1. 介護老人保健施設(老健)とは?特徴を簡単におさらい

護老人保健施設とは、介護保険施設の1つで、老健とも呼ばれています。介護を必要とする高齢者のうち、自宅での生活を目指す方を対象に、医師による医学的管理の下、看護や介護だけでなく、リハビリ専門職によるリハビリや、栄養管理、食事、入浴などの日常サービスが受けられます。
老健の分類
老健は、在宅復帰や在宅療養支援機能に対する要件を満たしているかどうかで、以下のように分類されます。
上記のうち「超強化型」「強化型」「加算型」は、厚生労働省が定めた在宅復帰・在宅支援機能に関する要件を満たしている施設です。在宅復帰を目指す場合は、上記の分類を目安にするとよいでしょう。
老健に入居できる方
老健に入所できるのは、要介護1以上の認定を受けている方のうち、入院の必要はなく病状が安定しており、リハビリを必要としている方です。認知症ケアに力を入れている施設もあり、認知症の方でも入所できます。
2. 介護老人保健施設の1日の暮らしの流れ

介護老人保健施設での1日の流れについて、一例を紹介します。
6:00 | 起床 |
8:00 | 朝食 |
9:00 | 体調確認 |
10:00 | 入浴、リハビリテーション |
12:00 | 昼食 |
13:30 | レクリエーション、趣味活動 |
15:00 | おやつ |
16:00 | 個別リハビリ |
18:00 | 夕食 |
21:30 | 消灯 |
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
起床
朝6時になると、施設内の明かりがついて、起床となります。朝は、職員が声をかけて、洗顔やトイレ、おむつ交換などの排泄ケアや、着替えなどを行います。自分で体を動かせない方の場合は、温かいタオルで顔を拭き、職員が順番におむつ交換に回ります。
朝のケアが終わったら、朝食を食べるため、ホールや食堂などに移動します。自分で移動が難しい方は、車いすに移乗したり、一緒に付き添ったりするなど、自分の席に座るまで職員が誘導するのが一般的です。
朝食と朝食後のケア
8時前後になると、朝食が自分の席に配られます。自分で食べられる方のうち、途中で止まってしまう方や見守りが必要な方の場合は、職員が声掛けや必要なサポートを行います。食事の介助が必要な場合は、職員が介助します。
食後は、声掛けを行って歯磨きや口腔ケアを行います。朝食前にトイレに行かなかった方や、トイレの訴えがある方には、トイレへの声掛けや介助を実施します。
体調確認
朝食後は、体調確認を行います。看護師が体温や血圧、脈拍、酸素飽和度などのバイタルを測定するほか、糖尿病の方は血糖値のチェックなども行います。異常がある場合には、施設に常駐する医師の診察を受け、必要に応じて薬の変更や処置が実施されます。
入浴、リハビリテーション
体調確認を行い、問題がなければ入浴やリハビリテーションを行います。入浴は、週2回が基本です。入浴以外の時間は、集団もしくは個別のリハビリをします。リハビリは、施設ケアマネージャー(以下、ケアマネ)のケアプランに基づきリハビリ専門職がリハビリの計画を作成し、計画に沿って行われます。
昼食と昼食後のケア
午前中のスケジュールが終わると、昼食の準備となります。昼食の前には、職員の声掛けによるトイレ誘導や、おむつ交換などを行います。入居者の方が席につくと、食事の飲み込みをよくするための口腔体操を行う施設も少なくありません。
昼食後は、朝食と同様に歯磨きや口腔ケアを行い、昼食前にトイレに行っていない方には、トイレへの声掛けも行います。
レクリエーション、趣味活動、おやつ
昼食後に休憩をした後は、レクリエーションや趣味活動を実施します。レクリエーションでは、頭の体操や体を動かすゲームなど、さまざまな種類が実施されており、体が動かせない方も楽しめるよう工夫されています。レクリエーションが苦手な方がいる場合には、個別で趣味活動を行うこともあります。
レクリエーションが終わると、トイレを済ませておやつの時間となります。レクリエーションの一環として、入居者と職員が一緒になっておやつを作ることもあります。
個別リハビリ
おやつ後から夕方までの時間は、個別リハビリが行えていない方に対し、個別リハビリが実施されます。すでに個別リハビリが終わっている方は、趣味活動の続きを行ったり、自分の部屋でゆっくりしたりして過ごすことが多いでしょう。
夕食と夕食後のケア
18時になると、夕食になります。夕食も食堂に集合して食べます。朝食や昼食と同様に、一人で食べることが難しい方の場合は、職員が介助を行います。食事が終わると、歯磨きや口腔ケアを行い、部屋に戻ります。部屋に戻った後、少し落ち着いた頃に職員が各部屋を周り、トイレへの声掛けやおむつ交換などの排泄ケアが実施されます。
就寝
21:30になると、全館が消灯になります。消灯後は、定期的に職員が巡視を行い、自分で体を動かせない方の体位変換やおむつ交換を実施します。
夜間は、トイレのために起こす必要がある方に声を掛けて付き添ったり、夜中に起きてしまった方やナースコールがなった場合に対応したりするなど、夜間も安心して過ごせるようサポートしています。
3. 介護老人保健施設の1年のスケジュール

介護老人保健施設では、季節ごとにイベントも実施されています。季節ごとのイベントの一例は以下の通りです。
1月 | 新年会 |
2月 | 節分 |
3月 | ひな祭り |
4月 | 花見 |
5月 | 端午の節句 |
6月 | 運動会 |
7月 | 七夕 |
8月 | 夏祭り |
9月 | 敬老会 |
10月 | 収穫 |
11月 | 文化祭 |
12月 | クリスマス会 |
上記のほか、毎月誕生日会も実施されています。季節ごとのイベントについて、簡単に解説します。
1~3月のイベント
1月は、新年会を実施する施設が多いでしょう。新年会では、神主を呼んで祝詞を上げてもらう施設や、地域住民をお招きして餅つきをするところもあります。
2月は節分です。職員が鬼となり、入居者は豆まきをします。豆は小さな大豆だと掃除しきれずに汚れてしまったり、転倒のきっかけになったりするので、テトラパックに入った小分けの豆を投げることが多いでしょう。豆まきのほかに、鬼退治ゲームを実施することもあります。
3月はひな祭りです。高齢者施設は女性の割合が多いため、実際に着物を羽織ったり、お化粧したりといったように、女性が喜ぶイベントを行う施設が多く見られます。事前に入居者の写真を撮っておき、入居者の顔を貼ったひな壇の壁飾りを作って飾るところもあります。
4~6月のイベント
4月は花見を行う施設が多いでしょう。ドライブで近隣の花見スポットに出かけるケースや、敷地内の桜で花見をするケースなど、施設によって実施方法はさまざまです。
5月は、端午の節句です。手形アートでこいのぼりの壁飾りを作成することや、地域の子どもたちや、入居者のご家族を招いて、こどもの日のイベントを実施することもあります。
6月は、主な季節のイベントがないため、施設によってイベント内容が異なります。この時期に館内で運動会を実施するところも多いでしょう。老健での運動会では、介護度の違う入居者であっても楽しめるような競技を実施し、チーム戦で争います。
7~9月のイベント
7月は、七夕飾りを作るところが多いでしょう。七夕飾りを作ったり、短冊をかいたりして、飾りつけも入居者と職員で行います。笹に飾るところもあれば、画用紙などで捜索した大きな笹を壁などに飾りつける場合もあります。
8月は、夏祭りを実施します。老健には、地域とのつながりを強化する役割もあります。とくに、超強化型老健は、地域貢献活動が施設基準として必須となっているため、地域の住民を招いての夏祭りを実施していることが多いでしょう。
9月は、敬老会を開く施設が多くあります。喜寿や米寿、100歳など、節目の年齢をお祝いします。地域の子どもたちがお祝いを兼ねて、踊りや歌を披露したり、ボランティアを招いての演奏会を実施したりと、大々的にやっている施設も多いでしょう。とくに、100歳のお祝いには、施設のある自治体の長がお祝いのために訪問し、記念品を贈呈します。
10~12月のイベント
10月は、収穫の時期であるため、施設で畑を持っているところでは、収穫祭をすることがあります。近年では、ハロウィンを実施するところも増えてきました。6月に運動会をしないところは、10月に実施していることが多いでしょう。
11月は文化祭です。これまで趣味活動で作成したものや、レクリエーションのなかで作成したものを数日展示することで、入居者の家族に見てもらう機会を作っています。文化祭の当日には、ボランティアによる歌や演奏などを披露してもらう施設もあります。
12月はクリスマス会です。職員による歌や出し物、演奏などが披露されます。職員がサンタクロースに扮し、入居者にプレゼントを配ります。プレゼントは、施設での生活で必要な靴下やひざ掛けなどの小物が多いでしょう。
まとめ:介護老人保健施設はリハビリを中心に日々の生活も楽しめる施設

介護老人保健施設は、自宅復帰を目指した施設のため、リハビリに力を入れた暮らしとなります。同時に、生活の場でもあるため、日々の生活支援やレクリエーションのほか、季節行事を実施して、施設での生活を楽しめる工夫がされています。介護老人保健施設は、リハビリをしっかりしてほしい、いずれは自宅に帰りたい方にとって、暮らしやすい施設と言えるでしょう。
参考URL
老健って、何?|全国老人保健施設協会
「ろうけん=介護老人保健施設」ってどんな所?|全国老人保健施設協会
どんなサービスがあるの?ー介護老人保健施設(老健)|厚生労働省
介護老人保健施設|厚生労働省
監修
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
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