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介護医療院とは?利用できる人や費用、メリット・デメリットを解説

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2018年4月からの第7期介護保険事業計画に則り、介護医療院が法制化されました。介護医療院とはどのような施設なのか、ほかの介護施設とどのような点が異なるのか疑問に感じていた人も多いのではないでしょうか。

今回は、介護医療院の特徴や利用できる人の条件、費用のほか、メリット・デメリットなどを解説します。

1. 介護医療院とは、医療的ケアができる介護施設

介護医療院とは、2017年度末に廃止された介護療養型医療施設の主な転換先として新設された、医療的ケアにも対応可能な介護施設のことです。医師や看護師が常駐し、日常的な医療管理やターミナルケア(終末期医療)などと併せて、生活施設としての機能を備えている点に特徴があります。

介護医療院では医療機関に近い職員配置がなされていることに加え、長期療養にも対応でき、一般的な介護施設では対応が難しい医療的ケアも可能です。

■介護医療院の機能

介護医療院の機能

2. ほかの介護施設との違い

悩む介護職員

介護医療院とほかの介護施設では、入所条件となる要介護度や施設の特徴に違いがあります。特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設と、介護医療院の違いは下記のとおりです。

■介護施設の主な種類と違い

種類

対象者の条件

特徴

特別養護老人ホーム(特養)

要介護3~要介護5

  • 常時介護を必要とする人向けの、生活全般の介護を受けられる施設
  • 公的な施設の中でも数が多く、比較的費用が安い
  • ターミナルケアの対応も可能

介護老人保健施設

要介護1~要介護5

  • 症状が慢性期にある高齢者が、リハビリや看護、介護、機能訓練のほか、医療、日常生活の世話を受けられる施設
  • 3ヵ月ごとにケアプランを作成し、自宅での生活への復帰を目指す

介護医療院(旧介護療養型医療施設)

要介護1~要介護5

  • 長期にわたる療養を必要とする高齢者が、一定基準を満たした施設で、介護やそのほかの世話、機能訓練、医療を受けることができる

※公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム選び方マニュアル
※東京都福祉局「
あんしん なっとく 有料老人ホームの選び方
※高齢者住まい事業者団体連合会「
高齢者向け住まいの選び方ガイド

 

3. 介護医療院の施設基準

介護医療院は、入所する人の長期療養を想定した施設であるため、明確な施設基準が設けられています。主な施設基準として、下記の設備を備えていなければなりません。

<介護医療院の主な施設基準>

  • 1人当たりの床面積8平方メートル以上の療養室
  • 40平方メートル以上の機能訓練室
  • 診察室、処置室
  • 談話室、食堂、レクリエーションルーム

4. 介護医療院に常駐する専門職

介護医療院に常駐する専門職

介護医療院には医師や看護師などの専門職が常駐していますが、I型とII型といった種類に応じて常駐する専門職の人数などが異なります。I型とII型は、下記のように想定している利用者が異なる施設です。

<介護医療院のI型とII型の主な想定利用者>

  • I型:重篤な身体疾患を有する人や、身体合併症を有する認知症高齢者などの利用を想定した施設
  • II型:I型と比べて、容体が比較的安定している人の利用を想定した施設

I型とII型では、想定している利用者に違いがあるため、医師、薬剤師、介護職員については、I型のほうが職員1人で対応する入所者数は少なくなります。具体的な人員配置基準としては、下記の人数を配置しなければなりません。

介護医療院の人員配置基準

専門職の種類

人員配置基準

I型

II型

医師

入所者48人に対して1人(施設全体で3人以上)

入所者100人に対して1人(施設全体で1人以上)

リハビリ専門職

適当数

薬剤師

入所者150人に対して1人

入所者300人に対して1人

看護職員

入所者6人に対して1人

介護職員

入所者5人に対して1人

入所者6人に対して1人

栄養士または管理栄養士

定員100人以上で1人

介護支援専門員

入所者100人に対して1人(施設全体で1人以上)

診療放射線技師

適当数

調理員、事務員等

適当数

※厚生労働省「介護医療院とは

5. 介護医療院を利用できる人

介護医療院を利用できるのは、要介護認定を受けている人に限られます。原則として65歳以上の人が対象ですが、40歳以上で特定疾病抱えている人も入所可能です。要支援1~2では入所できません。

要介護1~5のいずれかに認定されていたとしても、誰もが介護医療院を利用できるわけではなく、低栄養リスクが高いと判断されているケースや、排泄支援を必要とするケースのように、介護報酬の加算対象となる人のほうが入所できる可能性は高まります。

6. 介護医療院で受けられるサービス

処方薬の説明をする医師

介護医療院では、大きく分けて介護サービスと医療サービスの2種類のサービスを受けることが可能です。それぞれ、主に以下のようなサービスを受けられます。

介護サービス

介護サービスとは、一般的な介護施設において提供されている、日常生活の介助などのサービスのことです。介護療養型医療施設にはあくまでも医療施設といったイメージがあったのに対して、介護医療院は、介護を必要とする高齢者が生活する場所として必要な機能を備えている点が特徴です。介護医療院で受けられる介護サービスの具体例としては、下記のようなサービスが挙げられます。

<主な介護サービスの例>

  • 健康管理
  • 食事介助
  • 入浴介助
  • 排泄介助
  • リハビリ
  • 日常生活上の世話(洗濯や掃除など)
  • レクリエーション

医療サービス

医療サービスとは、医療行為に該当するさまざまな処置を受けられるサービスのことです。医師や看護職員が常駐し、必要と判断された医療サービスを提供しています。下記は医療サービスの一例ですが、実際に対応可能な範囲は介護医療院によって異なるため、事前の確認が必要です。

<主な医療サービスの例>

  • 注射や薬の処方
  • 喀痰(かくたん)吸引
  • 床ずれなどのケア
  • 経管栄養(経鼻経管栄養、胃ろう、腸ろう)
  • 点滴
  • ターミナルケア

      

7. 介護医療院の費用

介護医療院にかかる費用のイメージ

介護医療院の費用には介護保険が適用されるため、入所者は原則1割、一定以上の所得がある場合は2~3割の負担割合で費用がかかります。介護医療院のサービス費用は厚生労働省によってさまざまなパターンが定められています。ただし、実際にかかる費用は施設ごとに異なり、厚生労働省が定めている費用には居住費や食費などは含まれていません。詳細な費用を知りたい場合は施設に問い合わせましょう。

厚生労働省が定めている費用の一例として、I型介護医療院サービス費(I)とII型介護医療院サービス費(I)の1日あたりの負担額は下記のとおりです。

■I型介護医療院サービス費(I)の1日あたりの利用者負担

要介護度

従来型個室

多床室

要介護1

721円

833円

要介護2

832円

943円

要介護3

1,070円

1,182円

要介護4

1,172円

1,283円

要介護5

1,263円

1,375円

■II型介護医療院サービス費(I)の1日あたりの利用者負担

要介護度

従来型個室

多床室

要介護1

675円

786円

要介護2

771円

883円

要介護3

981円

1,092円

要介護4

1,069円

1,181円

要介護5

1,149円

1,261円

※厚生労働省「介護報酬の算定構造 介護サービス
※サービス費用は、施設の形態や居室の種類、職員の配置などによって異なります

 

8. 介護医療院のメリット

介護医療院に入所すると、医療面、生活面でのさまざまなサービスが受けられます。介護医療院を利用する際の主なメリットとしては、下記の4点が挙げられます。

医療ケアが受けられる

介護医療院に入所するメリットは、医療ケアが受けられることです。介護医療院には医師や看護職員が配置されているため、入所者が必要とする医療ケアを受けられます。例えば、喀痰吸引や経管栄養といった処置は、一般的な介護施設や老人ホームでは対応が難しいケースも少なくありません。

介護サービスに加え、こうした医療サービスを受けられることで、持病がある人などは安心して生活できます。

ターミナルケアを行ってくれるため長期的にケアを受けられる

ターミナルケアを含む長期的なケアに対応できることも、介護医療院のメリットのひとつです。そのため終生施設として、入所後に体調が悪化しても病院などへ移らずに入所し続けることが可能です。一般的な介護施設や老人ホームはあくまでも生活の場であるため、こうしたケアを受けられないケースもあります。

リハビリが受けられる

介護医療院では、リハビリが受けられるといったメリットもあります。リハビリを継続することにより、体の機能を維持・向上することも可能です。リハビリは、介護施設や老人ホームによっては対応可能な場合もありますが、どの施設でも必ず提供されているサービスではありません。

介護医療院であれば、リハビリを含め、医療サービスと連携したケアが受けられます。

レクリエーションなど生活面のサービスも受けられる

介護医療院のメリットは、レクリエーションなど生活面のサービスも受けられる点です。介護医療院には要介護者の生活施設としての側面もあるため、一般的な介護施設や老人ホームと同様に生活面のサービスも受けられます。レクリエーションルームや談話室なども備えており、毎日をいきいきと過ごせるでしょう。生活面のサービスと医療サービスが両立していることは、介護医療院に特有のメリットです。

 

9. 介護医療院のデメリット

介護医療院にはさまざまなメリットがある反面、デメリットもあります。メリット・デメリットの両面を把握した上で、介護医療院への入所を検討することが大切です。介護医療院の主なデメリットとしては、下記の2点が挙げられます。

プライバシーを確保しづらい場合がある

介護医療院のデメリットは、プライバシーを確保しづらい場合があることです。介護医療院では、個室に入所できるとは限りません。施設によっては個室が設置されておらず、パーテーションで仕切られた多床室しか提供されていないケースもあります。

これまで自室で過ごしてきた人や、周囲の物音が気になる性格の人が入所する場合、物音が気になってよく眠れず、ストレスを感じる原因にもなりかねません。入所を決める前に、施設見学などを通じて、入所者にとって快適な環境かどうかを確認しておくことをおすすめします。

高額な利用料になる場合がある

高額な利用料になる場合があることも、介護医療院のデメリットです。介護医療院の利用料は、介護保険サービスに加えて食費や居住費などがかかるため、一般的な介護施設や老人ホームなどと比べて高額になる可能性があります。また、医師や看護職員といった医療サービスに対応できるスタッフが複数常駐することによって、人件費が高くなりやすいことも利用料が高額になる一因といえます。

介護医療院への入所を検討する際には、介護保険サービス費用だけでなく、施設利用時にかかる実際の費用を確認しておくことが重要です。長期間入所することになる可能性もあるため、利用料を無理なく支払い続けられるかどうか十分に検討してください。

 

10. 介護医療院の利用方法

介護医療院に従事するスタッフ

介護医療院を利用するには、要介護認定を受ける必要があります。介護医療院の利用条件を満たしていることを確認できたら、入所先の施設を探しましょう。

施設探しでは、入院している人は医療機関のソーシャルワーカーに相談するのもひとつの方法です。入院していない場合には、厚生労働省が提供している「介護サービス情報公表システム」を活用して検索することをおすすめします。介護医療院は一般的な介護施設と比べて施設数が限られているため、候補となる施設が見つからない場合には、隣接する市区町村などにも範囲を広げて探すのが得策です。

入所したい施設が見つかったら、介護医療院に連絡して見学や体験利用を行います。入所希望が変わらない場合は、施設に指定された必要書類と入所申込書を提出して、入所判定を受けます。判定で問題がなければ、入所予定者と家族の面談が実施されるのが一般的です。面談でも問題がないと判断されると、入所日が決定し、入所できるようになります。

介護医療院は2018年4月に新設された施設です。一般的な介護施設や老人ホームと比べると施設数が少ない傾向があるため、入所可能な施設をよく調べておく必要があります。


参考URL

厚生労働省「介護医療院とは?」
健康長寿ネット「介護医療院とは」

監修

北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO

菊地 雅洋

北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO

菊地 雅洋

社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。

社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。

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