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第3回 介護保険外サービスの一覧|サービス事例と料金を徹底解説

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高齢化が進むなか、要介護者やその家族が利用できる公的支援だけでは、利用者のニーズを十分にまかないきれないケースも増えています。

そこで現在注目されているのが、自治体や社会福祉協議会、民間企業などが独自に提供する介護保険外サービスです。法律の制約がなく、身体介護や家事援助だけでなく、趣味活動のサポートまで幅広く依頼できる点が魅力と言えます。

この記事では、介護保険外サービスの内容と料金相場を例示しながら、利用にあたって知っておきたいメリット・デメリットや混合介護の現状について解説します。

介護保険外サービスとは

買い物の付き添い

介護保険外サービスとは、介護保険に基づいて提供されているサービス以外の高齢者向けサービスを指します。

そもそも介護保険サービスとは、要介護認定者の自立を支援するためのサービスです。対象者は要介護または要支援認定者に限られており、介護保険法によって提供可能なサービス内容が細かく定められています。

介護保険外サービスは介護保険が適用されないサービスであり、サービスの対象者や内容が各サービスを提供する事業者側の判断にゆだねられています。利用者の自立支援はもちろん、QOL向上や家族の介護負担軽減を目的としたサポートも可能であり、個々のニーズに柔軟に対応できるのがメリットです。

ただし、介護保険サービスは利用者の自己負担金額が料金の1~3割までであるのに対し、介護保険外サービスは料金の全額を自己負担しなければなりません。

介護保険外サービスと介護保険サービスの違い

介護保険サービスは、要介護者や要支援者自立した生活を営むための支援を目的としたサービスです。そのため、日常生活を営む上での必要最低限のサービスを提供するルールとなっています。

介護保険サービスで利用できないのは、以下のようなサービスです。

  • 直接利用者本人の支援につながらないサービス
  • 日常生活の範囲を超えたサービス
  • 趣味や嗜好に関するサービス
  • 商品販売などの生業の支援サービス
  • 利用者の留守中に実施するサービス

介護保険サービスの対象となるサービス・対象とならないサービスの具体例は、以下の通りです。

介護保険サービスの対象となるサービス

介護保険サービスの対象とならないサービス

身体介護

  • 食事介助
  • 清拭・入浴介助
  • 排泄介助
  • 着替え介助・体位変換
  • 服薬介助
  • 医療行為
  • 散髪
  • カミソリを使用したひげ剃り
  • 理美容院への付き添い
  • 服薬管理

生活援助

  • 介護者の居室の掃除
  • 洗濯
  • 食事準備・調理
  • 生活必需品の買い物
  • 衣類整理
  • 介護者の家族が利用する居室の掃除
  • 利用者が留守中の掃除
  • 自家用車の洗車
  • 嗜好品の買い物
  • 草むしり・花木の水やり

外出介助

  • 通院のための移動介助
  • 投票所への移動介助
  • 趣味やレジャーのための移動・付き添い

注意点として、介護保険サービスの対象範囲内のサービスであったとしても、利用者のケアと直接かかわらないサービスは利用できません。

介護保険サービスは要介護者の自立支援を目的としているのに対し、介護保険外サービスは利用者の生活を豊かにすることを目的としています。そのため、介護保険外サービスであれば介護保険対象外のサポートにも対応可能であり、柔軟な支援が受けられます。
 

訪問介護や通所介護など在宅介護サービスの併用も検討する

介護負担を軽減するために、在宅介護サービスの利用も検討してみましょう。介護者だけで抱え込むのではなく、介護サービスを上手に活用することで、介護の負担を大きく減らすことが可能です。

訪問介護サービスにはさまざまな種類があります。代表的な「訪問介護」と「通所介護」について説明します。

在宅介護サービスを活用した負担軽減方法

在宅介護サービスを上手に活用することで、介護の負担を大幅に減らすことが可能です。例えば、訪問介護を利用すれば、入浴や食事、排泄の介助などを介護のプロフェッショナルに任せられます。

また、通所介護(デイサービス)を利用すれば、介護者はその間、用事を済ませたり、休息を取ったりできます。これらのサービスを組み合わせることで、介護者の負担を減らしつつ、必要なケアを受けられるというメリットがあるのです。

  

【運営元別】介護保険外サービスの一覧と料金例

病院の付き添い

介護保険外サービスはさまざまな組織によって提供されており、サービス内容や利用方法も多様です。公的な保険サービスとは異なり、それぞれで費用にも幅があるのが特徴です。

ここでは、介護保険外サービスの一覧と料金例について詳しく解説します。

市区町村が提供する高齢者向け居宅サービス

市区町村が提供する高齢者向け在宅居宅サービスは、各自治体によって利用条件や料金などが異なります。対象者は主にひとり暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯ですが、中には要介護者でなければ利用できないサービスもあるため、利用条件をしっかりと確認することが必要です。

市区町村の高齢者支援サービスで提供される具体的なサービスの事例と料金相場は、以下の通りです。

サービスの事例

料金相場

紙おむつ・尿とりパッドの支給補助

なし

配食サービス

1食あたり500円

シルバーお助け隊事業

1回あたり300円

自立生活支援事業(家事代行サービス)

1時間あたり400円

訪問理美容サービス

1回あたり1,000~2,000円

こちらは、文京区「日常生活の支援」、神戸市「訪問理美容サービス(65歳以上)」を参考に、独自に費用をシミュレーションした一例です。実際の費用は状況や条件によって変動します。

紙おむつ・尿とりパッドの支給補助は現物支給または購入費の助成が基本であり、無料でサービスを受けられます。

また、シルバーお助け隊事業は電球・蛍光灯の交換や簡易な家具の移動、庭掃除などのサービスが対象となります。
 

社会福祉協議会が提供する介護保険外サービス

社会福祉協議会とは、地域における社会福祉活動推進を目的とした民間の非営利組織です。

社会福祉協議会の中には、介護保険外の高齢者向け生活支援サービスを提供している団体もあります。民間企業で提供される介護保険外サービスと比較すると費用が安く、コストを抑えて支援を受けられるのが魅力です。

社会福祉協議会で提供される具体的なサービスの事例と料金相場は、以下の通りです。

サービスの事例

料金相場

家事支援

1時間あたり700~2,000円

身体介護

1回(30分)あたり1,000~1,500円

※こちらは社会福祉法人 一宮町社会福祉協議会「介護給付の範囲外サービス事業」を参考に、独自に費用をシミュレーションした一例です。実際の費用は状況や条件によって変動します。

利用する社会福祉協議会によっては、支援内容にかかわらずサービスの利用時間ごとに一律料金を定めていることも少なくありません。電球交換や特定の範囲の掃除など、30分以内でできる簡単な作業を安価で依頼できるケースもあります。

また、社会福祉協議会は所属会員に対してサービスを提供するのが基本です。サービス利用の際は、入会事務費や年間会費などがかかります。
 

シルバー人材センターが提供する介護保険外サービス

シルバー人材センターとは、主に60歳以上の人材に働く機会を提供するための公益社団法人です。都道府県知事から指定を受けた公益法人が事業を担っており、高齢者の生活の安定や地域社会の発展を目的としたサービスを提供しています。

シルバー人材センターでは、高齢者の自立した生活や介護予防の支援として「軽度生活援助事業」を営んでいます。軽度生活援助では掃除や洗濯などの日常家事のほか、庭木の手入れや除雪などのサービスも提供可能です。

シルバー人材センターで提供される介護保険外サービスの事例と料金相場は、以下の通りです。

サービスの事例

料金相場

日常家事援助

1時間あたり850~1,400円

大工・電気・塗装などの支援

1回(2時間)あたり2,800~3,400円

ワンコインサービス

10分あたり100円/30分あたり500円

 ※こちらは、公益社団法人 柏崎市シルバー人材センター「介護・子育て・家事援助・ワンコインサービス」、公益社団法人 佐倉市シルバー人材センター「生活支援の料金」を参考に、独自に費用をシミュレーションした一例です。実際の費用は状況や条件によって変動します。

ワンコインサービスは、電球交換やボタンの付け替え、庭木の水やり、ストーブ・扇風機の入れ替えなどの簡単な家事サポートが対象となります。
 

介護サービス事業者が提供する介護保険外サービス

介護サービス事業者の中には、介護保険サービスと介護保険外サービスの両方を提供している事業者も少なくありません。

介護サービス事業者で介護保険外サービスを利用すると、介護関連資格や実務経験を持つ介護職員から支援を受けられるのがメリットです。また、将来的に要介護認定を受けた場合、なじみのスタッフから継続して介護保険サービスを受けられるのも嬉しいポイントです。

介護認定を受けていない方が介護サービス事業者による介護保険外サービスの利用を希望する際は、事業者または地域包括支援センターに問い合わせましょう。

介護サービス事業者で提供される介護保険外サービスの事例と料金相場は、以下の通りです。

サービスの事例

料金相場

身体介護・家事援助

1時間あたり1,800~5,500円

お泊りデイ

1泊あたり4,000~8,000円

※こちらは独自に費用をシミュレーションした一例です。実際の費用は状況や条件によって変動します。

事業者によっては、身体介護と家事援助でサービス料金を分けていることもあります。
  

その他の民間企業が提供する介護保険外サービス

民間企業が提供する介護保険外サービスは内容が幅広く、市区町村が提供するサービスなどと比較すると柔軟な対応が可能です。さらに、利用条件が定められていないため、高齢者に限らず誰でも利用できる点も魅力です。

全国の市区町村では、民間企業が提供する介護保険外サービスの情報をまとめて公開する取り組みが進められています。各企業に問い合わせて個別にサービスの詳細を確認するのはもちろん、地域包括支援センターなどで利用したいサービスについて問い合わせるのもよいでしょう。

民間企業が提供する介護保険外サービスの事例と料金相場は、以下の通りです。

サービスの事例

料金相場

配食サービス

1食あたり500~800円

家事代行サービス

1時間あたり3,000円

外出の付き添い

1時間あたり3,000~6,000円

※こちらは独自に費用をシミュレーションした一例です。実際の費用は状況や条件によって変動します。

配食サービスはコンビニや生協、弁当チェーンなどが実施しており、減塩食や介護食などの幅広いメニューを展開している企業もあります。また、家事代行サービスには多様な企業が参入しており、単発利用・定期利用などのプランを選択可能です。

 

介護保険外サービスを利用するメリット

メリットと書かれたブロック

介護保険外サービスの種類はさまざまですが、どのサービスにも共通するメリットが複数あります。利用者本人はもちろん家族にとってのメリットもあるため、サービス利用を検討する際はメリットをしっかりと把握しておきましょう。

ここでは、介護保険外サービスを利用することのメリットについて詳しく解説します。

より幅広いサービスを利用しやすい

介護保険外サービスは介護保険制度による制限がないため、それぞれの利用者に合った多様なサービスを選択できるのがメリットです。

介護保険サービスは、法律によりサービス内容や利用対象者などが定められています。対して、介護保険外サービスは比較的自由なサービスが提供されているほか、サービス提供側が定める条件にもよりますが、基本的には料金さえ支払えば誰でもサービスを利用可能です。

介護保険外サービスであれば利用者それぞれのニーズや健康状態、ライフスタイルに合った柔軟な対応が叶うため、利用者の最適な介護の実現につながるでしょう。

また、身体介護や日常家事のみでなく趣味・娯楽に関するサポートも提供可能であり、利用者のQOL向上も期待できます。
 

手続きが介護保険サービスより簡素なものも多い

介護保険外サービスのメリットには、サービス利用開始までの手続きが比較的簡素である点も挙げられます。

介護保険サービスの利用開始には要介護認定を受け、ケアプランを作成するプロセスが必要であり、利用開始までのハードルが高いと感じる方も少なくありません。対して、介護保険外サービスはサポートの種類により利用開始手続きが異なるものの、基本的には簡単な登録や電話のみですぐにサービスを利用可能です。

さらに、介護保険サービスは利用日や利用時間が細かく決められていますが、介護保険外サービスには当日の状況に応じて柔軟に支援を申し込めるサービスが多くあります。急な予定変更や体調の変化に合わせてサービスを利用できるため、「いつでも頼れる」という安心感を得られるのも嬉しいポイントです。
 

利用者本人だけでなく家族向けのサービスもある

介護保険外サービスでは、利用者家族を対象とした支援も利用できるのもメリットとなります。

介護保険外サービスにおける利用者の家族向けのサービス例は、以下の通りです。

  • 利用者家族の休息支援(レスパイトケア)
  • 介護相談・カウンセリング
  • 介護教室
  • 家族会の運営支援
  • 家事代行
  • 仕事・介護の両立支援

利用者家族の休息支援とは、スタッフが介護ケアを代行し、家族のリフレッシュ時間を確保するサービスです。数時間から数日まで、ニーズに合わせて利用時間・利用期間を選択できます。

また、家族会とは、家族を在宅介護している方たちを集めて情報交換・悩みの共有ができる場です。同じ境遇の方との関わりを作ることで利用者家族の孤立を防ぎ、メンタルの安定をサポートできます。

 

介護保険外サービスを利用するデメリット

デメリットと書かれたブロック

介護保険外サービスにはメリットが多い一方で、デメリットと言える部分もいくつかあります。介護保険外サービスの利用を検討している方は、メリットとあわせてデメリットについてもしっかりと理解しておきましょう。

ここでは、介護保険外サービスを利用するデメリットについて詳しく解説します。

介護保険サービスより費用が高くなりやすい

介護保険外サービスのデメリットとして、介護保険サービスと比較して費用が高額であり、経済的な負担が大きくなりやすい点が挙げられます。

介護保険サービスの自己負担額は利用料金の1~3割であるのに対し、介護保険外サービスは全額自己負担です。特にサービスを長期的に利用する予定である場合、サービス利用料金が家計にとっての大きな負担になり得るでしょう。

また、費用を理由に本来必要な介護支援サービスを受けられないと、結果として介護ケアの質が低下したり、家族の負担が大きくなったりすることにつながります。
 

サービスの質にばらつきがある

介護保険外サービスは介護事業者や民間企業などによって提供されており、サービス内容に基準や制約はありません。利用者に寄り添った柔軟な対応が叶う点は大きなメリットですが、サービスの質に差が出やすいのも事実です。

特に身体介護については、介護に関する知識・スキルが十分でないスタッフがケアを提供することで、利用者の状態を悪化させる恐れがあります。

質の高いサービスを受けるには、情報収集を徹底して信頼できる事業所・企業を選択することが重要です。 
 

利用条件に制約があるサービスもある

介護保険外サービスの中には、サービス利用に一定の条件を設けているものもあります。

介護保険外サービスは、利用者の条件に関する法規制がありません。しかし、サービスによっては利用を要介護認定者に限定していたり、ケアプランの作成が必要であったりする場合もあります。

また、介護事業所が提供する介護保険外サービスは、介護保険サービスの契約者に対するオプションであるケースも少なくありません。

介護保険外サービスの利用を検討する際は、各自治体や事業所に細かな条件を問い合わせておくと安心です。

  

介護保険サービスと介護保険外サービスを同時に利用する方法

顎に手を添え考える女性

介護保険サービスと介護保険外サービスを同時に利用する「混合介護」は、原則としてできません。厚生労働省では、介護保険サービスと介護保険外サービスをどちらも利用する条件として「介護保険サービスと介護保険外サービスが明確に区分されていること」を挙げています。

ただし、多くの自治体では、混合介護について「同時」ではなく「連続」でのサービス提供であれば問題ないと判断しています。

例として、要介護者の夫・要介護者ではない妻の2人暮らしの家庭を想定します。夫の食事調理は介護保険サービス、妻の食事調理は介護保険外サービスです。

スタッフが夫・妻の2人分の食事を調理することは、介護保険サービスと介護保険外サービスの「同時」提供であり、認められません。対して、夫の食事調理を終えた後に妻の食事調理をすることは、両サービスの「連続」提供であるため可能です。

近年では介護ニーズの多様化を受けて規制緩和が進められており、自治体によっては、混合介護について試験的にルールを整えている地域もあります。

  

まとめ

笑顔の女性二人

介護保険外サービスは、利用対象や提供内容が自由度の高い分、自己負担が増すなどのリスクも抱えています。しかし、介護保険サービスの制約を補い、趣味・娯楽に関するサポートや家族向けの支援など多彩なメニューを選択できる点は大きな強みです。

また、公的サービスと組み合わせれば、介護保険サービスだけでは難しいより柔軟なケア体制を整えることも可能になります。サービスを選ぶ際は、自治体の窓口や地域包括支援センターなどを活用し、費用や条件、提供者の信頼性をきちんと把握することが大切です。

介護保険外サービスの利用に関してお悩みがあるときは「マイナビあなたの介護」に相談するのがいいでしょう。

LINEや電話で手軽に相談でき、介護の専門家があなたのお悩みに沿ったご提案をしてくれます。

まずは会員登録をし、相談してみてはいかがでしょうか。


参考

厚生労働省「地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集」
経済産業省「経済産業省における介護分野の取組について」
豊島区「【ご注意ください】介護保険で利用できる訪問介護サービス、利用できない訪問介護サービス」
文京区「日常生活の支援」
神戸市「訪問理美容サービス(65歳以上)」
社会福祉法人 一宮町社会福祉協議会「介護給付の範囲外サービス事業」
公益社団法人 柏崎市シルバー人材センター「介護・子育て・家事援助・ワンコインサービス」
公益社団法人 佐倉市シルバー人材センター「生活支援の料金」
厚生労働省「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料 令和6年3月」
厚生労働省「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」

※当記事は2025年1月時点の情報をもとに作成しています

監修

北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO

菊地 雅洋

北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO

菊地 雅洋

社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。

社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。

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