要支援・要介護認定を受けると、ケアマネージャーと呼ばれる介護の専門家とやりとりをする機会が増えます。しかし、ケアマネージャーという職業について聞いたことはあっても、実際にどのような仕事をしているのか疑問に思っている人もいるのではないでしょうか。
今回は、ケアマネージャーの仕事内容や、ケアマネージャーを選ぶ際のポイントについてわかりやすく解説します。ケアマネージャーとの上手な付き合い方についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
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要支援・要介護認定を受けると、ケアマネージャーと呼ばれる介護の専門家とやりとりをする機会が増えます。しかし、ケアマネージャーという職業について聞いたことはあっても、実際にどのような仕事をしているのか疑問に思っている人もいるのではないでしょうか。
今回は、ケアマネージャーの仕事内容や、ケアマネージャーを選ぶ際のポイントについてわかりやすく解説します。ケアマネージャーとの上手な付き合い方についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
ケアマネージャー(介護支援専門員)とは、要支援・要介護の状態にある人やその家族の相談に応じて、ケアプランを作成したり、市区町村や介護サービス事業者との連絡・調整などを行ったりする介護の専門家のことです。
居宅介護支援事業所や介護保険施設(介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院)、特定施設(有料老人ホーム・養護老人ホーム・軽費老人ホーム)、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)では、それぞれの規模や利用者数に応じて、必要な人数のケアマネージャーを配置することが義務付けられています。なお、居宅介護支援事業所のサービスを利用する場合は全額保険給付されますので、利用者負担はありません。
ケアマネージャーの主な仕事は利用者や家族の相談を受けてケアプランを作成することから、自治体・居宅サービス事業者・介護保険施設との連絡・調整、介護給付費の管理など多岐にわたります。場合によっては、自治体から依頼を受けて要介護認定を行うこともあります。
ここでは、ケアマネージャーの代表的な4つの仕事について見ていきましょう。
■居宅介護支援事業所のケアマネージャーの主な仕事
ケアマネージャーの重要な業務のひとつに、ケアプランの作成があります。ケアプランとは、介護サービスを受ける際に作成する計画書で、介護サービスの種類やスケジュール、頻度などがまとめられているものです。利用者やその家族の状況をアセスメント(面接や実態調査)し、最適な支援やサービスが提供されるように計画を立てます。ケアプランを通じて一人ひとりに合った介護サービスを提供することで、身体機能の衰えをできるだけ防いで自立を促し、利用者の生活の質の向上を実現することがか目的です。
要介護者に関する計画書は「ケアプラン」、要支援者に関する計画書は「予防プラン」と呼ばれ、ケアプランはケアマネージャーが作成し、予防プランはケアマネージャーもしくは地域包括支援センターの職員が作成します。
居宅サービスを利用する方のケアプランが作成された後は、実際に介護サービスを提供する居宅サービス事業者を選定します。利用者やその家族に事業者を紹介し、間に入って連絡・調整を行うこともケアマネージャーの役割のひとつです。また、利用者の状態によって在宅生活が困難となった場合は、施設を紹介する役割もあります。なお、介護施設や特定施設、グループホームに入所した場合は、入所後にそれぞれの施設のケアマネージャーが担当となり、ケアプランを作成します。
介護サービスを提供する事業者には、「認知症ケアに特化している」「機能訓練に注力している」など、それぞれに特徴があります。ケアマネージャーは、利用者のニーズや個性に合った事業者を紹介し、スムーズにサービスを利用できるよう調整を行います。また、利用者が入院した際には医療機関と連携し、退院後に必要な介護サービスの調整を行うのもケアマネージャーの仕事です。
居宅サービスを利用した際に、自治体に介護給付費を請求する「給付管理業務」も、ケアマネージャーの重要な業務のひとつです。利用者が介護サービスを利用する際、自己負担額は所得に応じて1~3割となり、残りの費用は自治体などの保険者が「介護給付費」として負担します。事業者が自治体に介護給付費を請求する際に、その手続きをサポートするのもケアマネージャーの役割です。
ケアマネージャーは、毎月の介護サービス利用状況を利用者ごとに確認し、利用者やその家族に代わって給付に必要な事務手続きを行います。各種書類の作成や提出など、給付管理に関連する業務はさまざまです。自治体は、ケアマネージャーが作成した書類をもとに審査を行い、問題がなければ事業者に介護給付費の支払いを行います。
ケアマネージャーは、利用者の要介護度を審査するための認定調査を、自治体から委託される場合があります。介護サービスの利用者や利用予定者の自宅を訪問し、聞き取り調査を通じて状況を確認するのが主な役割です。調査では、身体機能や生活動作、認知機能、精神・行動の状態、社会生活への適応状況などを評価します。ケアマネージャーは、介護の専門家としての知識と経験を活かして、要介護度を適切に判断し、利用者が適切な介護サービスを受けられるように正確な報告を行う必要があります。
要支援と認定された利用者には、地域包括支援センターの保健師やケアマネージャーが担当につきます。一方で、要介護と認定された利用者については、居宅介護支援事業所に所属するケアマネージャーが担当し、利用者自身で担当ケアマネージャーを選ぶことが可能です。
ケアマネージャーを探す際には、自治体の介護保険課や地域包括支援センターにある、居宅介護支援事業所のリストを利用すると便利です。また、全国約70の自治体で発行されている「ハートページ」という介護保険・介護サービス事業者情報誌を利用する方法もあります。ハートページには、居宅介護支援事業所の名称や所在地、連絡先、受付時間、ケアマネージャーの在籍人数、併設サービスの情報などが掲載されており、地域のケアマネージャーを探す際に便利です。
ケアマネージャーを選ぶ際には、どのような点を重視すべきでしょうか。確認しておきたい3つのポイントについて解説します。
利用者や家族の悩みに応じた適切なサービスを提案してもらうには、介護保険制度に関する知識だけでなく、介護や看護に関する知識・経験が豊富なケアマネージャーを選ぶことがポイントです。介護保険外のサービスについても詳しいケアマネージャーであればさらに心強いでしょう。介護保険サービスと介護保険外サービスを組み合わせて、一人ひとりに合った柔軟な提案をしてもらえる可能性があります。
ケアマネージャーを選ぶ際には、人柄も大切なポイントのひとつになります。ケアマネージャーは、介護を受ける方やその家族と頻繁にやりとりし、自治体や介護施設、医療機関などと調整を行う立場です。親身になって相談にのってくれるか、介護を受ける方や家族の状況を理解し、丁寧にアドバイスしてくれるかといった点は必ず確認しましょう。
ケアマネージャーは介護の専門家であると同時に、一人の人間でもあります。介護を受ける方やその家族との相性は介護の質に大きな影響を与えるため、ケアマネージャーを決める前にしっかり会話をして確認することが大切です。
ケアマネージャーを選ぶ際には、保有している資格も確認してみましょう。一口にケアマネージャーといっても、その経歴や保有資格はさまざまです。ケアマネージャーの資格試験を受けるためには、下記の要件を満たしている必要があります。
<ケアマネージャーの資格取得の要件>
そのため、ケアマネージャーの経歴や得意分野は人によって異なります。例えば、介護福祉士の資格を持っているケアマネージャーは、介護施設やデイサービスなどの現場について熟知しているでしょう。あるいは、看護師資格を持っているケアマネージャーなら、持病がある利用者を介護する際の注意点を把握していると考えられます。このように、ケアマネージャーの保有資格を確認することで、その人の実務経験や専門知識を把握することができます。
ケアマネージャーと上手に付き合っていくには、どのような点を意識すればいいのでしょうか。特に気をつけたい3つのポイントをご紹介します。
ケアマネージャーと上手に付き合うには、介護に関する要望を具体的に伝えることが重要です。利用したいサービスや現在困っていることなどを明確に伝えることで、ケアマネージャーはそれにもとづいた最適なケアプランを作成できます。
ケアマネージャーは介護の専門家ではありますが、すべてを任せきりにするのは避けましょう。要望を明確に伝えないと、期待していたサービスを受けられなかったり、必要のないサービスがケアプランに含まれてしまったりする可能性があります。
ケアマネージャーが利用者について理解するために、さまざまな情報を提供することも大切です。例えば、利用者の趣味や特技、好き嫌い、生い立ち、健康面での不安などの情報は、ケアプランを作成する際の貴重な手がかりとなります。
家庭内のことを他人に話すのは気が引けるかもしれません。しかし、ケアマネージャーには守秘義務が課せられており、伝えた情報が外部に漏れることはありません。たとえ介護に直接関係がないと思えることでも、利用者の性格や生活スタイルを理解してもらえると、より利用者に合った介護サービスを提供してもらえる可能性があります。
ケアマネージャーと日頃からこまめに連絡をとり合うことも重要です。利用者の心身の状態や介護状況は日々変化するため、こまめに連絡をとって必要な情報を共有すれば、より適切な介護サービスを提供してもらえるようになります。
特に、利用者と家族が離れた場所に住んでいる場合は、ケアマネージャーとのこまめなやりとりが重要です。ケアマネージャーにすべてを任せきりにするのではなく、日頃から密に連絡をとり合うことを意識しましょう。
ケアマネージャーとの相性が良くないと感じたり、やりとりがスムーズに進まないと感じたりする場合は、ケアマネージャーを変更することが可能です。ケアマネージャーを変更しても、現在利用している介護サービスは継続して利用することができます。まずはケアマネージャーとのコミュニケーションを改善する努力が必要ですが、それでも相性が合わないと感じた場合は、ケアマネージャーの変更を検討しましょう。
ケアマネージャーを変更したい場合は、居宅介護支援事業所や自治体の窓口に相談します。居宅介護支援事業所そのものを変更する場合と、ケアマネージャーのみを変更する場合があります。相談する際には、「なんとなく合わないから」といった曖昧な相談をするのではなく、困っていることを具体的に説明してください。
ただし、介護保険施設や特定施設、グループホームでは、入所先のケアマネージャーが担当となり、施設に1人しかケアマネージャーが配置されていないケースも多いため、変更が難しいことが一般的です。
ケアマネージャーは、適切な介護サービスを受ける上で非常に重要な役割を果たします。利用者やその家族と相性の良いケアマネージャーを見つけられれば、希望に沿った介護サービスを受けることができ、利用者・家族の両方にとって安心感があるでしょう。この記事で紹介したポイントや注意点を参考にしながら、ぴったりのケアマネージャーを見つけてください。
なお、介護サービスや施設を利用する際には、「マイナビあなたの介護」がおすすめです。検索機能以外にも、LINEや電話で介護に関するお悩みを相談することができます。最適な施設探しから介護準備のお手続きのサポートなど幅広く対応します。
どんな些細なお悩みでも、お気軽にご相談ください。
参考URL
厚生労働省「介護支援専門員(ケアマネジャー)」
WAMNET「介護支援専門員(ケアマネジャー)」
健康長寿ネット「介護支援専門員(ケアマネジャー)の役割」
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
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