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第2回 親の介護を「私ばかり」と悩む方へ…家族と上手に分担するコツ

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「親の介護を、なぜ私だけがしているのだろう…」「兄弟や親族は、何も協力してくれない…」
このように、ご家族様の介護をひとりで抱え込み、不公平さを感じていませんか?

介護は、心身ともに大きな負担がかかります。ひとりで抱え込むと、心身の疲弊だけでなく、家族関係の悪化にもつながりかねません。

 この記事では、ご家族様の介護をひとりで抱えている方へ向けて、家族との役割分担の方法や、協力を得るためのコミュニケーション術について解説します。

 少しでも負担を軽減し、より良い介護体制を整えるための参考として、ぜひ最後までお読みください。

家族・親族との役割分担を進める方法

役割分担する夫婦

ご家族様の介護をひとりで抱え込むのは、精神的にも肉体的にも大きな負担になります。「私ばかり…」と不公平さを感じる前に、家族や親族と役割分担を進めることが重要です。

役割分担は、介護の負担が軽減されるだけでなく、介護の質を向上させ、家族の絆を深めることにもつながります。

ここでは、役割分担の重要性と具体的な方法について解説します。

役割分担の重要性

ご家族様の介護において、家族や親族間での役割分担は非常に重要です。
介護は身体的にも精神的にも負担が大きく、ひとりで抱え込むと、介護者自身の生活や健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

食事の準備や入浴介助、通院の付き添いなどを毎日ひとりでこなしていると、自分の時間を持てず、ストレスも溜まります。

役割を分担することで負担を軽減し、より良い介護環境を作れるのです。

介護をひとりで抱え込むリスク

介護をひとりで抱え込むと、心身ともに多くのリスクが生じます。まず、身体的な疲労が蓄積し、体調を崩しやすくなります。例えば、毎日のようにご家族様を抱えて移動させたり、入浴介助をすることで、腰や背中の痛みが慢性化するかもしれません。

また、十分な休息が取れず、免疫力が低下し、病気にかかりやすくなる可能性もあります。精神的なストレスも無視できません。自分の時間が持てないことによるストレス、介護による孤立感や将来への不安などから、うつ状態に陥る危険性も高まります。

家族全員で協力することで、負担を分散し、介護の質を向上させる

介護の役割を家族や親族で分担することで、負担を分散し、介護の質を向上させることが可能です。負担が分散されると、介護者は自分の時間を持て、心身ともにリフレッシュし、健康を保ちやすくなります。より質の高い介護を提供できるようになり、介護を受けるご家族様にとってもプラスとなるのです。

また、それぞれの得意分野や状況に応じて役割を決めることで、無理なく介護を続けられます。例えば、経済的に余裕がある人は費用負担を、時間がある人は話し相手や見守りを担当するなど、強みを活かすことが重要です。
  

役割分担の具体例

介護の役割分担は、家族の状況によってさまざまです。家族が同居しているか、遠方に住んでいるかによっても、できることは異なります。

大切なのは、それぞれの状況に合わせて無理なくできることを分担し、協力し合うことです。ここでは、同居している家族と遠方に住んでいる家族ができる役割分担の具体例について説明します。

役割

具体的な内容

身体介護

入浴やトイレの介助、服薬管理など、直接的な身体的サポートを行います。

家事全般

洗濯や掃除、食事の準備、買い物など生活全般のサポートを行い、快適に過ごせる環境を整えます。

医療面のサポート

定期的な通院の付き添いや、医療機関との連絡を担当し、必要な医療サービスを受けられるようにします。

精神的サポート

ご家族様の気持ちを支え、コミュニケーションを通じて安心感を与えます。

また、日中の見守りや話し相手になることも、重要な役割です。可能な範囲で他の家族と協力し、役割を分担しましょう。

遠方に住んでいる家族ができる役割

遠方に住んでいる家族は離れているため、日常的な介護を行うことは難しいかもしれません。しかし、介護に貢献することは可能です。

同居している家族を支え、介護が円滑に進むようにサポートする役割を担います。

経済的支援

介護にかかる費用や、介護用品の購入に対して金銭的な支援を行います。

情報提供と調整

介護サービスや施設の情報を収集し、同居している家族と連携を取りながら、共有します。

定期的な連絡

電話やビデオ通話を通じて様子を確認し、精神的なサポートを行います。また、必要に応じて訪問することも、同居の家族から期待されます。

介護計画の見直し

定期的に家族会議を開き、介護の状況や役割分担を見直すことで、より良い介護環境を整えられます。

遠方に住んでいるからといって、介護から完全に離れるのではなく、できることを積極的に行える環境や関係性を築いていきましょう。
  

訪問介護や通所介護など在宅介護サービスの併用も検討する

介護負担を軽減するために、在宅介護サービスの利用も検討してみましょう。介護者だけで抱え込むのではなく、介護サービスを上手に活用することで、介護の負担を大きく減らすことが可能です。

訪問介護サービスにはさまざまな種類があります。代表的な「訪問介護」と「通所介護」について説明します。

在宅介護サービスを活用した負担軽減方法

在宅介護サービスを上手に活用することで、介護の負担を大幅に減らすことが可能です。例えば、訪問介護を利用すれば、入浴や食事、排泄の介助などを介護のプロフェッショナルに任せられます。

また、通所介護(デイサービス)を利用すれば、介護者はその間、用事を済ませたり、休息を取ったりできます。これらのサービスを組み合わせることで、介護者の負担を減らしつつ、必要なケアを受けられるというメリットがあるのです。

  

家族・親族との話し合いの進め方

介護の分担の家族会議

介護について、ご家族様や親族間で話し合うことは、役割分担を決める上で重要です。しかし、介護について話し合うことは、感情的になりやすく、難しい側面もあります。

ここでは、スムーズに話し合いを進めるためのポイントを、3つのステップに分けて説明します。

1. 家族会議を開き、全員の意見を聞く

まずは、家族会議を開き、全員が意見を出し合う場を設けましょう。いつも介護に関わっている同居家族だけでなく、遠方の親族にも参加してもらうことが理想的です。それぞれの立場や状況、介護に対する考えなどを率直に話し合います。

この時、感情的にならず、冷静に話し合うことが重要です。必要に応じて、ケアマネージャーに会議へ参加してもらうのも良いでしょう。第三者が同席することで、より冷静に話し合いを進められるケースも多くあります。

参加できない家族がいる場合は、電話やオンライン会議などを活用して、できる限り全員が参加できるようにしましょう。それぞれの状況や意見を尊重し、全員が納得できる結論を目指すことが大切です。
  

2. 親の意向を尊重しつつ、現実的なプランを立てる

家族会議で全員の意見を共有した後は、ご家族様の意向を尊重しながら、介護プランを立てていきます。

まず、ご家族様にどのような介護を望んでいるのか、どのような生活を送りたいのかを丁寧に聞き取りましょう。例えば、在宅で生活したいのか、介護施設に入所したいのか、どのような介護サービスを利用したいのかなど、希望をできる限り聞き取ります。

その上で、経済的な状況なども考慮し、無理のない範囲で具体的なプランを作成しましょう。また、必要に応じてケアマネージャーに同席してもらうことで、介護保険サービスに関する専門的なアドバイスが得られ、より適切なプランを立てやすくなります。
 

3. 役割分担を明確化し、定期的に見直す

具体的な介護プランが決まったら、誰がどの役割を担当するのかを明確にしましょう。役割分担を明確にすることで、責任の所在がはっきりし、介護がスムーズに進むようになります。

また、役割分担は一度決めたら終わりではなく、定期的に見直すことが大切です。介護の状況や家族の状況は変化するため、必要に応じて役割分担を調整することで、介護体制を維持できます。

  

家族の協力を得るためのコミュニケーション術

遠方の家族の協力を得る夫婦

介護を家族で協力して行うためには、率直な話し合いが不可欠です。しかし、感情的になってしまったり、相手にうまく伝わらなかったりすることもあるかもしれません。

そこで重要なのが、コミュニケーション術です。ここでは、家族の協力を得るために、より効果的な伝え方、そして工夫について解説します。

より効果的な伝え方

家族に介護への協力を求める際、伝え方ひとつで相手の反応は大きく変わります。より効果的な伝え方として、3つのポイントを紹介します。

① 感情的にならず、具体的な事実を伝える

感情的に訴えるのではなく、具体的な事実に基づいて話すことが重要です。

例えば、「私ばかり大変な思いをしている!」と感情的になるよりも、「現在、私が週に〇〇時間介護に時間を費やしていて、睡眠不足で体調を崩し気味だ」といった具体的な事実を伝える方が、相手に状況が伝わり、理解と共感を得やすくなります。

また、ケアマネージャーから普段の様子や必要な支援について伝えてもらうことも有効です。

②「お願い」ではなく「提案」として話す

「手伝ってほしい」という一方的なお願いではなく、「〇〇を手伝ってもらえると、すごく助かるんだけど、どうかな?」というように、提案型で話すことを心がけましょう。

相手に選択の余地を与えることで、自主的な協力につながりやすくなります。

例えば、「通院の付き添いを月1回担当してもらえないか」「食事の準備を週末だけでも交代できないか」など、具体的な役割や頻度を示した提案をすることで、相手も検討しやすくなります。

また、提案する際には「母も喜ぶから」など、良い効果を伝えることも重要です。

③ 相手の状況や負担も考慮したアプローチ

家族はそれぞれに、仕事やプライベートなどの事情があります。相手の状況や負担を考慮した上で、無理のない範囲で協力を求めるようにしましょう。

例えば、遠方に住んでいる兄弟には「もし可能であれば、月に一度だけでも実家に来てくれると助かる」と、現実的な範囲でお願いする方が、相手も協力しやすくなります。相手の状況を理解しようとする姿勢が、協力体制を築いていく上で重要です。
  

協力を得るための工夫

ご家族様の介護で大切なのは、介護者ひとりで抱え込まず、周囲の協力を得ることです。しかし、どのように働きかければ、家族が協力してくれるのか悩む方もいるでしょう。

ここでは、家族の協力を得るために必要な2つのポイントを説明します。

① 遠方に住む家族には金銭的支援や定期的な訪問を依頼

遠方に住んでいる家族には、金銭的な支援や定期的な訪問を依頼することを検討しましょう。遠方で暮らしている場合、日常的な介護を直接手伝うことは難しいですが、金銭的なサポートならできる場合があります。

例えば、介護用品の購入費用や、介護サービスの費用などを一部負担してもらうだけでも、経済的な負担は大きく軽減されます。また、定期的に訪問してもらえれば、介護者は休息時間を作ることが可能です。

月に一度でも実家に来てもらい、数日間だけでも介護を代わってもらえば、介護者はリフレッシュする時間を作れます。

② 家族全員でご家族様の状況を共有するためのツールを活用

家族全員でご家族様の状況を共有できるツールを活用すると便利です。例えば、グループチャットアプリや共有ノートアプリなどを活用することで、離れて暮らす家族とも、健康状態や介護の状況、今後の予定などをリアルタイムで共有できます。

また、写真や動画などを共有することで、様子をリアルに伝えることもできます。必要に応じて、グループチャットにケアマネージャーに参加してもらうのも良いでしょう。

情報共有ツールを活用することで、家族全員が介護に参加しているという意識を持ち、よりスムーズに協力できます。

  

まとめ:家族の介護は抱え込まないことが大切

介護の悩みを抱えない女性

この記事では「親の介護を私ばかりがしている」と感じている方に向けて、家族・親族間で協力して介護を行うための具体的な方法について解説しました。
以下に、この記事のポイントをまとめます。

  • 役割分担の重要性:介護をひとりで抱え込むことは、介護者自身の心身に影響するだけでなく、介護の質を低下させるリスクがあります。家族・親族が協力することで、負担を分散し、介護の質を向上させられます。

      

  • 役割分担:ご家族様と一緒に住んでいる方は、食事の準備や入浴介助などの日常的な介護ができます。遠方に住んでいる方は、経済的支援や定期的な訪問、通院介助などを担当できます。

     

  • 話し合いの進め方:家族の協力を得るためには、家族会議を開き、全員の意見を聞くことが大切です。ご家族様の意向を尊重しつつ、現実的なプランを立て、役割分担を明確化し、定期的に見直しましょう。ケアマネージャーなどの第三者に参加を依頼することも有効です。

      

  • コミュニケーション術:家族とコミュニケーションをとる際は、感情的にならず、具体的な事実を伝え、「お願い」ではなく「提案」として話すことが重要です。相手の状況や負担も考慮したアプローチを心がけましょう。

      

  • 協力を得るための工夫:遠方に住む家族には金銭的支援や定期的な訪問を依頼し、家族全員で状況を共有するためのツールを活用しましょう。

     

ご家族様の介護は、決してひとりで抱え込んではいけません。例え頼れる家族や親族がいない場合でも、地域包括支援センターやケアマネージャーなどに相談することで、専門家が解決方法を一緒に探してくれます。

また、「直接誰かに相談するのは気が引ける…」と感じる方には、「マイナビあなたの介護」での情報収集や、介護の専門家への相談がおすすめです。「マイナビあなたの介護」では、在宅介護のさまざまな悩みや疑問を解決するヒントや情報を提供しています。

この記事が、介護の悩みを解決する際の参考になれば幸いです。

著者・監修

介護支援専門員(ケアマネージャー)

朝水 裕一

介護支援専門員(ケアマネージャー)

朝水 裕一

現役ケアマネ兼Webライター。介護施設長の経験を活かし、利用者・家族・スタッフに寄り添う記事を執筆。

現役ケアマネ兼Webライター。介護施設長の経験を活かし、利用者・家族・スタッフに寄り添う記事を執筆。

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