住み慣れた地域に根付いた包括的な支援を提供することで注目が集まる、小規模多機能型居宅介護。
年齢を重ねても理想的なライフスタイルを実現するために、小規模多機能型居宅介護のサービス内容や料金、メリット・デメリットを知っておきましょう。
介護サービスの種類
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住み慣れた地域に根付いた包括的な支援を提供することで注目が集まる、小規模多機能型居宅介護。
年齢を重ねても理想的なライフスタイルを実現するために、小規模多機能型居宅介護のサービス内容や料金、メリット・デメリットを知っておきましょう。
「小規模多機能型居宅介護」は、あまり聞きなじみのない言葉かもしれませんが、2006年に介護保険で制度化されてから事業所数が増加傾向にあり、2023年時点で全国5500箇所以上に設置されています(厚生労働省「令和5年介護サービス施設・事業所調査の概況」より)。「小多機(しょうたき)」などと省略して呼ばれることもあります。
小規模多機能型居宅介護の特徴を一言で説明するなら、「通い」「訪問」「泊まり」という3つのサービスを、一人ひとりのニーズに合わせてフレキシブルに組み合わせられること。
通常、介護保険サービスを利用する際は「訪問介護はA事業所、デイサービスはB事業所」といったように、種類ごとに異なる事業所を選択します。しかし、小規模多機能型居宅介護では基本的に1つの事業所から、その時の状況に応じて3つのサービスを自由度高く活用することができます。
なお、小規模多機能型居宅介護は市町村が指定・監督を行う「地域密着型サービス※」の一種です。地域密着型サービスとは、介護が必要になった場合でも住み慣れた場所で自立して生活できるよう、医療・介護・住居・生活支援などを包括的にサポートするもの。こうして暮らしに根付いた細やかな支援を実現する方法の一つが、小規模多機能型居宅介護です。
※小規模多機能型居宅介護の他、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護などがある。
小規模多機能型居宅介護では、施設への「通い」を中心としつつ、利用者の自宅への「訪問」や、短期間の「宿泊」を組み合わせて、生活支援や機能訓練を行います。それぞれ、どのようなサービス内容か確認していきましょう。
いわゆるデイサービス(通所介護)のような感覚で、小規模多機能居宅介護事業所に通うことで日常生活のサポートを受けるものです。一日のプログラムがある程度決まっていることの多いデイサービスと比べて、利用時間や過ごし方の自由度が高い傾向にあります。
具体的なサービス内容の例 |
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職員が利用者の自宅を訪問し、在宅生活で必要な介助を行うものです。
通常の訪問介護サービスでは利用時間があらかじめ固定されていますが(30分、1時間など)、小規模多機能型居宅介護にはそうした制限がないため、「毎朝の安否確認だけ頼みたい」「体位変換のため頻回に訪問してほしい」といったニーズにも応えやすい点が特徴です。
具体的なサービス内容の例 |
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いつも通っている小規模多機能居宅介護事業所で、必要に応じて宿泊することも可能です。
いわゆるショートステイ(短期入所生活介護)に比べると、急な宿泊や連泊などのニーズにも柔軟に対応しやすく、「『通い』からそのまま『泊まり』に移行する」といったことも可能です。家族に急用ができたような場合にも、非常に助かるサービスだと言えます。
具体的なサービス内容の例 |
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小規模多機能型居宅介護事業における最大のメリットは、本人や家族にとってなじみある「いつもの事業所」から、複数のサービスを柔軟に受けられることです。
必然的に職員との距離感が近くなり、安心感を得やすい環境だと言えるでしょう。初めての場所に慣れるまで時間がかかったり、多くの人とコミュニケーションを取ることが苦手だったりする人でも、心地よく過ごしやすいはずです。
また、月額定額制で利用回数に制限がなく、24時間対応型のサービスである点もうれしいポイントです。例えば、突然のけがで一時的な生活支援を受けたいといった場合も、通いから訪問に切り替えるなどして、スムーズに適切なケアに移行することができます。
身体機能や認知機能が変化しても、親しみのある環境で自分らしく暮らしたいと考える方にぴったりです。
小規模多機能型居宅介護の利用対象者は、希望する事業所と同じ市区町村に暮らす要支援1~2、あるいは要介護1〜5の認定を受けている方です。(要支援1~2の方は地域密着型介護予防サービスの「介護予防小規模多機能型居宅介護」というかたちでの利用になります)
小規模多機能型居宅介護事業所にはケアマネージャーが在籍し、その人の身体・生活状況などからケアプランを作成し、具体的なケア内容を定めていきます。
なお、小規模多機能型居宅介護では事業所ごとに利用定員があります。下記の人数を超える申し込みがあった場合は、その事業所やサービスを利用できないこともあります。
※事業所の登録定員が26名以上29名以下で、居間および食堂が規定の面積以上である場合には、「通い」サービスの利用定員を18人以下とすることが可能。
※自治体が独自に定めた定員のルールに沿って事業所が運営される場合もある。
すでに要介護認定を受けている(介護保険サービスを利用している)場合は、担当のケアマネージャーに相談してみましょう。地域の施設情報や空き状況などを提供してもらえます。
いきなり利用し始めることに不安を感じる場合は、事業所を見学することもおすすめ。事業所の設備や雰囲気、職員との相性などを事前にチェックしておけると安心です。
まだ要介護認定を受けていない場合は、まず介護保険サービスを受ける手続きをすることから始めます。お近くの地域包括支援センターや、自治体の窓口や「マイナビあなたの介護」などに相談するとよいでしょう。
小規模多機能型居宅介護は、月額定額制のサービスです。利用者負担が1割の場合の1ヶ月分の料金の目安は、以下の通りです(地域や施設によって異なる場合があります)。介護度が上がるにつれて、月額料金も上昇する仕組みです。
この料金に加えて、食事代、おむつ代、宿泊費など、日常にかかる諸経費を別途負担することになります。
【一般的な住居で暮らす方の自己負担額】
要介護度 | 自己負担額 |
---|---|
要支援1 | 3,450円 |
要支援2 | 6,972円 |
要介護1 | 10,458円 |
要介護2 | 15,370円 |
要介護3 | 22,359円 |
要介護4 | 24,677円 |
要介護5 | 27,209円 |
【併設された施設などに入所する方の自己負担額】
要介護度 | 自己負担額 |
---|---|
要支援1 | 3,109円 |
要支援2 | 6,281円 |
要介護1 | 9,423円 |
要介護2 | 13,849円 |
要介護3 | 20,144円 |
要介護4 | 22,233円 |
要介護5 | 24,516円 |
※出典:厚生労働省「どんなサービスがあるの? - 小規模多機能型居宅介護」
ここまで説明してきた通り、小規模多機能型居宅介護にはたくさんのメリットがあります。しかし、人によってはデメリットに感じられる点も。「こんなはずじゃなかった」という事態を防ぐためにも、次の4点についてあらかじめ認識しておくことが大切です。
小規模多機能型居宅介護を利用する場合、そこに所属するケアマネージャーが担当になります。すでに他のケアマネージャーと信頼関係ができている場合、変更を余儀なくされる点を残念に感じる方もいるかもしれません。
小規模多機能型居宅介護の利用者は、通い・訪問・泊まりに該当する他事業所のサービスを併用することができません。同じ事業所を利用し続けることになるので、多様な事業所を利用してみたい方は物足りなさを感じる可能性があります。
前述の通り、小規模多機能型居宅介護では事業所ごとに利用定員があり、それを超えるとサービスを受けられないことがあります。多くの方のニーズが重なった場合、希望の日時や内容で支援を受けられないことが考えられます。
小規模多機能型居宅介護は月額定額制であり、利用回数・時間が多い方にとってはメリットの大きいサービスです。逆に、利用回数・時間が少ない場合には、他の介護保険サービスと比べて割高に感じられることもあり得ます。
「通い」「訪問」「泊まり」といった多彩なケアを1つの事業所から受けられる地域密着型の介護保険サービス、小規模多機能型居宅介護。メリットとデメリットをしっかりと見比べて、自身のニーズに合っていると感じたら、近隣の事業所やケアマネージャーにぜひ話を聞いてみましょう。
小規模多機能型居宅介護はもちろんのこと、介護保険サービスに関する悩みが出てきた時には、「マイナビあなたの介護」にLINEや電話で相談することができます。施設探し、介護準備のサポート、資料請求・見学申込の代行など、さまざまな支援を行っています。お困りごとがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
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