在宅での介護期間が長くなるにつれて、介護者の負担は大きくなりやすいもの。慢性的な疲労やストレスが、心身の健康や家族の関係性に悪影響を与えることも考えられます。
そこで近年、こうした介護負担を和らげるケアの一つとして「レスパイトケア」に注目が集まっています。大切な人と穏やかな日々を過ごすためのキーワードとして、レスパイトケアのことを知っておきましょう。
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在宅での介護期間が長くなるにつれて、介護者の負担は大きくなりやすいもの。慢性的な疲労やストレスが、心身の健康や家族の関係性に悪影響を与えることも考えられます。
そこで近年、こうした介護負担を和らげるケアの一つとして「レスパイトケア」に注目が集まっています。大切な人と穏やかな日々を過ごすためのキーワードとして、レスパイトケアのことを知っておきましょう。
「レスパイト」とは「小休憩/休息/息抜き」などの意味を持つ言葉で、「レスパイトケア」は、介護者が介護から一時的に離れ、心や体を休めることを意味します。
介護する人とされる人、双方の生活の質を守ることにもつながり、介護生活における「共倒れ」を防ぐ効果などが期待されています。
介護保険制度でもさまざまな種類のレスパイトケアが設けられているため、家庭のニーズに合わせて選び、活用する視点を持つことが重要です。
レスパイトケアを利用することには、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。すでに在宅介護をしている人はもちろんのこと、将来的に介護を担う可能性がある人や、自分が介護されるかもしれないと考える人も、ぜひ知っておきたいポイントです。
在宅介護では、要介護者のニーズに合わせた食事の介助や体位変換など、決まった時間にケアを行うことが多いもの。介護を担う人は時間に追われがちで、せわしなく動いているうちに一日が終わってしまった……なんてことも少なくありません。
介護度が上がるにつれて、身体介護や見守りなど介護者の負担も大きくなっていくため、気付かないうちに心身の疲労が蓄積されていることもあるでしょう。
そこで重要なのが、介護から離れる時間を意識的に確保して、介護者が心身をしっかりと休ませることです。普段は行けない場所に出かけたり、大切な友人に会ったりと、自由に過ごせること自体がリフレッシュになります。
精神的な余裕が生まれれば、日常のケアや家族の状況などを冷静に見直すこともできるでしょう。介護者がしっかりと休息を取ることは、継続的かつ良質なケアを実現することにつながります。
在宅介護を続けていると、毎日がルーティン化しやすいもの。「この生活がいつまで続くのだろう」「誰にも頼れない中で頑張れるだろうか」など、漠然とした不安を抱えたままになりがちです。
こうした介護する側の疲れや苛立ちが、介護される側に伝わっていき、人間関係にヒビが入ってしまうケースも珍しくありません。介護者と要介護者がずっと同じ生活空間にいることから、お互いにストレスをため込みやすくもなります。
しかし、介護サービスを活用すると必然的に「プロの目」が入り、安心感を持ちながら介護を続けやすくなります。困ったことを相談する絶好のチャンスでもあり、専門家からケアの方法を教えてもらうことができれば「こんなコツがあったんだ!」と気付きを得られるでしょう。
一人きりでの介護生活には限界があるもの。介護サービスを積極的に利用して、前向きに向き合っていきましょう。
認知機能が低下したり、体が思うように動かせなくなったりすると、引きこもりがちになる人が多いようです。外で他者と交流する頻度が下がると、さらに認知・身体機能が低下してしまう要因になりかねません。
レスパイトケアには、外部の人と接する機会が増えてコミュニケーションが活性化される、定期的な外出が運動量の増加や適度な刺激につながるといった効果が期待できます。
また、介護を受ける人が、家族に対して「苦労をかけて申し訳ない」といった思いを抱えていることは少なくありません。レスパイトケアを利用して家族が休めることは、要介護者の精神的な負担を減らすことにもつながります。
介護の専門家が入ることで、歩行機能や言語能力の低下といった小さな変化を見出したり、よりよいケアを提案してもらえたりする可能性もあります。
それでは、レスパイトケアとしての役割もある介護サービスについて、詳しく見ていきましょう。
「訪問」「通所」「宿泊」の3つに大別され、家族の状況などに応じて選択します。お近くの事業所に問い合わせたり、見学をお願いしたりすることもお勧めです。
ホームヘルパー(訪問介護員)が自宅を訪れ、食事、入浴、排泄などの身体介護や、調理、洗濯、掃除などの生活援助を行うサービスです。
いつもの生活環境でプロのケアを受けられるので、知らない場所に行くことが不安な人でも安心感を得やすいでしょう。なお、家族分の家事、医療行為、ペットの散歩などは本サービスに含まれないので注意しましょう。
▶ 訪問介護とは?
事業所に通い、食事、入浴、トイレ介助、口腔ケア、レクリエーション、機能訓練などのサービスを受けることができる、日帰りのサービスです。自宅から事業所までの送迎も行ってもらえる場合がほとんど。
事業所によって利用時間や得意分野(レクリエーションや機能訓練など)が異なるので、本人にマッチした施設を探すことがポイントです。
▶ デイサービス(通所介護)とは?
日帰りで事業所に通い、日常生活の介助を受けながら過ごす点は、上記の通所介護と同様。利用者定員が少なく手厚い介護を受けやすいこと、認知症の知識が豊富な介護スタッフが在籍しており、より専門的なケアを受けられることが大きな特徴です。認知症のある人に適したレクリエーションや機能訓練に力を入れている事業所も多いです。
あらかじめ期間を定めて要介護者が施設に泊まり、日常生活全般の介護サービスを受けるものです。24時間以上にわたって介護から解放されるため、家族がしっかりと休息を得たい場合にも有用です。
また、「お試し」として宿泊してみることで、施設の雰囲気やケアの質などの情報を収集し、今後の入所施設検討などに役立てることもできるでしょう。
▶ ショートステイ(短期入所生活介護)とは?
医療的な管理や介助を必要とする人を対象とした、医療保険適用の短期入院サービスです。定期的な点滴や胃瘻の管理などが必要な場合も、医療従事者から適切なケアを受けることができます。
入院期間は最長で2週間程度のことが一般的。受け入れ条件などは病院によって異なるため、事前の確認が必須です。
地域密着型のサービスで、通い・訪問・泊まりのサービスをフレキシブルに組み合わせながら利用できます。住み慣れた環境の中で、家庭の事情や要介護者の状況などに合わせて選択できるため、環境の変化によるストレスを軽減できるでしょう。
レスパイトケアを利用する前に、お住まいの地域でサービスを受けられる事業所の種類や料金などを調べておくとスムーズです。また、介護保険制度によるサービスを希望する場合には、市区町村の窓口に申請を行い、要介護認定を受ける必要があります。想像以上に時間を要する場合もあるので、必要がある人は早めの申請を意識しましょう。
介護保険サービスを利用する際、ケアマネージャーとの面談などで「レスパイトケアを利用したい」と相談してみるとよいでしょう。多くの場合、レスパイトケアの利用には事前予約が必要となるので、先手を打って準備を進めておくことが有効です。
特に、人気のあるサービスや定員が少ない施設は、早めに予約が埋まってしまうことがあります。
なお、介護保険サービスではなく、民間企業などによる自費サービスを活用することも考えられるため、選択肢の一つとして覚えておきましょう。
▶ 介護保険の使い方をわかりやすく解説
▶ 要介護認定とは?
▶ 介護保険外サービスの一覧
介護する人とされる人、双方が納得感を持ってレスパイトケアを利用することが大切です。
悪印象を抱えたまま無理に利用すれば、余計に心身の負担が増しかねません。まずは介護する側が、「家族から離れたいと思うなんて……」「自分だけ楽しむのは悪い気がする」などと罪悪感を持たないようにしましょう。
介護を受ける側も同様で、レスパイトケアの意義をしっかりと理解しておくことが肝心です(場合によっては、周囲が分かりやすく説明する必要があるかもしれません)。
また、いつもと違う環境に身を置くことで、精神面や身体面に思わぬ変化が起こる可能性もあります。家族が安心して過ごせているか、サービス内容はマッチしているか、施設の環境に問題がないかなどを把握するために、特に利用前後は積極的に本人と会話をしましょう。
もちろん、事業所などの職員とコミュニケーションを取ることも大切です。新しいサービスを試す時は不安が出てくることも多いので、周囲と連携を取りながら解消していきましょう。一つの施設が合わなくても焦らずに、他の施設やサービスを視野に入れるなど、長い目で検討する姿勢が大事です。
在宅介護の負担を減らす有効な方法の一つ、レスパイトケアについて解説しました。上手に活用することで、介護者と要介護者のストレスを減らすことにつながります。
レスパイトケアの導入を考える際には、要介護者の心身機能や認知機能だけでなく、生活スタイルにもマッチしたサービスを選びましょう。少しずつ変わりゆくニーズに合わせて、介護環境も柔軟に変化させ、無理なく楽しい生活を続けられるといいですね。
レスパイトケアという側面だけで見ても、介護サービスにはたくさんの種類があります。分からないことや悩むことがあれば、「マイナビあなたの介護」を活用してみませんか。
LINEや電話で気軽に相談することができます。施設探し、介護準備のサポートなどさまざまな支援を行っているので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
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