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介護老人福祉施設(特養)とは?入所条件や費用相場・サービス内容を解説

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特別養護老人ホームは、自宅での生活が難しい高齢者が暮らすための施設であり、自治体や社会福祉法人などによって運営されます。利益を追求するのではなく、社会貢献や福祉の向上を目的としており、民間の老人ホームとは異なる運営理念を持っている施設です。

また、公的施設であることから国の補助金や税制上の優遇措置を受けられ、入所者の費用負担は比較的少なく済みます。

当記事では、特別養護老人ホームとは何かといった基礎的な内容から、入所条件や費用相場まで詳しく解説します。

1. 特別養護老人ホーム(特養)とは

特別養護老人ホームの模型

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、常に介護が必要となる高齢者を支援するための公的な施設です。特別養護老人ホームは、日常生活の基本的なサポート(入浴、食事、排泄など)に加えて、機能訓練や健康管理、療養上の世話なども行います。

特別養護老人ホームは、以下のように老人福祉法で定義されている公的施設です。

【特別養護老人ホームを定義づける法律】

第二十条の五 特別養護老人ホームは、第十一条第一項第二号の措置に係る者又は介護保険法の規定による地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護に係る地域密着型介護サービス費若しくは介護福祉施設サービスに係る施設介護サービス費の支給に係る者その他の政令で定める者を入所させ、養護することを目的とする施設とする。

(引用:e-gov法令検索「老人福祉法」 引用日2024/4/14)

日本全国には2022年度末の時点で10,562施設の特別養護老人ホームがあり、施設数は年々増加している傾向です。多くの高齢者やそのご家族からのニーズが大きいことがうかがえます。

費用の面でも比較的安価で公的なサポートが受けられるため、多くの入所希望者が存在し、入所までに時間がかかることがあります。

特別養護老人ホームに入所できる方

特別養護老人ホームへの入所は、要介護3以上の認定を受けた高齢者が対象とされています。65歳以上ではなくても特定疾病に該当し、要介護3以上の認定を受ければ40~64歳の方も入居可能です。特別養護老人ホームの入所がこのように制限されているのは、入所希望者の中でも特に介護の必要度が高い方が優先的に施設を利用できるようにするためです。

ただし、要介護1や要介護2の認定を受けている場合でも、特例として入所が認められることがあります。具体的には、認知症や精神障害があり日常生活に支障が生じている場合、深刻な虐待が疑われる状況、または家族による支援が期待できず地域の介護サービスが不十分である場合など、やむを得ない事情があるときなどに限られます。

【要介護1~2で特養に入所する条件】

  1. 認知症で、日常生活に支障を来すような症状等が頻繁に見られること
  2. 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状等が頻繁に見られること
  3. 深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難な状態であること
  4. 単身世帯等家族等の支援が期待できず、地域での介護サービス等の供給が不十分であること

(引用:大分県ホームページ「特養に入所できるのは 原則として要介護 3 以上の方となります」 引用日2024/4/14)

要介護1や要介護2の方が、入所を申し込む際には、特別養護老人ホーム以外での生活が困難である事情を詳細に申告し、施設と市町村の協議を経て入所の可否が決定されます。

 

2. 特別養護老人ホームの種類と申込条件

特別養護老人ホームは、各高齢者のニーズに合わせたサービスを提供するために、複数のタイプが存在します。ここでは、それぞれのタイプごとにどのような特徴があるのか、また申込条件にどのような違いがあるのかについて解説します。

広域型

広域型特別養護老人ホームは、定員が30名以上で、入所条件に居住地の制限がない点が特徴です。施設の所在地を問わず、広い地域からの入所申し込みを受け入れることが可能です。特に都市部では、入所待機者が多いため、居住地にこだわらない利用者さんは、比較的空きが出やすい地域の広域型特養に申し込めば、早期に入所できる可能性が高まります。

広域型特別養護老人ホームは居住地の制限がないことから、多くの高齢者の方にとって利用しやすい選択肢となっています。
 

地域密着型

地域密着型特別養護老人ホームは、2006年の介護保険法改正で創設された比較的新しいタイプの施設です。定員が29人以下の小規模な施設で、家庭的な雰囲気の中で、入所者さん一人ひとりに対する手厚いケアが期待できます。

また、原則として、施設がある市区町村に住民票がある要介護3以上の高齢者のみが入所可能です。ただし、特例措置で要介護1・2の方も入所できる場合があります。

運営形態には、サテライト型・単独型の2種類があります。

サテライト型

  • 広域型の特別養護老人ホームの分館として運営。
  • 本体施設から基本的に20分以内の場所にある。
  • 広域型のサービスを受けながら、地域密着型の利点も享受できる。

単独型

  • 単独で運営。
  • ショートステイ、小規模多機能介護、デイサービスなどを併設している施設が多い。

入所者さんの生活歴や習慣を尊重し、可能な限り以前の生活環境に近い形でケアが行われる施設です。
 

地域サポート型

地域サポート型特別養護老人ホームは、主に在宅で介護生活を送る65歳以上の高齢者(要介護認定を受けている方)を支援する施設です。サービスは24時間体制で提供され、日中は生活援助員が利用者さんの自宅を訪問して日常生活の支援を行い、夜間は看護師が待機し、緊急時の対応や相談を受け付けます。特に1人暮らしや高齢の夫婦のみで生活している世帯、日中家族が留守で1人過ごす時間が長い高齢者などが主な対象です。

ただし、現在地域サポート型の施設は全国的に少ないため、今後の普及と拡充が期待されています。

 

3. 特別養護老人ホームにかかる費用の相場

特別養護老人ホームにかかる費用のイメージ

特別養護老人ホームの費用は原則として介護保険の対象となります。また、要介護度や利用するサービスによって費用は変動します。

要介護3の場合の、特別養護老人ホームの費用相場は以下の通りです。

【特別養護老人ホームの費用相場(要介護3の場合)】

初期費用

0円

入居一時金

0円

月額費用

居住費

25,650~60,180円

食費

43,350円

施設サービス費

21,360~23,790円

その他の日用品費(例)

10,000~20,000円

合計

100,360~147,320円

(出典:厚生労働省「サービスにかかる利用料」
(出典:厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」

※こちらは厚生労働省のWebサイトを参考に、独自に費用をシミュレーションした1例です。実際の費用は状況や条件によって変動します。

以下では、各費用の詳細について解説します。

居住費

特別養護老人ホームにおける居住費とは、居室の利用対価として支払う費用です。介護保険で定められた基準費用額に基づいて算定され、金額は居室のタイプによって異なります。

基準費用額(日額)
2024年8月以降

基準費用額(日額)
2024年8月以前

居住費

ユニット型個室

2,066円

2,006円

ユニット型個室的多床室

1,728円

1,668円

従来型個室

1,231円

1,171円

多床室

915円

855円

(出典:厚生労働省「サービスにかかる利用料」
(出典:厚生労働省「令和6年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直しに係る周知への協力依頼について」

介護保険サービスを利用した際の利用者さんの負担は、介護サービスにかかった費用の1割です。一定以上所得者の場合は、2割もしくは3割となります。

なお、上記の表は基準費用額(日額)ですが、負担限度額(日額)も段階ごとに決められています。詳しくは、上記の出典資料をご参考にしてください。
 

食費

食費の基準費用額(日額)は以下の通りです。

 

基準費用額(日額)

食費

1,445円

(出典:厚生労働省「サービスにかかる利用料」

特別養護老人ホームの食費は、入所者が利用する3食分の食事代金です。介護保険で定められた基準費用額に基づいて算定され、1日あたりで請求されます。
 

施設サービス費

施設サービス費の利用者負担額は以下の通りです。

サービス費用の設定

利用者負担(1割)(1日につき)

 

従来型個室

ユニット型個室

要介護1

589円

670円

要介護2

659円

740円

要介護3

732円

815円

要介護4

802円

886円

要介護5

871円

955円

(出典:令和6年度介護報酬改定における改定事項について

施設サービス費は、いわゆる「介護費用」のようなイメージで、要介護度が高いほど金額も高くなります。
 

その他の日常生活費

医療費・理美容費・被服費・嗜好品などの、日常生活にかかる費用は自己負担です。

ただし、おむつ代・尿取りパットなどにかかる費用や、クリーニングが不要な洗濯などは、施設側が負担します。
 

施設サービスの加算

特別養護老人ホームにおける介護サービス加算とは、介護保険で定められた介護サービスに上乗せされる加算措置です。

特別養護老人ホームに入所する介護被保険者が、手厚い介護サービスを受けるのに必要な費用等の一部をまかなうために設けられています。これらの加算サービスを受ける場合、追加で介護費用がかかります。

【加算サービスの内容】

  • 日常生活継続支援加算
  • 看護体制加算
  • 夜勤職員配置加算
  • 生活機能向上連携加算
  • 看取り介護加算
  • 排せつ支援加算
  • 認知症専門ケア加算

など

(出典:厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の報酬・基準について」

 

4. 特別養護老人ホームで受けられるサービス

特養でサービスを受ける高齢者

特別養護老人ホームでは、利用者さんが自分らしい生活を送れるように、またそのようなサービスをしっかりと受けられるために、スタッフの人員配置基準が決まっています。特別養護老人ホームの人員配置基準は、以下の通りです。

【特別養護老人ホームの人員配置基準】

医師

入所者に対し健康管理および療養上の指導を行うために必要な数

看護・介護職員

入所者3人につき1人以上

支援相談員

入所者100人につき1人以上

機能訓練指導員

1人以上

栄養士

1人以上

介護支援専門員
(ケアマネジャー)

1人以上(入所者100人につき1人を標準とする)

(出典:厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」

以下では、特別養護老人ホームで受けられるサービスについて解説します。

食事の提供や入浴・排泄の介助

特別養護老人ホームでは、入所者に対して食事の提供や入浴・排泄の介助といった基本的な生活支援サービスが法令に基づき提供されます。

食事サービス

  • 栄養士によって栄養バランスを考慮した献立が作成され、旬の食材や季節に応じた特別メニューなども提供されます。
  • 入所者の好みや健康状態に応じてメニューの調整も行われ、可能な限り食事を楽しめるような機会が与えられています。
  • 入所者は、離床して食事することが奨励されています。

入浴サービス

  • 介護保険法に則り、週に最低2回以上の入浴が保証されています。
  • 各入所者の健康状態に合わせた入浴介助が提供され、寝たきりの方や特別な介護が必要な方でも安心して入浴できるよう、機械浴槽などの設備が利用されます。
  • 入浴が困難な場合には、清拭を行い清潔を保つ措置が取られます。

排泄の介助

  • 入所者の自立を促しつつ、トイレへの誘導など、必要に応じて適切な支援が行われます。
  • トイレでの排泄が難しいケースでは、ベッド上での排泄を行う介助を行ってくれます。
  • 入所者が尊厳を保ちながら快適に生活できるよう配慮されています。

各種機能訓練

特別養護老人ホームでは、入所者が可能な限り自立した生活を送れるよう、さまざまなリハビリテーションサービスが提供されます。特別養護老人ホームのリハビリテーションにおいては、入所者の心身の機能を維持し、廃用症候群の予防を目指すことが重要です。廃用症候群は、活動量の減少に伴い身体機能が衰える状態で、特に高齢者にとって重要なリスクとなります。

リハビリテーションは、食事、排泄、入浴、着替え、移乗などの日常生活行為を中心に行われます。例えば、食事時の姿勢をサポートするためにクッションや枕を使用して正しい座位を保つ、排泄時の衣服の着脱支援、ベッドから椅子への移乗時に自力で立ち上がるよう促すなど、生活の中で自然に身体を動かす機会を増やすことが可能です。

また、リハビリテーションには心理的なメリットもあり、入所者が社会的交流を持ち、心身の健康を保つことも目標です。趣味や興味に基づいた活動も積極的に取り入れられ、身体活動だけでなく、精神的な満足感や生活の質の向上にもつながります。

レクリエーション

特別養護老人ホームで提供されるレクリエーションは、単なる娯楽活動のみならず、入所者さんの心身の機能維持・向上、生活の質の向上も目的とした重要なサービスです。レクリエーションには、以下のような効果があります。

心身の機能維持・向上

 

 

  • 体操やゲームなどの運動を取り入れることで、筋力や関節の可動域を維持・向上させ、転倒予防にもつながります。
  • 脳トレやパズルなどの思考を働かせる活動を取り入れることで、記憶力や判断力などの認知機能を維持・向上させます。
  • 歌唱やゲームなどの共同で行う活動を取り入れることで、入所者同士の交流、コミュニケーションを促進します。

生活の質の向上

  • 普段と違う活動を通して、気分転換を図り、ストレスを解消できます。
  • 自分が楽しめる活動を見つけることで、生きがいを感じ、生活に張りが生まれます。
  • 地域のイベントへの参加などを通して、社会とのつながりを維持できます。

特養で提供されるレクリエーションは、入所者さんの状態やニーズに合わせて、さまざまな種類のものがあります。以下は、その一例です。

身体活動

 

 

  • 体操
  • ゲーム
  • ダンス
  • 散歩

脳トレ

  • パズル
  • クイズ
  • 脳トレゲーム

創作活動

  • 工作
  • 絵画
  • 書道
  • 音楽
  • 手芸

交流・鑑賞活動

  • 映画鑑賞
  • 食事会
  • お花見

健康管理や緊急対応

特別養護老人ホームでは、日常的に医師や看護師が健康状態のチェックを行い、必要に応じて設内で診療や治療が受けられます。夜間や緊急時には看護師がオンコール体制を取り、迅速に対応するほか、職種間で連携を取りながら健康管理を実施しているため、利用者さんが長く健康に過ごしやすい環境です。

多くの特別養護老人ホームでは、日々の医療ケアが必要な高齢者が入所しており、医療行為が求められる場面もあります。施設によって医師の常駐状況や利用可能な医療機器、人員配置が異なるため、入所を検討する際にはその施設が提供する医療サービスの内容を確認することが重要です。一般的に、褥瘡の処置や喀痰吸引、胃ろうの管理、インスリン注射、軟膏の塗布などの医師の手を必要としない医療行為を受けられるケースが多いと言えます。
 

看取り介護

特別養護老人ホームでの看取りは、入所者にとって慣れ親しんだ環境で最期を迎えるという心の安らぎを提供するとともに、家族が安心して看取りに立ち会える環境が整えられています。

2006年の介護報酬改定以降、看取り介護加算が設けられ、多くの施設が看取りのサービスを行うようになりました。看取りは、単に生命を終える場を提供するだけでなく、入所者とその家族の意向に沿ったケアを行うことが大切で、痛みを和らげる緩和ケアや、必要に応じた心理的支援などが行われます。

特別養護老人ホームでは、医師、看護師、介護職員が連携して、入所者一人ひとりのニーズに応じた看取りを実施します。医師が常駐していない施設も多いため、密な連携を取っている地域の医療機関と協力し、24時間体制で対応可能なオンコール体制を整えているのが特徴です。

 

5. 特別養護老人ホームに入所する流れ

5STEP STEP

特別養護老人ホームの入所申し込みから入所までの流れは、地域によって多少の違いはあるものの、基本的な手続きは共通しています。

1 問い合わせ、見学

  • 入所を希望する施設に対して、電話やメールで問い合わせや資料請求を行います。
  • 施設の環境を直接確認し、質問や不明点をクリアにするためにも、施設を直接訪問して見学を行うことをおすすめします。

2 申し込み手続き

  • 施設に入所を希望する場合、申込書や介護保険被保険者証の写しなど、各種必要書類を施設に提出します。
  • 要介護度や、介護者の有無、住まい状況などに変更があった場合は、再申し込みが必要です。

3 入所審査

  • 施設の入所審査委員会が、提出された書類や事前調査の内容などを基に入所審査を行います。
  • 入所審査委員会は、介護度、心身状態、入所希望の理由などを総合的に判断し、入所順位を決定します。

4 判定結果の通知、入所判定会議

  • 入所審査委員会の決定に基づき、施設から入所可否を通知されます。
  • 施設に空きが出た時に、待機リスト上の優先度に基づいて、入所者を決定します。

5 入所

  • 入所が決定し、施設に空きが確認でき次第、重要事項の説明を受け、契約書に署名して入所します。

入所申し込みから入所までの期間は、施設によって異なりますが、数か月から1年以上かかる場合もあるので、早めに情報収集を始めることをおすすめします。

 

まとめ

高齢者の手を握る介護士

特別養護老人ホームの居室の形態は、多床室からユニット型のような個室まで4種類があります。居室形態によって費用も変動するので、ご自身のニーズや経済状況に合わせて、施設や居室形態を選ぶことが大切です。

また、特別養護老人ホームのスタッフは、日常の各活動において、入所者が自立して行動できるよう個々の能力に応じた支援をしてくれる存在です。例えば機能訓練では、機能訓練指導員が重要な役割を担い、他の職種のスタッフと連携しながら入所者の身体機能の低下を防ぎ、できる限りの自立を促進してくれます。


参考URL

厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」
健康長寿ネット「特別養護老人ホーム(特養)とは」
厚生労働省「令和4年度福祉行政報告例の概況」
厚生労働省「サービスにかかる利用料」
厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」

※当記事は2024年4月時点の情報をもとに作成しています

監修

北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO

菊地 雅洋

北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO

菊地 雅洋

社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。

社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。

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