「ヒートショック」※という言葉を聞いたことがありますか?
これは、お風呂でのリラックスタイムなどに突然起こる可能性がある現象です。
ヒートショックが起きる仕組み、起こりやすいとされる人・環境、予防法などについて詳しく知り、正しい対策でリスクを減らしましょう。
※ヒートショックは医学の正式診断名ではなく、“急激な温度変化に伴う血圧変動などで起こる失神や心血管・脳血管イベントの総称”として用いられる一般呼称です。
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「ヒートショック」※という言葉を聞いたことがありますか?
これは、お風呂でのリラックスタイムなどに突然起こる可能性がある現象です。
ヒートショックが起きる仕組み、起こりやすいとされる人・環境、予防法などについて詳しく知り、正しい対策でリスクを減らしましょう。
※ヒートショックは医学の正式診断名ではなく、“急激な温度変化に伴う血圧変動などで起こる失神や心血管・脳血管イベントの総称”として用いられる一般呼称です。


人間の体は、暖かい場所から寒い場所へ短時間で移動すると血圧が大きく変動し、体調に悪影響を与えることがあります。
とりわけリスクが高いのが、冬場の入浴です。
暖房の利いた暖かい室内だと血圧が安定していても、寒い脱衣所で衣類を脱ぐと血管が収縮し、血圧が上昇。さらに室温が低い浴室内に入ることで、血圧はもっと上がります。その状態で湯に浸かると、体が温まることで血管が広がり、今度は血圧が一気に低下。
こうした血圧の急上昇・急降下は血管や心臓にとって大きな負担になり、ヒートショックが起きてしまいます。
①暖房の利いた部屋で過ごす
→血圧は安定
②寒い脱衣所に移動し、衣服を脱ぐ
→血管が収縮し、血圧が上昇
③脱衣所より寒い浴室内に入る
→さらに血圧が上昇
④浴槽に入り、体が温まる
→血管が広がり、血圧が急降下
→血圧の急激な変動から、ヒートショックが発生!

ヒートショックは誰にでも起こり得るものですが、特に65歳以上の高齢者ではリスクが高まるとされています。
加齢に伴い血管の弾力性や自律神経機能が低下すると、血圧の乱高下を招きやすくなるからです。
また、温度感覚が鈍くなり、のぼせていることに気付かず熱い湯に入り続けてしまうという危険性も考えられます。
その他にも、持病がある人はヒートショックへの注意が必要です。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病や心臓疾患がある人はもちろん、肥満体質だったり睡眠時無呼吸症候群だったりする場合も、用心が必要です。
また、飲酒をする人は、飲酒直後の入浴が大きなリスクになります。

ヒートショックの要因となる冬場の入浴ですが、体を芯から温める、リラックス効果や疲労回復が得られるなどのメリットもたくさんあります。安全にバスタイムを楽しむために、以下のような入浴習慣がないかを確認しましょう。
風呂が沸いた直後は、湯温がまったく冷めていないにもかかわらず、まだ浴室は温まり切っていないため、大きな温度差が生じがちです。
心臓や血管にかかる負担が大きく、ヒートショックにつながりやすい状態と言えるでしょう。
湯船に入る前に、シャワーで浴室全体に温かい湯をかけるなどして、湯船と浴室の温度差を縮めることが大事です。
熱い風呂を好む人も多いですが、ヒートショックのリスクを考えると、とりわけ冬場はぬるめの湯に浸かることがおすすめ。
湯温は41℃以下の設定が目安となります。
また、素早くザブンと湯船に入ることも、体に負担をかけてしまいます。足先から順に、ゆっくりと湯に入るようにしましょう。
長湯によって、ヒートショックのリスクはさらに高まります。高体温、あるいは湯船から上がる際の血圧低下により、意識障害を起こす恐れが高まるためです。
溺水や心停止につながる可能性もあるため、油断は禁物。
入浴時間は10分程度を目安にしましょう。アラームをかけておくこともおすすめです。
体が冷え切った状態のまま熱い湯船に入ることは、急激な温度差が体の負担になり、危険を伴います。
湯船に入る前に、かけ湯で体をゆっくりと温めることが大切です。心臓から遠い手足~みぞおちの下にかけて、数回に分けてかけ湯をすると効果的です。
代謝アップやストレス軽減など、健康維持に役立つと人気のサウナ。
しかし、実はここにもヒートショックのリスクが隠れています。高温のサウナ室では体温が急上昇し、血管が拡張。
その後、水風呂や外気浴へ移動し、急激な温度変化が起こることで、血圧が急変します。
高齢者、心臓や脳に疾患がある人、高血圧の人などにとっては、特にリスクが高いことを覚えておきましょう。

それでは、ヒートショックを予防するために、日頃から入浴時にはどんなことを意識したらよいのでしょうか?
今日から取り入れられる、簡単で効果的な方法をお伝えします。
居室内・脱衣所・浴室のそれぞれの温度差を、5℃以内にすることが望ましいとされています。
脱衣所にヒーターを置く、あらかじめ浴槽のフタを開けておく、温かいシャワーを浴室内にかけるなどして、安全な環境を整えましょう。
また、食後すぐの入浴は血圧が下がりやすいとされています。食事を摂ってから1時間程度空けてから入浴するようにしましょう。
とりわけ飲酒後は危険性が高いので、必ずアルコールが抜けてから入浴してください。
かけ湯をして体を湯に慣らすのはもちろんのこと、急に立ち上がったり座ったりしないことも大事です。
湯船から出るときは、手すりや浴槽の縁につかまって体を支えながら、20〜30秒かけてゆっくりと立ち上がるよう意識しましょう。
また、湯船からすぐに脱衣所に移動するのではなく、浴槽のへりに腰かけるなどして一休みすることで、体への負担が軽減されると言われています。
万が一、浴室で体調が急変してしまった場合、自宅に誰もいなければ助けを呼ぶことができません。
高齢であったり、体調に不安な点があったりする場合には、なるべく家族がいる時間帯に入浴するようにしましょう。
脱衣所に行く前に「これからお風呂に入るね」などと声をかけておくと安心です。家族が遠方に住んでいる場合には、入浴時間を共有しておき、その前後で連絡を取り合うことで安全を確認できます。

もし、入浴中に体調が悪くなってしまったら、無理に立ち上がって動かないことが大事です。
めまいや立ちくらみがひどければ、その場にしゃがみ込み、体勢を低くして様子を見ます。浴槽内にいる場合は、意識のあるうちにお湯を抜いておけるといいでしょう。落ち着いた段階で浴室を出て、横になって安静にしましょう。
家族が入浴中に意識を失った場合、急いで浴槽の湯を抜き、体を引き上げて(難しい場合はふたに上半身を乗せるなどして)溺水を防ぎます。
意識が遠のく、呼吸しづらい、吐き気がある、ろれつが回らない、体の一部に力が入らない、頭や胸が痛いなどの重い症状がある場合は、直ちに119番通報して救急車を呼びましょう。
▶ 高齢の親が倒れたら?救急車を呼ぶ判断と対応の流れを詳しく解説

ここまで、「冬場の入浴中」を想定してヒートショックについて解説してきました。
しかし、ヒートショックは温度の変化によって生じる現象であるため、生活環境によっては、入浴時以外にも発生する可能性があります。
例えば、暖かいリビングから暖房のないキッチンやトイレへ移動する時、ベランダで洗濯物を干す時、玄関先まで郵便受けを見にいく時……。
こうした短い距離の移動であっても、大きな温度差があればヒートショックのリスクは十分に考えられます。部屋ごとの温度差を減らすこと、短時間の外出でも上着を着て体温の急変を防ぐことを心がけましょう。

ヒートショックのリスクは、日常生活のあちこちに潜んでいます。
血圧が大きく変動することによって起きる現象なので、予防のためには、規則正しい生活を送ることも重要です。
バランスの取れた食事、適度な運動、ストレスの軽減、十分な睡眠、禁煙・節酒など、健康的な生活習慣を心がけましょう。
また、環境面から働きかけることも有効です。
自宅の窓に断熱フィルムを貼って熱の流出を減らす、快適な温度を保てるよう浴室やトイレをリフォームする、床下に断熱材を追加するといったことも、ヒートショックから身を守ることにつながります。
もし、年齢を重ねた家族の健康や在宅での暮らしに不安がある場合には、早めに介護のプロに相談してみましょう。
介護付き有料老人ホームなどに関する相談は「マイナビあなたの介護」で受け付けています。
LINEや電話からのお問い合わせも可能です。施設探しから介護準備のサポート、資料請求・見学申込など面倒なお手続きの代行も行っているので、介護にまつわるお悩みがあれば、どうぞお気軽にご利用ください。
参考
高齢者のための熱中症対策|厚生労働省
熱中症の知識|環境省
熱中症環境保健マニュアル2022|環境省

アウラニクリニック統括院長
松澤 宗範(マツザワ ムネノリ)
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松澤 宗範(マツザワ ムネノリ)
ご病気によるお悩みから、美容・アンチエイジングまで幅広い患者様を診察しております。
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