1. 短期入所生活介護とは

短期入所生活介護(ショートステイ)とは、普段在宅介護を受けている方が一時的に入所して介護や生活支援を受けられる介護サービスの総称です。「ショート」「短期入所」などの通称で呼ばれる場合もあります。要介護・要支援者向けの介護保険サービスのほか、要介護・要支援認定なしでも入居できる有料ショートステイもあります。
現在、多くの自治体で地域包括ケアシステムが推進されています。地域包括ケアシステムとは、要介護状態の方が住み慣れた地域で自分らしく生活できるように、医療・介護・生活支援などのサービスを一体的に提供するシステムのことです。短期入所生活介護は地域包括ケアシステムに不可欠な、在宅介護を前提としたサービスの1つです。
介護保険を利用できるショートステイは、短期入所生活介護と短期入所療養介護の2種類に大別されます。
短期入所生活介護
短期入所生活介護はショートステイとも呼ばれ、要介護者や要支援者の方が利用できます。要介護者の方に対しては、介護職員による食事・入浴・排せつなどの生活介護やレクリエーションなどのサービスが提供されます。
要支援者の方を対象とする介護予防短期入所生活介護では、介護予防を目的とした生活面のサポートや機能訓練などのサービスが利用可能です。
短期入所療養介護
短期入所療養介護は、医療的ケアを必要とする要介護者や要支援者の方が利用できます。介護老人保健施設(以下、老健)や療養病棟のある医療機関などに宿泊し、宿泊中は生活介護に加えて医療的ケアや機能訓練・リハビリなどのサービスが提供されます。サービスの性質上、短期入所療養介護のおもな運営元は老健や医療機関などです。
短期入所療養介護についての詳細は、以下の記事で解説しています。
▶ 短期入所療養介護とは?
2. 短期入所生活介護(ショートステイ)と通所介護(デイサービス)の違い
通所介護(デイサービス)で受けられるサービス内容は食事・入浴などの生活介護やレクリエーションなどであり、 短期入所生活介護(ショートステイ)とよく似ています。ショートステイとデイサービスのもっとも大きな違いは、利用できる時間帯です。一時的な宿泊を前提とするショートステイに対し、デイサービスは日中に施設へ通ってサービスを受けます。
介護保険の支給限度額を超えない範囲であれば、ショートステイとデイサービスの併用も可能です。ただし、ショートステイとデイサービスのサービス内容には似た部分が多いので、どちらかを利用するのが一般的です。
3. 短期入所生活介護・介護予防短期入所生活介護の利用シーン

この記事では、これより短期入所生活介護について解説します。
短期入所生活介護は、以下のような理由でよく利用されます。
- 介護者の仕事や病気などで一時的に在宅介護が難しくなった
- 介護疲れを感じたときの息抜き(レスパイトケア)をしたい
- 介護される側が家族以外の方と交流したいと感じている
- 専門家による機能訓練を受けたい
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また、特別養護老人ホーム(以下、特養)や有料老人ホームへの入居待ち中の場合、併設されたショートステイやデイサービスを利用して施設の雰囲気を知ることもできます。施設側にとってもご本人やご家族の状況を早めに知っておくことで、利用直後からその方に合ったサービスを提供しやすくなる点がメリットです。
短期入所生活介護の対象者・利用条件
短期入所生活介護の利用対象者は、要介護・要支援認定を受けた65歳以上の方もしくは特定疾病により要介護状態となった40歳以上の方です。短期入所生活介護を利用したい場合は、まず担当のケアマネジャーに依頼してケアプランを作成してもらいます。要支援の場合は、地域包括支援センターへケアプラン作成を依頼します。
ただし、以下のような形でサービスを利用する場合は、この限りではありません。
- ケアプランを自己作成する(セルフプランでサービス利用する)
- ケアプランなしで償還払いを受ける(いったん保険給付額の全額をサービス事業所に支払い、後に自己負担割合を引いた金額を市町村から払い戻しを受ける)
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厚生労働省の発表によると、2023年5月から2024年4月にかけての短期入所生活介護の利用者数は約357万7,600人であり、前年より約11万9,400人増加しています。また介護予防短期入所生活介護の利用者数は約10万400人であり、前年より約7,900人増加しています。
短期入所生活介護を利用するメリット
厚生労働省が2020年に発表した資料によると、短期入所生活介護利用者約3,600人のうち35.7%が「以前より生活リズムが整ってきた」と回答しています。また、「以前より食事や入浴、トイレ等が自分でできるようになった」という回答は全体の15.2%でした。短期入所生活介護の利用は心身機能の向上や維持に一定の効果をもたらしています。
また、家族介護者の94.0%が「介護負担が軽減された」と感じており、84.1%が「介護と仕事や家庭を両立しやすくなった」と回答しました。介護をする家族にとっても、短期入所生活介護の利用は大きなメリットです。
4. 短期入所生活介護・介護予防短期入所生活介護のサービス内容

短期入所生活介護では、食事・入浴・排せつなどの生活介護に加えて機能訓練やレクリエーションなどのサービスが提供されます。食事は利用者さん1人ひとりの健康状態や嚥下能力に合わせたメニューになっており、食事中は誤嚥などの事故が起こらないよう介護職員が見守ります。レクリエーションの内容は工作、ゲーム、カラオケ、体操など多岐にわたり、天気のよい日は屋外での軽作業や散歩などを楽しめる施設も少なくありません。
自由時間も設けられており、談話室で他の利用者さんや介護職員と交流したり居室でゆっくり過ごしたりと思い思いに過ごせます。消灯後も職員が待機しており、急な体調変化などの際は近隣医療機関との連携が可能です。
短期入所生活介護を提供している施設
短期入所生活介護は、特養や有料老人ホームなどに併設されている併設型と、ショートステイを専門に提供する単独型のサービスに大別されます。併設型と単独型のサービス内容に大きな違いはないものの、それぞれに次のような点が特徴です。
特養に併設されているショートステイは、介護保険が適用されます。有料老人ホームなどに併設されているショートステイは自立や要支援の方でも利用しやすいものの、介護保険適用外のケースがあります。
単独型短期入所生活介護の多くは併設型より小規模で、よりきめ細かいサービスを提供できることがメリットです。単独型短期入所生活介護の利用条件は、施設によって異なります。
短期入所生活介護の人員配置および設備基準
一般型ショートステイの人員配置および設備基準は、次の通りです。
・人員基準
職種 | 必要人数 |
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医師 | 1人以上 |
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生活相談員 | 利用者100人につき1人以上(常勤換算) ※うち1人は常勤(利用定員が20人未満の併設事業所を除く) |
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介護職員または看護職員(看護師もしくは准看護師) | 利用者3人につき1人以上(常勤換算) ※うち1人は常勤(利用定員が20人未満の併設事業所を除く) |
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栄養士 | 1人以上 ※利用定員が40人以下の事業所は、一定の場合は栄養士を置かなくてよい |
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機能訓練指導員 | 1人以上 |
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調理員その他の従業者 | 実情に応じた適当数 |
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・設備基準
設備 | 基準 |
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利用定員等 | 20人以上とし、専用の居室を設ける ※ただし、併設事業所の場合は20人未満にできる |
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居室 | 定員4人以下、床面積(1人当たり)10.65平方メートル以上 |
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食堂及び機能訓練室 | 合計面積3平方メートル×利用定員以上 |
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浴室、便所、洗面設備 | 要介護者が使用するのに適したもの |
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(出典:厚生労働省「(介護予防)短期入所生活介護(改定の方向性)」)
短期入所生活介護では短期入所療養介護のように手厚い医療的ケアは行わないものの、健康チェックや相談業務などを行う医師が在籍しています。また、機能訓練指導員が機能訓練を実施します。
短期入所生活介護の部屋のタイプ
短期入所生活介護の部屋のタイプは、次の通りです。
- 従来型個室
一般的な病院の個室と同じく、1つの個室を1人で利用します。施設によっては、個室内にトイレや洗面台が設けられていることもあります。 - 多床室
一般的な病院の大部屋と同じく、大部屋を2~4人で利用します。各ベッドはたいてい間仕切りなどで仕切られており、ある程度のプライベートは確保できます。 - ユニット型個室
10人以下の利用者さんを1ユニットとし、ユニットごとに専任の介護職員が配置されます。共有スペースとなる食事室や談話室の周囲に個室が設けられ、プライバシー保護と利用者さん同士の交流を両立しやすい点がメリットです。 - ユニット型個室的多床室(ユニット型準個室)
基本的なサービスや設備はユニット型と似ているものの、居室スペースは完全な個室ではなくパーティションなどで区切られています。
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ひとくちに一般型ショートステイと言っても実際の雰囲気や環境は部屋タイプによって異なり、利用者さんの性格や健康状態に合わせて選ぶことで満足度も大きく変わります。ただし部屋のタイプは利用料金にも影響するため、事前によく確認することが大切です。
短期入所生活介護の1日の流れ
短期入所生活介護の1日の流れは、おおむね次の通りです。
6:30 | 起床、身支度(洗顔、着替えなど) |
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7:30 | 朝食 食後は歯磨き、口腔ケア |
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9:00 | バイタルチェック(血圧、体温、脈拍) |
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10:00 | 機能訓練または入浴 |
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11:00 | (自由時間) |
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12:00 | 昼食 食後は歯磨き、口腔ケア |
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13:30 | バイタルチェック(血圧、体温、脈拍) |
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14:00 | レクリエーションまたは入浴 |
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15:00 | おやつ |
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18:00 | 夕食 食後は歯磨き、口腔ケア |
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19:00 | (自由時間) |
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20:00 | 就寝準備(着替えなど) |
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21:00 | 消灯 |
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食前食後の服薬サポートやトイレ介助は随時行われ、必要に応じて体位交換なども行います。入所日は到着後にバイタルチェックを行います。
5. 短期入所生活介護・介護予防短期入所生活介護の利用期間
短期入所生活介護の利用期間は原則として1泊2日です。また、短期入所生活介護は連続30日を超える利用を想定していない介護サービスです。ただし、31日目のショートステイを自費負担すれば、長期利用も可能です(通称:リセットルール)。
次の表は、2022年度における短期入所生活介護の連続利用日数に関する調査結果です。
連続利用日数 | 割合 |
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日帰り | 0.7% |
2日 | 16.0% |
3日 | 20.7% |
4~5日 | 20.3% |
6~7日 | 9.7% |
8~14日 | 11.3% |
15~30日 | 10.7% |
31日以上 | 10.6% |
(出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「短期入所生活介護における効果的なサービス提供のあり方に関する調査研究事業 報告書」)
この調査では、短期入所生活介護の連続利用日数が「3~5日」という回答が約4割を占めています。その一方で8~30日以上にわたる長期利用は全体の3割を超え、うち約1割が31日以上の利用者です。
ひとり暮らし世帯や複数の要介護者がいる世帯などの場合、特養へ入居するまでの自宅生活が困難なためにやむなく短期入所生活介護を連続して長期間利用することもしばしばあります。短期入所生活介護の連続長期間利用の目的について、2019年度の調査では「特養入居までの待機場所として」という回答が全体の9割近くを占めました。このほか、「家族介護者の疾病・長期出張など」「退院後在宅生活に向けて生活リズムを作る」などの回答も見られました。
国は短期入所生活介護の連続長期間利用を抑制するため、介護保険制度を改正し、長期利用の場合介護報酬を減額する形で対応しています。したがって、今後は短期入所生活介護の連続長期間利用を利用しづらくなる可能性があります。
6. 短期入所生活介護・介護予防短期入所生活介護にかかる費用

地域によって差があるものの、自己負担額1割で短期入所生活介護を利用する場合の自己負担額の目安は次の通りです。
・一般型ショートステイの費用(自己負担額1割の場合)
単独型・従来型個室 | 要支援1 | 479円 |
要支援2 | 596円 |
要介護1 | 645円 |
要介護2 | 715円 |
要介護3 | 787円 |
要介護4 | 856円 |
要介護5 | 926円 |
併設型・従来型個室 | 要支援1 | 451円 |
要支援2 | 561円 |
要介護1 | 603円 |
要介護2 | 672円 |
要介護3 | 745円 |
要介護4 | 815円 |
要介護5 | 884円 |
単独型・ユニット型個室 | 要支援1 | 561円 |
要支援2 | 681円 |
要介護1 | 746円 |
要介護2 | 815円 |
要介護3 | 891円 |
要介護4 | 959円 |
要介護5 | 1,028円 |
併設型・ユニット型個室 | 要支援1 | 529円 |
要支援2 | 656円 |
要介護1 | 704円 |
要介護2 | 772円 |
要介護3 | 847円 |
要介護4 | 918円 |
要介護5 | 987円 |
(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)
原則として単独型より併設型、そしてユニット型個室より従来型個室のほうが自己負担が軽くなります。ただし実際の自己負担額はサービス内容や地域によって異なるほか、別途食費や滞在費などが加算されます。
また、31日を超えて利用する場合、31日目にかかった費用は介護保険が適用されず、全額自費負担になる点に注意が必要です。
世帯収入が低い場合や介護費用の支払額が高額になった場合、次のような制度を利用して負担を軽減できるケースがあります。
- 特定入居者介護サービス
介護保険適用外の費用(食費、滞在費、送迎費など)を補う制度 - 低所得者に対する利用者負担軽減制度
指定の施設で介護サービスを受けると自己負担額が軽減される制度 - 高額介護サービス費
介護保険自己負担額が一定の金額上限を超えた場合に、超過分の払い戻しを受けられる制度
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制度を利用したい場合は、担当ケアマネジャーや施設ケアマネジャーに相談しましょう。
7. 短期入所生活介護・介護予防短期入所生活介護の利用の流れ
短期入所生活介護の利用の基本的な流れは、次の通りです。
1 | 要介護・要支援認定を受ける |
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2 | ケアプランを担当のケアマネジャー、または地域包括支援センターと作成する ※セルフプランも可能。また償還払いでサービス利用する場合はケアプランは不要 |
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3 | 利用したい施設を決める |
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4 | 利用申し込み |
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介護保険サービスを利用するためには、要介護・要支援認定が必要です。自治体窓口などで要介護・要支援認定申請をすると、自治体調査員による認定調査や主治医の意見書に基づいて審査が行われ要介護度・要支援度が決まります。
要介護なら担当ケアマネジャーへ、要支援なら地域包括支援センターへ相談し、介護や介護予防の計画をケアプランにまとめてもらうのが一般的です。ただしケアプランは自己作成できます(セルフプラン)。償還払い(一旦保険給付額の全額をサービス事業所に支払い、後日市町村から自己負担割合を除いた金額の払い戻しを受ける)でサービス利用する場合は、ケアプランは必要ありません。
短期入所生活介護を利用したい場合、なるべくスケジュールに余裕を持って施設選びを開始しましょう。施設の状況や時期によっては空きが少なく、希望通りに利用できないこともあるためです。利用したい施設が決まったら、ケアマネジャーに必要書類を準備するなどして利用申し込みの手続きをします。施設側から重要事項の説明などを受け、説明内容に同意して契約を結びます。
短期入所生活介護を利用するときのポイント
一般型ショートステイの利用を検討する際、まずは公式ホームページやパンフレットなどで設備や食事、レクリエーションの内容などを確認します。また、施設へ見学に行くことでより詳しいサービス内容や雰囲気などが分かります。見学の際は利用者さんの表情や施設スタッフの対応の様子などをチェックし、分からないことがあれば遠慮なく質問しましょう。
利用者に認知症の症状がある場合、認知症の方の受け入れ可否やサポート体制などの確認も欠かせません。。認知症の方は急に周囲の環境が変わると混乱するときもあるので、十分なサポートを提供できない短期入所生活介護の場合、一時的に認知症が悪化するおそれもあります。
認知症の有無に関係なく、ご本人がショートステイの利用に前向きかどうか確認することも大切です。短期入所生活介護の利用に消極的な場合は無理強いせず、ケアマネジャーなどに相談しながら穏やかに対応しましょう。
まとめ

短期入所生活介護・介護予防短期入所生活介護を利用すれば、利用者は生活リズムの改善や生活機能の向上が期待できます。また、ご家族の方にとっても、介護負担を軽減でき、仕事と介護の両立を無理なく続けやすくなる点がメリットです。
介護者のレスパイトケアのために定期利用もできるサービスのため、必要だと感じたときは積極的に活用するとよいでしょう。
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参考URL
厚生労働省「短期入所生活介護」厚生労働省「(介護予防)短期入所生活介護(改定の方向性)」
厚生労働省「どんなサービスがあるの? - 短期入所生活介護(ショートステイ)」
厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
厚生労働省「サービス利用までの流れ」
健康長寿ネット「短期入所療養介護(ショートステイ)とは」
健康長寿ネット「介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)とは」
健康長寿ネット「通所介護(デイサービス)とは」
三菱UFJリサーチ&コンサルティング「短期入所生活介護における効果的なサービス提供のあり方に関する調査研究事業 報告書」
福祉医療機構「短期入所生活介護(ショートステイ)」
厚生労働省「令和5年度 介護給付費等実態統計の概況」
※当記事は2024年10月時点の情報をもとに作成しています
監修
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
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