けがや病気などにより、自力で食事が摂れない人をサポートする食事介助。
特に高齢者の場合は嚥下機能が低下していることも多く、注意して行う必要があります。食事介助の基本や押さえておきたいポイントなどについて、詳しく解説します。
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けがや病気などにより、自力で食事が摂れない人をサポートする食事介助。
特に高齢者の場合は嚥下機能が低下していることも多く、注意して行う必要があります。食事介助の基本や押さえておきたいポイントなどについて、詳しく解説します。
食事介助とは、一人では食事や水分の摂取が難しい人をサポートすることを意味します。スムーズに食べ物を口に運べるように手伝ったり、水分を摂るよう促したりして、栄養不足や脱水症状を防ぎます。
また、加齢とともに嚥下機能が低下するため、誤嚥(食べ物などが誤って気道に入ること)のリスクも高まります。安全に食事ができるように、見守りや声かけを行うことも大事なポイントだと言えます。
その日の気分や体調などによって、食事の好みやペースにも変化が生まれるもの。
介助を受けるご家族にとっても、それは同じことです。安全に介助を進めるための事前準備として、特に重視すべき点を紹介します。
食事に使う食器、エプロン、ランチマット、手拭きなどをそろえます。食事をするスペースは整えておき、関係のないものはテーブルに置かないようにすると、食べることにしっかりと集中しやすくなります。
よりリラックスできる空間をめざし、あらかじめ部屋の換気をしたり、好きな音楽やラジオを流したりすることもお勧めです。
食事の前に「今日の具合はどう?」「お腹は空いている?」などと声をかけて、体調に変化がないかチェックしましょう。もし食欲不振であれば品数を減らしたり、おかゆやプリンなどの消化によいものを取り入れたりすると、食が進みやすくなります。また、落ち着いて食事を摂るために、食前にトイレを促すとよいでしょう。
誤嚥を防ぐためには、正しい姿勢がとても大切です。座って食べる場合は、いすや車いすなどが安定しているか確認し、足をしっかりと床につけて、テーブルと体の間にこぶし1つ分くらいスペースが空くよう深く腰かけてもらいます。ベッド上などで食べる場合は、体の状態によって約30〜90度に角度を調整します。必要に応じて、クッションや枕も使ってみましょう。
食べる前に舌や口周りの筋肉を動かすと、嚥下機能を高められます(例:舌を出したり引っ込めたりする、頬を膨らませたりへこませたりする)。また、歯磨きやうがいをすることで唾液の分泌が促進され、飲み込みがスムーズになる上、舌の汚れを取ることで味覚が向上する効果も期待できます。入れ歯を使用する人の場合は、装着し忘れないよう注意してください。
準備ができたら、いよいよ食事介助に入ります。少しでも自力で食事を摂れる場合はなるべく本人に任せる方がよいですが、食べこぼしやむせがないか、バランスよく食べられているか、しっかりと飲み込めているかなどを見守り、必要な部分をサポートしてみましょう。
食器や食べ物など「口に入るもの」に直接触れることがあるため、まずは手指衛生を徹底しましょう。食事介助を受ける人だけでなく、介助する人も忘れずに行います。石鹸を使って丁寧に手洗いし、手が届くところに除菌スプレーやウェットティッシュなどを置いておくと安心です。
食べこぼしが多く、衣服や食器の周りを汚してしまう場合には、エプロンの着用がお勧め。首に巻き付ける際、痛みや苦しさを感じていないか確認しましょう。トレイの下にエプロンの裾を差し込むと、テーブルなどの下にこぼれることを防げます。ポケット付き、プラスチック製などたくさんの種類があるので、家族の好みや習慣に合わせて選ぶことができます。
食事を配膳したら、介助者もいすに座ります。立ったまま食事介助すると、相手の顎が上がり誤嚥につながりやすいため、避けるようにしてください。座る位置は、介助を受ける人の正面~斜め前が適切です。目線が合うように、必要に応じていすの高さも調節しましょう。その後、配膳された食事を指差しながら、献立を説明します。
その人のペースに合わせて、主食、主菜、副菜をバランスよく食べ進めます。声かけしながら、スプーンですくって口に運ぶなどサポートしましょう。その際、相手の正面から「水平の角度」を意識します。乾いたものは飲み込みづらいため、最初に水やお茶を一口飲んだり、水分の多い料理から食べ始めたりすると安心です。
食事介助では、誤嚥しないように食べる量やスピードなどに配慮すること、要介護者の自主性を重んじて口を出し過ぎないことなどが重要です。「安全性」と「楽しさ」という視点を忘れず、次の4つのポイントを意識してみましょう。
一口が大き過ぎると咀嚼に時間がかかったり、食べ物が咽頭に流れてむせにつながったりすることがあります。特に食べ始めは、口内の唾液が少ない状態です。一口の量は「少なめ」でスタートするようにしましょう。また、食べ物を口に運ぶ際は「ゆっくり」が合言葉。慣れるまではつい急ぎがちなので、相手のペースに合わせるよう注意が必要です。
まだ飲み込めていない状態で次の食べ物を口に入れると、誤嚥の原因になってしまいます。相手が口を開けたタイミングで、口内の様子を確認することが欠かせません。食べ物がなくなっていたら次の一口……と進めていきましょう。ずっと何かかんでいる、話し声がガラガラしているといった様子があれば、しっかり飲み込めていない可能性があります。
「昼食は毎日12時〜12時半まで」などと食事時間が決まっていると、生活リズムが安定し、消化器官もスムーズに働くようになります。時間の目安を設けることで、食欲の向上にもつながるはずです。また、長時間の食事は負担になるため、1食30分程度に収めるようにしましょう。食後はすぐに横にならず、しばらく上半身を起こした状態でいてもらいます。
過剰に手を貸すことで、その人の自尊心を傷つけてしまうことがあります。自力で食べられる場合は見守りに重点を置き、困っていると感じたタイミングで手助けするようにしましょう。本人の意思を尊重することで達成感や張り合いが生まれ、自立した生活を維持することにつながります。
食事が終わったら、うがいをしたり歯や舌を磨いたりして、口の中に食べかすなどが残らないようにしましょう。こまめなケアで口の中を清潔に保つことにより、誤嚥や虫歯、歯周病などのリスクを減らすことができます。相手に座ってもらうか、上半身や頭部を45度程度に起こした姿勢をとってもらい、顎が上がらないように注意しながらケアを行います。
食事介助で用いるスプーンについては、すくう部分が大き過ぎると口に入りづらいため、ティースプーン程度の大きさが適しているとされています。全体がシリコンでできているタイプだと、口の周りや歯茎を傷つける心配がありません。その他にも、食事介助のために開発された介護用品はたくさんあり、最近では量販店や100円ショップなどでも気軽に入手しやすくなりました。扱いやすい形状の食器や補助具などを、用途に合わせて選んでみましょう。
相手の食欲を刺激することも、食事介助を円滑に進めるコツの一つ。好きなおかずを少し白米に混ぜてみるなど、おいしさが引き立つように工夫してみましょう(たくさんの種類を混ぜ過ぎると見た目が損なわれるので気を付けてください)。介助中は、「よくお母さんに作ってもらった料理だね」「旅行に行った時にも食べたね」などと声かけすることで、より楽しい食事になるはずです。ただし、咀嚼中に返事をしようとすることで誤嚥につながってしまうケースもあるため、状況を見ながら行いましょう。
適切な食事習慣で栄養を摂取することは、健康的な生活の土台となります。ただし、介助中は相手のペースに寄り添い、無理して食べさせないことも忘れずに。食事の時間が苦痛になってしまえば本末転倒です。一食で十分な栄養が摂れない場合は、間食をうまく活用することも一案。その日の献立と食べた量を記録できると理想的です。
食事中に大きく咳き込んだ場合、誤嚥の可能性があります。すぐ前傾姿勢になってもらい、口の中のものをすべて出してもらいましょう。
入れ歯をしている場合は速やかに外し、手にガーゼなどを巻いて口内のものをかき出してもよいでしょう。背中を軽くたたいたり、さすったりすることも効果的です。
無理に水分を摂ると、誤嚥が悪化する可能性があるので注意しましょう。顔面や唇が紫色になる、呼吸が荒く苦しそう、声が出ない、首をかきむしるなどの様子が見られたら、すぐに救急車を呼ぶようにしてください。
食事介助の基本やポイント、注意点などについて解説してきました。介助の仕方を工夫したり適切な介護用品を取り入れたりすることで、安全に食を楽しみ、誤嚥を防ぐことにつながります。
もし在宅介護に不安を感じる場合は、地域包括支援センターや自治体の福祉関係窓口で相談すると、保健師やケアマネージャーなどにつなげてもらうことができます。
また、介護保険サービスに関する悩み事をより気軽に相談したい方には、「マイナビあなたの介護」も役立ちます。LINEや電話などで、介護に関するさまざまな悩み事についてアドバイスを受けることができます。施設探し、介護準備のサポート、資料請求・見学申込の代行など幅広い支援を行っているので、ぜひお試しください。
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
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