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特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の暮らしとは?入所の基準や1日の暮らしを紹介します

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特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、何らかの事情で常に介護が必要な人に対し、手厚い介護と生活の場を提供する施設です。自宅復帰を目指している人もいれば、人生の最期の時まで施設で過ごす人もいます。

本記事では、特別養護老人ホームでのくらしについて、施設の概要や入居基準についてお伝えするとともに、提供されるサービスや1日の流れを詳しく解説します。

1. 特別養護老人ホームとは?

特別養護老人ホームとは、認知症や寝たきりなどで常に介護が必要で自宅での生活が難しい人に対し、生活の場と手厚い介護サービスが提供される介護保険施設です。設立できるのが地域公共団体や社会福祉法人などに限られており、他の入所施設に比べると比較的費用が低く設定されています。

特別養護老人ホームには、相部屋中心の従来型と、個室と共同生活室で構成されるユニット型があります。従来型が大人数の利用者さんを複数名の職員で対応するのに対し、ユニットケアは少人数の利用者さんを数名の職員で個別ケアを行う形になっています。ユニット型の方が、より手厚い介護が受けられますが、その分料金も高くなりやすいでしょう。

【特別養護老人ホームの種類と特徴】

 

部屋

利用者人数

担当職員

料金

従来型

相部屋中心

大人数

複数名

低い

ユニット型

個室中心

少人数

数名の職員

高い

特別養護老人ホームのうち、定員が29名以下の施設は、地域密着型介護老人福祉施設と呼ばれています。

 

2. 特別養護老人ホームの入居基準

特別養護老人ホーム内を案内される高齢者と家族

特別養護老人ホームには、介護認定を受けていない人や要支援の認定を受けている人は入所できません。入所を希望する場合は、まず介護認定を受けましょう。

また、特別養護老人ホームは原則として、要介護3以上でなければ、入所することができません。ただし、以下のようなやむを得ない理由がある場合は、特例として要介護1もしくは2であっても入所できることがあります。

【特例入所の対象者】

  • 認知症によって日常生活に支障をきたすような意思疎通の困難さや症状が頻繁にみられる人
  • 知的障害や精神障害などで、日常生活に支障をきたすような症状や行動、意思疎通の困難さが頻繁にみられる人
  • 家族などによる深刻な虐待が疑われるなど、心身の安全・安心の確保が難しい場合
  • 単身世帯、同居家族が高齢または病弱などにより、家族などの支援が期待できず、かつ地域の介護サービスや生活支援の供給では不十分である人

参考:介護保険最新情報Vol.1141|厚生労働省老健局高齢者支援課

  

3. 特別養護老人ホームで提供されるサービス内容

特別養護老人ホームで提供されるサービス内容

特別養護老人ホームでは、どの様なサービスが提供されているのでしょうか。特別養護老人ホームのサービスについて、詳しく見ていきましょう。

食事、入浴、排せつなどの日常生活上の介護

特別養護老人ホームでは、生活全体において介護を必要とする人が多いため、いろいろな場面で日常生活上の介護を受けることができます。具体的には、排せつや入浴、食事、移動などの場面において、以下のような介助が実施されます。

  • 排せつの介助(トイレ誘導、トイレ内の介助、おむつ交換など)
  • 入浴の介助(機械浴、一般浴での見守りおよび一部介助など)
  • 食事の介助(お皿の並べ替え、全介助など)
  • 移動や移乗の介助(ベッドへの移乗、車いすの介助、歩行の付き添いなど)

このほか、朝の顔拭きや食後の歯磨きの介助、ベッド上での体位変換なども、施設サービスとして提供されています。
  

リハビリテーションなどの機能訓練

特別養護老人ホームでは、機能訓練も実施されます。1日の生活のなかで、機能訓練指導員(リハビリ専門職や看護職員など)が、立ち座りなどの基本的動作や歩行などの移動訓練、ベッド上でのポジショニングなどを行います。

また、日常生活のなかで本人の能力に応じてできることをしてもらう「生活リハビリ」も広く行われています。具体的には、ドライヤーを自分でかけてもらう、食事時にすくいやすい食器を利用するなど、日々の生活の一連の流れのなかで利用者さんの能力が維持できるよう支援します。
  

バイタルチェックなどの日常の健康管理

特別養護老人ホームでは、健康管理も大切なサービスの1つです。毎日検温や血圧測定などのバイタルチェックを行い、体調に変わりがないか確認します。異常時には、主治医に相談して往診を依頼したり、病院へ受診を行ったりします。

また、入所者の薬の管理や服薬の介助、声掛けなども実施し、入所者の健康が維持できるように支援しています。
  

相談援助、レクリエーション

特別養護老人ホームでは、入所者の楽しみや心身機能の維持・向上を目的として、レクリエーションが実施されています。レクリエーションでは、ゲームや体操、脳トレなど、施設内でできるものだけではなく、季節に応じた行事や外出レクなどを実施しているところもあります。

また、特別養護老人ホームには生活相談員が常勤配置されており、入所者やご家族からの相談、これから入所を検討している人などの相談にも応じています。
  

毎月の季節行事の開催

特別養護老人ホームでは、多くの施設で毎月季節行事を開催しています。季節行事は、施設によって特色あるものになっていることが多いでしょう。行事によっては、地域住民を招待したり、ボランティアによる出し物を募集したりすることもあります。普段とは異なる行事となるため、季節行事を楽しみにしている入所者も少なくありません。季節行事の一例は以下の通りです。

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

新年会

節分

ひな祭り

花見

演芸会

運動会

七夕

夏祭り

敬老会

外出レク

運動会

クリスマス

4. 特別養護老人ホームの1日の暮らしの流れ

レクリエーションを楽しむ入所者

特別養護老人ホームの1日のくらしは、どのような流れとなっているでしょうか。一例を基に、詳しく見ていきましょう

7:00

起床

8:00

朝食

9:30

体調確認

10:00

体操、お茶、入浴など

12:00

昼食

13:00

レクリエーション、入浴、リハビリなど

15:00

おやつ

18:00

夕食

21:30

消灯

起床

起床の時間になると、職員が入所者の部屋を回り、おむつ交換やトイレ誘導などの排せつ介助、顔拭きや洗顔などの介助を行います。その後、朝食の時間となるため、自分で移動が難しい人の場合は、車いすへの移乗介助を実施し、食堂へ移動します。自分で移動ができる人は、声掛けを行って食堂へ誘導します。
 

朝食と朝食後のケア

朝食の時間になると、入所者は食堂に集まって朝食を食べます。食事前には、嚥下体操を実施する施設も少なくありませんが、朝と夕は職員が少ないため、昼のみ口腔体操を行う施設もあります。

一人で食べられない人や、途中で疲れてしまう人などは、職員が食事の介助や声掛け、食器の置き換えなどを行います。食事を食べ終わった入居者さんから洗面所に誘導し、歯磨きや口腔ケアを実施します。必要に応じて、トイレの声掛けや排せつ介助なども実施します。
 

体調確認、余暇活動

9:30頃になると、体温や血圧、脈拍測定などのバイタルチェックを実施し体調確認を行います。体調に問題がなければ、ホールやリビングなどの皆さんが集う場所で、テレビ観賞や他の入所者との団らんなど、余暇活動が実施できるよう支援します。
 

入浴、集団体操、水分補給

10時くらいになると、入浴や集団体操、水分補給などの時間となります。入所者は最低週2回以上の入浴支援を受けることができます。特別養護老人ホームでは、午前と午後に入浴時間を設けていることが多いでしょう。

入浴後は水分補給を実施します。自分で飲めない人は、職員が飲水介助を行います。入浴がない人や、入浴以外の時間には、集団体操や脳トレなどを実施している施設が多いでしょう。
 

昼食と昼食後のケア

12時になると、昼食となります。昼食前には、利用者さんにトイレ誘導を行います。口腔体操を行う施設も多いでしょう。

昼食時には、朝食と同様に必要に応じて食事介助を実施します。昼食が終わった人から歯磨きや口腔ケアの声掛けや介助を行います。昼食前にトイレに行っていない場合は、トイレへの声掛けや付き添いをすることもあるでしょう。おむつを使用している人は、排泄時間を把握するなどして適時におむつ交換を実施します。
 

レクリエーションやリハビリテーション、おやつ

リハビリを実施している施設では、午前か午後の時間の空き時間を利用して、リハビリを実施しています。レクリエーションは午後から実施されることが多いでしょう。14時くらいから1時間程度を目安に実施されます。レクリエーションが終わると、おやつの時間となります。レクリエーションの一環として、おやつ作りを行うこともあります。
  

夕食と夕食後のケア

おやつが終わると、夕食まではゆっくり過ごします。自室のベッドで横になって過ごす人が多いでしょう。夕食の時間になると、再び食堂に集います。必要に応じて食事介助を行い、食後は歯磨きや口腔ケアを行います。その後は、各自部屋に帰るよう、声掛けや移動介助が実施されます。部屋に戻る前や戻った後には、トイレ誘導やおむつ交換などの排せつケアも行われるでしょう。
  

就寝

特別養護老人ホームでは、22時を消灯としていることが多いでしょう。消灯後は夜勤職員が定期的に巡視を行い、入居者さんに異常がないかを確認します。また、自分で身体を動かせない人の体位変換やおむつ交換、夜間にトイレに行く必要がある人のトイレ誘導なども行います。

  

まとめ:特別養護老人ホームは常に介護が必要な人向けの施設

特別養護老人ホームでの生活を楽しむ高齢者

特別養護老人ホームは、常に介護が必要な要介護度の高い人を対象とした介護保険施設です。

介護が必要であっても、自分らしく生活できるよう、さまざまな支援が提供され、入居者さんもご家族も安心して過ごせます。要介護3以上で自宅での生活が難しい場合には、特養への入所を検討してみてはいかがでしょうか。


参考URL

どんなサービスがあるの?ー介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)|厚生労働省
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)|厚生労働省
介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護|厚生労働省
介護保険最新情報Vol.1141|厚生労働省老健局高齢者支援課
特別養護老人ホーム(特養)とは|健康長寿ネット

監修

北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO

菊地 雅洋

北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO

菊地 雅洋

社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。

社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。

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