家族の介護に少し疲れてきたと感じたり、用事で家を空けたいけれど介護が必要な家族を1人にできないと悩んでいたりする方に役立つのが、「短期入所療養介護」です。ショートステイとも呼ばれ、要介護認定を受けている方のうち、医療的なケアが必要な高齢者の方や、慢性的な病気を持つ方を対象としたサービスです。
当記事では、短期入所療養介護のサービス内容や施設について、詳しく解説します。
介護サービスの種類
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家族の介護に少し疲れてきたと感じたり、用事で家を空けたいけれど介護が必要な家族を1人にできないと悩んでいたりする方に役立つのが、「短期入所療養介護」です。ショートステイとも呼ばれ、要介護認定を受けている方のうち、医療的なケアが必要な高齢者の方や、慢性的な病気を持つ方を対象としたサービスです。
当記事では、短期入所療養介護のサービス内容や施設について、詳しく解説します。
短期入所療養介護は、要介護状態にある方が一時的に自宅での生活が困難になった場合に、介護老人保健施設や病院などに短期間入所し、必要な医療や介護、リハビリなどのサービスを受けられる制度です。
「ショートステイ」とも呼ばれ、家族の病気や冠婚葬祭、介護者の旅行など、さまざまな理由で一時的に介護を任せたい際に利用できます。その中でも、短期入所療養介護は、通常のショートステイと比べて、より医療的なケアが必要な方のためのサービスであることから、「医療型ショートステイ」と呼ばれることもあります。
短期入所療養介護は、要介護状態にある方が対象となるサービスです。具体的には、要介護1~5の認定を受けている方が利用できます。
要支援認定を受けている方は、介護予防短期入所療養介護を利用できます。要介護認定を受けていない方は、介護保険のサービスを利用するためには、要介護認定を受けることが必要です。
ショートステイは大きく分けて3つの種類があります。それぞれの違いを解説します。
短期入所生活介護 |
---|
主な施設
特徴
対象者
|
短期入所療養介護 |
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主な施設
特徴
対象者
|
介護保険適用外のショートステイ |
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主な施設
など
特徴
対象者
|
医療的なケアを希望する場合は短期入所療養介護を、介護を中心としたサービスを希望する場合は短期入所生活介護を選ぶとよいでしょう。
短期入所療養介護は、1~30日以内の短期利用を想定したサービスです。ただし、31日目を全額自己負担すれば、32日目以降は再び利用を続けることが可能です(通称:リセットルール)。老人ホームへの入居待ちなどの理由から、リセットルールを活用して31日以上利用するロングショートステイを利用する方もいます。
また、要介護認定の期間内であれば、その半数までの利用を超えて利用する介護計画は居宅介護支援事業所のケアマネジャーが立ててはならないというルールがあります。ただし、自分で介護計画を立てる場合(セルフプラン)であれば、期間内ずっと短期入所療養介護を利用する形でも問題はありません。
短期入所療養介護のサービスは、短期間の滞在中に、利用者さんが適切な医療ケアや日常生活の支援を受けられるよう設計されています。主なサービス内容は以下の通りです。
医療サービス
リハビリテーション
介護サービス
認知症ケア
日常生活支援
緊急時の対応
ターミナルケア
|
サービスを受けるメリットの1つとしては、介護者の負担軽減が挙げられます。一時的に介護から解放され、心身のリフレッシュやほかの用事をこなすことが可能です。
また、施設でほかの利用者さんとの交流を持つことで、社会とのつながりを維持することができます。
短期入所療養介護の施設では、利用者さんの状態や希望に合わせて、主に4つのタイプの部屋があります。
従来型個室 | 個室であり、プライバシーが保たれるメリットがあります。食事や入浴、リハビリテーションは、共用のスペースで行われることが多いです。
洗面台やトイレは、一般的に室内にあります。 |
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多床室 | 複数のベッドが置かれた部屋で、相部屋(1部屋あたり4床以下)となります。医療機関に多く見られるタイプで、比較的低価格で利用できるのが特徴です。 |
ユニット型個室 | 10人程度の利用者さんが、1つのユニットとして生活する部屋です。各ユニットにリビングやキッチンがあり、家庭的な雰囲気の中で生活できます。個室と共用スペースが一体となった構造になっています。 |
ユニット型個室的多床室 | ユニット型個室と多床室を組み合わせたタイプで、個室のように、一人ひとりに区切られたスペースがある一方で、天井や壁に隙間があり、完全には仕切られていません。 過去に「ユニット型準個室」と呼ばれていたタイプです。 |
上記のように短期入所療養介護の部屋のタイプは、施設によってさまざまです。ご自身の希望や状態に合わせて、最適な部屋を選ぶとよいでしょう。
短期入所療養介護を提供できる施設は、以下の通りです。
介護老人保健施設 介護老人保健施設(老健)は、要介護状態にある高齢者が、可能な限り自立した生活を取り戻し、自宅での生活に戻れるよう支援する施設です。医師、看護師、介護福祉士、理学療法士、作業療法士など、さまざまな専門職が連携して、利用者さんに合わせたケアを提供します。
介護医療院 介護医療院は、長期的な医療と介護の両方を必要とする高齢者の方のための施設です。医療と介護を一体的に提供しており、利用者さんは安心して療養生活を送れます。介護老人保健施設はリハビリテーションに力を入れており、在宅復帰を目指しますが、介護医療院は医療的なケアを重視し、長期的な療養が必要な方に対応します。特別養護老人ホームは、要介護状態が特に重い方が入所する施設です。
療養病床を有する病院または診療所 医療的なケアが必要な利用者さんに対応できる施設です。利用者さん1人あたり6.4平方メートル以上のスペースがあり、浴室が設置されています。
診療所(療養病床を有するものを除く) 一定の要件を満たす診療所でも、短期入所療養介護を提供できます。 |
・短期入所療養介護を提供している施設
| 介護老人保健施設 | 介護医療院 | 介護療養型医療施設 | 介護療養型医療施設以外 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
病院 | 診療所 | 医療療養病床 | 一般病床 | 医療療養病床 | 一般病床 | |||
みなし指定 | あり | あり | あり | なし | - | なし | ||
病室・居室面積 | 8.0㎡ | 8.0㎡ | 6.4㎡ | 6.4㎡ | - | 6.4㎡ | ||
機能訓練室面積 | 1㎡/定員 | 40㎡ | 40㎡ | 十分な広さ | 40㎡ | - | 十分な広さ | |
看護・介護職員 | 看護・介護3:1 (うち、看護2/7標準) | 看護 6:1 介護 5:1 (Ⅰ型) 6:1 (Ⅱ型) | 看護6:1 介護6:1 | 看護6:1 介護6:1 | - | 看護6:1 介護6:1 | 看護・介護 3:1 |
(引用:厚生労働省「短期入所療養介護」 引用日2024/10/6)
「みなし指定」とは、健康保険法のもとで指定された医療機関や薬局が、介護保険法に基づく介護サービス事業者として自動的に認められる制度です。
具体的には、介護老人保健施設や介護医療院、保険医療機関が、訪問リハビリテーションや通所リハビリテーション、短期入所療養介護などの介護サービスを提供する際、あらためて介護保険法上の指定を受けなくてもよいという仕組みです。ただし、療養病床を持たない診療所が短期入所療養介護を提供する場合には、別途申請が必要となる場合があります。
短期入所療養介護の人員配置基準は、その施設が介護老人保健施設なのか、介護医療院なのか、もしくは療養病床を有する病院または診療所なのかといったように、各施設が満たすべき基準によります。
例えば、介護老人保健施設の場合は以下の通りです。
医師 | 常勤1以上、100対1以上 |
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薬剤師 | 実情に応じた適当数(300対1を標準とする) |
看護・介護職員 | 3対1以上、うち看護は2/7程度 |
支援相談員 | 1以上、100対1以上 |
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士 | 100対1以上 |
栄養士 | 入所定員100以上の場合、1以上 |
介護支援相談員 | 1以上(100対1を標準とする) |
調理員、事務員その他の従業者 | 実情に応じた適当数 |
(引用:厚生労働省「参考資料(介護老人保健施設)」 引用日2024/10/6)
基本的に短期入所療養介護を提供している施設では、医師や薬剤師、理学療法士などが配置されており、利用者さんに医療やリハビリを提供しています。
短期入所療養介護・介護予防短期入所療養介護は、介護者と利用者さんの双方にとってメリットの多いサービスです。介護者の負担軽減、利用者さんの心身の状態の安定、家族関係の改善など、さまざまな効果が期待できます。
介護する家族の息抜き(レスパイトケア)ができる |
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介護は、心身ともに大きな負担がかかるものです。短期入所療養介護を利用することで、介護者が一時的に介護から解放され、自分の時間を持つことができます。これはレスパイトケアと呼ばれ、介護疲れの予防や介護者の心身の健康維持に有効です。
介護は24時間365日続くため、介護者が体調を崩したり、精神的に参ってしまったりすることも少なくありません。短期入所介護を利用することで、介護者の負担は軽くなり、介護を続けやすくなります。
また、介護疲れによって家族関係が悪化する前に短期入所を利用すれば、介護者とほかの家族の関係が改善されることもあります。 |
医師や看護師、リハビリの専門職によるケアを受けられる |
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短期入所療養介護の施設には、医師や看護師、理学療法士、作業療法士などの専門スタッフが配置されています。これらの専門家によるきめ細やかなケアを受けることで、利用者さんの心身の状態を安定させ、機能の維持・回復を図ることができます。
高齢者や要介護状態の方の中には、持病を抱えている方も多くいます。短期入所では、持病の管理や、急な体調の変化に対応するための医療的なケアを受けられます。また、理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションを受けることで、筋力の低下や関節の拘縮などを予防可能です。 |
外出や仕事の際に安心して介護を受ける方を預けられる |
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介護者が外出や仕事をする際に、安心して介護を受ける方を預け、介護者が外出したり、友人と会ったりできます。
また、介護と仕事を両立している場合、介護によって仕事に集中できず、仕事のパフォーマンスが低下してしまうことも考えられます。短期入所を利用すれば、仕事に集中できるようになり、経済的な安定にもつながるでしょう。 |
短期入所療養介護および介護予防短期入所療養介護にかかる費用については、サービスを提供する施設や要介護度によって変動します。以下の表は、その一例です。
・(介護予防)短期入所療養介護を1日利用した場合の基本のサービス費(介護老人保健施設・自己負担額1割の場合)
多床室・基本型 | 要支援1 | 613円 |
---|---|---|
要支援2 | 774円 | |
要介護1 | 830円 | |
要介護2 | 880円 | |
要介護3 | 944円 | |
要介護4 | 997円 | |
要介護5 | 1,052円 | |
多床室・在宅強化型 | 要支援1 | 672円 |
要支援2 | 834円 | |
要介護1 | 902円 | |
要介護2 | 979円 | |
要介護3 | 1,044円 | |
要介護4 | 1,102円 | |
要介護5 | 1,161円 |
(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)
基本型老健は、在宅復帰や在宅療養支援において一定の基準を満たしており、在宅復帰・療養支援の指標が20以上となる施設です。主に日常生活の支援やリハビリが行われるものの、地域貢献活動や高度なリハビリテーションの充実度は限られています。
一方、在宅強化型老健は、より高い在宅復帰率を目指しており、在宅復帰・在宅療養支援の指標が60以上となることが求められています。基本型と異なり、リハビリテーションや退所時指導、地域貢献活動などの要件があります。
以下の表は、短期入所療養介護で使える介護保険サービスの費用の参考です。
・短期入所療養介護で使える介護保険サービスの費用(1割負担の場合)
サービス名 | 費用 |
---|---|
緊急受け入れ | 90円/1日 |
認知症行動・心理症状がある方の緊急受け入れ | 200円/1日 |
若年性認知症利用者の受け入れ | 120円/1日 |
重度者※の医学的管理と処置 | 120円/1日 |
個別リハビリの実施 | 56円/1回 |
口腔ケア | 50円/1回 |
※重度の肢体不自由、または重度の知的障害もしくは精神障害により行動上著しい困難があり、常時介護が必要な方
(出典:厚生労働省「短期入所療養介護の報酬・基準について」)
(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)
費用の計算は、要介護度や利用する施設、サービス内容によって異なるので、正確な費用を知りたい場合は、利用を検討している施設に問い合わせることをおすすめします。
短期入所療養介護に必要なその他の費用の例としては、以下の通りです。
| 基準費用額(日額) | 負担限度額(日額)※ | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② | |||
食費 | 1,445円 | 300円 | 600円 | 1,000円 | 1,300円 | |
居住費 | ユニット型個室 | 2,006円 | 880円 | 880円 | 1,370円 | 1,370円 |
ユニット型個室的多床室 | 1,668円 | 550円 | 550円 | 1,370円 | 1,370円 | |
従来型個室 | 1,668円 | 550円 | 550円 | 1,370円 | 1,370円 | |
多床室 | 377円 | 0円 | 430円 | 430円 | 430円 |
(出典:厚生労働省「サービスにかかる利用料」)
(出典:厚生労働省「介護保険施設等における居住費の負担限度額が令和6年8月1日から変わります」)
利用者負担段階は、介護保険施設を利用する際の負担額を、利用者の所得状況に応じて4段階に分ける制度です。第1~第3段階に該当する利用者さんは、国が定める軽減策により負担額が軽減されます。
また、これらのほかに、理美容費や趣味・嗜好品費、衣料費など日常生活を送る際に必要な費用もかかります。
短期入所療養介護施設を選ぶ際は、利用者の状態やご家族の希望に合わせて、慎重に検討することが大切です。以下では、施設選びのポイントと注意点を紹介します。
事前相談とケアプランの確認 |
---|
ケアマネジャーや施設の担当者と話す機会を作り、利用者の状態に合ったケアが提供されるか確認しましょう。事前の打ち合わせで、施設がどのような医療サービスを提供できるのか、利用者さんの症状に対して適切な対応ができるかをしっかりと把握しておきましょう。 |
施設の見学 |
---|
実際に施設を見学して、スタッフの対応や施設の清潔さ、食事やレクリエーションの様子、利用者とのコミュニケーションの様子を確認することも大切です。特にスタッフの言葉遣いや態度、利用者さんがリラックスしているかを観察し、快適に過ごせる環境かどうかを判断しましょう。 |
費用とサービス内容の確認 |
---|
施設や提供されるサービスの内容によって料金が変わるため、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。長期的な費用負担も考慮し、予算に見合った施設を選びましょう。 |
予約の取りやすさの確認 |
---|
短期入所療養介護の施設は、特に週末や長期休暇中に予約が集中しやすい傾向があります。緊急時にスムーズに利用できるよう、予約が取りやすい施設や、複数の選択肢を持っておくことが推奨されます。普段から複数の施設情報を把握しておくと、急な対応にも役立つでしょう。 |
口コミの確認 |
---|
ケアマネジャーの情報だけでなく、実際に利用した方やその家族からの口コミ、地域で評判も参考になります。 |
認知症ケアの対応 |
---|
認知症の方が利用する場合、施設が認知症に対して適切な対応ができるかが重要です。 |
可能であれば複数の施設を比較検討し、介護される方に合った施設を選びましょう。
短期入所療養介護は、医療的なケアが必要な要介護者を対象とした短期間の入所サービスです。家族が一時的に在宅介護ができない場合や、介護者の休息を目的に利用されることが多く、緊急時にも対応可能です。主に自宅で療養する人が、施設で医学的な管理のもとに看護や介護、リハビリテーションなどの支援を受けられる点が特徴です。
糖尿病の管理や喀痰吸引が必要な方、認知症患者さんなども利用でき、医師や看護師が常駐しているので医療的なサポートが充実しています。また、理学療法士や作業療法士などの専門職が配置されており、集中的なリハビリテーションも受けることも可能です。
参考URL
厚生労働省「短期入所生活介護及び短期入所療養介護(参考資料)」
厚生労働省「参考資料(介護老人保健施設)」
厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
厚生労働省「短期入所療養介護の報酬・基準について」
厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
厚生労働省「サービスにかかる利用料」
厚生労働省「介護保険施設等における居住費の負担限度額が令和6年8月1日から変わります」
※当記事は2024年10月時点の情報をもとに作成しています
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
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