようにしたりといった工夫が必要です。
十分に睡眠をとることも夏バテ予防には重要です。睡眠不足が続けば疲れがとれなくなり、夏バテの症状が現れやすくなります。
熱帯夜で寝苦しい場合は、エアコンを適切に使用し、冷感シーツなども利用しながら睡眠環境を整えましょう。
なるべく毎日の睡眠時間を一定にし、生活リズムを整えるのもポイントです。
日常に適度な運動を取り入れることで、汗をかきやすくなり、体を暑さに慣れさせることができます。早朝のウォーキングやラジオ体操などを取り入れるといいでしょう。気温の高い昼間は、熱中症の危険があるため屋内での運動がおすすめです。
高齢者は若い人に比べて熱中症や脱水症状になるリスクが高く、体力が低下しているため夏バテになりやすいです。食事からたんぱく質やビタミンをとれるように工夫して、暑い夏を元気に乗り越えましょう。
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参考
夏バテを予防する食事|公益社団法人千葉県栄養士会
高齢者と子どもの注意事項|熱中症予防情報サイト
夏バテしない生活習慣を!|全国健康保険協会
ビタミンB1の働きと1日の摂取量|健康長寿ネット
ビタミンCの働きと1日の摂取量|健康長寿ネット
生活リズムをととのえる|農林水産省
一般高齢者と要支援および要介護高齢者の飲水行動と熱中症対策の実態
管理栄養士
中邑 悠花
管理栄養士
中邑 悠花
元リハビリ系介護施設の管理栄養士。現在はライターとして食と健康に関する記事の執筆を中心に活動中。
元リハビリ系介護施設の管理栄養士。現在はライターとして食と健康に関する記事の執筆を中心に活動中。
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