在宅介護には、介護保険で利用できるサービスである訪問介護、訪問看護、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)などがあります。
また、在宅介護の種類の1つである地域密着型サービスにも、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護など、さまざまな種類があります。
当記事では、在宅介護とは何かといった基礎的な内容から、在宅介護サービスを受ける方法・在宅介護サービスの種類まで分かりやすく解説します。
介護サービスの種類
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在宅介護には、介護保険で利用できるサービスである訪問介護、訪問看護、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)などがあります。
また、在宅介護の種類の1つである地域密着型サービスにも、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護など、さまざまな種類があります。
当記事では、在宅介護とは何かといった基礎的な内容から、在宅介護サービスを受ける方法・在宅介護サービスの種類まで分かりやすく解説します。
在宅介護とは、要支援または要介護の認定を受けた人が自宅で生活しながら、適切な介護サービスを受けることです。在宅介護は、施設への入所を避けたいと考える高齢者や、家族による見守りが可能な環境を選びたい方々に適しています。介護用ベッドや車椅子などの福祉用具も、介護保険を活用して借り入れることが可能です。
国は在宅介護を積極的に推進しており、介護保険を通じて利用できる在宅介護サービスを充実させています。
在宅介護の大きなメリットの1つは、介護を受ける方が住み慣れた自宅で生活を続けられることです。これまでの生活環境や、長年培ってきた地域とのつながりを維持できることは、精神的な安定だけでなく、生活の質の向上にも大きく貢献します。
厚生労働省の「在宅医療・介護の推進について」という資料によれば、60%以上の方が「自宅で療養したい」と回答しています。また要介護状態になった場合でも、自宅もしくは、子ども・親族の家での介護を希望する方は4割を超えているとのデータが明らかになっています。
在宅介護のもう1つのメリットは、介護サービスを柔軟に取捨選択できることです。介護を受ける方の状態や家族の状況に合わせて、訪問介護、訪問看護、デイサービスなど、必要なサービスを必要なだけ利用できます。
在宅介護において最も大きなデメリットは、介護者の負担増加です。介護は肉体的にも精神的にも負担が大きく、介護者自身の生活に大きな影響を与えます。
介護者の負担増加によって、介護離職という問題が起きています。介護離職とは、家族の介護が必要になったために、介護者が仕事を辞めることです。介護離職に関して、以下のようなデータがあります。
【介護・看護が理由で前職を離職した方の数(万人)】
| 無業者 | 有業者 |
---|---|---|
2007年 | 11.6 | 2.9 |
2012年 | 8.3 | 1.8 |
2017年 | 7.5 | 2.5 |
2022年 | 8.3 | 2.3 |
(出典:総務省「令和4年就業構造基本調査」)
【「手助・介護」を機に仕事を辞めた後の自身の変化(%)(2019年調査)】
| 非常に負担が増した | 負担が増した | 変わらない | 負担が減った | かなり負担が減った | 分からない |
---|---|---|---|---|---|---|
精神面 | 30.2 | 26.1 | 14.8 | 12.6 | 9.9 | 6.6 |
肉体面 | 24.0 | 27.5 | 16.4 | 15.2 | 10.8 | 6.1 |
経済面 | 34.1 | 35.0 | 19.0 | 3.7 | 1.6 | 6.7 |
(出典:厚生労働省「令和元年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」)
介護離職は、介護者の経済的なリスクやキャリア断絶、心身の負担、社会的な孤立など、さまざまな問題を引き起こします。在宅介護のデメリットを少しでも軽減するためには、公的サービスをはじめ、適切な介護サービスを活用することが重要です。
在宅介護サービスを利用するには、主に以下の流れで手続きを行う必要があります。
1 | 在宅介護サービスを利用するためには、要介護認定の申請が必要です。 |
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2 | 要介護認定後、一般的には居宅介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)によってケアプランを立ててもらい、必要なサービス内容、訪問頻度などを決定します。 ただし、ケアプランは「セルフプラン」として、自分で作成することも可能です。また、サービス利用時に介護サービス費の全額を負担し、後に市町村から自己負担割合分の金額を除いた費用を返還してもらう「償還払いサービス」の場合は、ケアプランは必要ありません。 ケアプランには、必要な介護サービスの種類や提供頻度などが記載されます。 |
3 | ケアプランに基づき居宅サービス事業者とサービスの調整を行い、実際の介護サービスの提供が開始されます。 |
要支援1、もしくは要支援2と認定された場合は、「介護予防サービス」として扱われます。
在宅介護サービスは、高齢者が自宅で安心して生活できるよう支援するために、さまざまな種類があります。ここでは、それぞれのサービスの特徴や対象者について、詳しく紹介します。
在宅介護サービスには、介護を受ける方の自宅に介護職員や専門スタッフが訪問し、介護や療養上の支援を行う訪問型サービスがあります。訪問型サービスには、以下のような種類があります。
訪問介護 | 訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅に訪問し、入浴介助、排泄介助、食事介助、更衣介助などの身体介護や、調理、掃除、洗濯などの生活援助を行います。 |
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訪問入浴介護 | 入浴が困難な人を対象に、専用の入浴車で自宅を訪問し、介護職員と看護職員が入浴サポートを行うサービスです。 通常の訪問介護では提供しにくい入浴のニーズに応えます。 |
訪問看護 | 看護師や保健師、リハビリ専門職が自宅に訪問し、かかりつけ医の指示に基づき、病状の管理や必要な医療処置、リハビリなどのサービスを提供します。 健康の維持と病状の悪化防止を目的としており、病院と同じような医療処置を自宅で受けることができます。 |
訪問リハビリ | 訪問リハビリは、理学療法士や作業療法士が自宅に訪問し、運動機能や日常生活動作の改善を目的としたリハビリテーションを行います。 |
居宅療養管理指導 | 医師や薬剤師、管理栄養士・歯科衛生士などが自宅を訪問し、療養に関する指導や管理を行います。 特に長期的な療養を必要とする方に対して、適切なケアを提供することを目的としています。 |
在宅介護サービスには、介護を受ける方が日中、施設に通い、介護やリハビリテーションを受ける通所型サービスがあります。通所型サービスには、以下のような種類があります。
通所介護(デイサービス) | 通所介護事業所に日帰りで通うことにより、入浴、食事の提供、機能訓練などのサービスを受けることができます。 利用者さんが他の方と交流する機会を持ちながら、日常生活の基本的な支援を受けることができるため、社会的孤立を防ぎ、心身の機能維持にもつながります。 |
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通所リハビリ(デイケア) | 介護老人保健施設や医療機関に日帰りで通い、主に機能回復訓練を目的としたリハビリテーションを受けます。 歩行訓練や体操などを通じて、利用者さんの身体機能の改善や維持を目指します。 食事や入浴、排泄などの日常生活の支援も提供され、健康状態のチェックを含む総合的なケアが行われます。 |
在宅介護サービスには、介護を受ける方が短期間施設に入所し、介護や療養を受ける短期入所型サービスがあります。短期入所型サービスには、以下のような種類があります。
短期入所生活介護 | 主に介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)で提供されます。 介護が必要な方が短期間施設に滞在し、食事、入浴、排泄の支援、機能訓練などを受けることができます。 |
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短期入所療養介護 | より医療的な管理が必要な方に対して提供されるサービスです。 介護老人保健施設や療養型の病床を持つ病院で提供され、看護や医学的な管理の下での介護、リハビリテーションが提供されます。 |
生活環境を整えるサービスには、以下のような種類があります。
福祉用具貸与 | 日常生活の自立をサポートするために、介護保険を通じてさまざまな福祉用具が貸し出されるサービスです。 福祉用具の例:特殊寝台、床ずれ防止用具、手すり、スロープ、車椅子、歩行器など。 ※なおスロープ・歩行器・歩行補助杖については、貸与と購入を選択できます。(例外品あり) |
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特定福祉用具販売・購入 | 排泄や入浴など、貸与に適さない福祉用具(腰掛便座や入浴補助用具など)を購入できます。 これらの購入費用の一部が介護保険によってカバーされます。 |
居宅介護住宅改修費 | 住み慣れた自宅で安全に生活を続けられるよう、手すりの取り付けや段差の解消、滑り防止の床材の変更など、必要な改修に対して支給があります。 介護保険を利用して、改修費用の最大20万円(支給限度基準額)まで、費用の1割~3割の自己負担でカバーできます。 |
地域密着型サービスは、要介護高齢者や認知症高齢者が、住み慣れた地域でいつまでも生活できるように創設された介護サービスです。従来の訪問介護と異なり、小規模な事業所が地域に密着してサービスを提供することで、よりきめ細やかな介護支援が可能となります。
地域密着型サービスには、以下のような種類があります。
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例えば夜間対応型訪問介護は、主に夜間に高齢者の自宅を訪問し、入浴、排せつ、食事の介助や日常生活の世話を行うサービスです。夜間にも安心して生活を送ることができ、緊急時の対応も可能です。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、日中および夜間を通じて定期的に訪問介護や看護のサービスを提供するシステムです。定期的にヘルパーや看護師が訪問して健康管理や日常生活のサポートを行い、また、急な体調変化や緊急時には24時間体制で随時対応してくれます。
介護予防サービスとは、介護が必要になる状態になるのをできるだけ先延ばし、または進行を緩やかにし、自立した生活を維持できるように支援するためのサービスです。具体的には、日常生活の基本動作である入浴、排泄、食事の支援をはじめ、身体的、精神的な機能の維持や改善を促すことを目的としています。介護予防サービスは、介護保険制度に基づき、要支援1または要支援2と判定された方が利用できるサービスです。
介護予防サービスにもさまざまな形態があり、例えば、介護予防訪問入浴介護、介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導、介護予防通所リハビリテーション、介護予防短期入所生活介護などが挙げられます。
詳しくは、以下の記事も参考にしてください。
▶ 介護予防が必要になるのはどんなとき?公的サービスについても解説
介護保険で定められている在宅介護サービス以外にも、民間事業者によって提供される保険適用外の民間サービスがあります。介護保険でカバーしきれないニーズや、よりきめ細やかなサービスを求める方にとって、検討すべき選択肢です。
例えば、散歩や趣味のための外出サポート、特別な料理の準備、家具の移動や修繕、ペットの世話、金銭管理や重要文書の作成支援など、日常生活に彩りや利便性を加えるサービス などが挙げられます。
サービス内容や料金は事業者によって異なるため、事前にしっかりと確認する必要があります。また、民間サービスは介護保険で利用できるサービスよりも費用が高額な場合が多いです。
介護にかかる費用は、その内容や期間によって大きく異なります。「生命保険に関する全国実態調査」によれば、一時的な費用(住宅の改造や介護用ベッドの購入など)は、平均で約74万円かかることが明らかになっています。また、介護に一切費用がかからなかったケースも約15.8%存在し、また約18.6%のケースでは15万円未満と比較的少額で済んでいます。
要介護度別の在宅介護サービスにかかる費用は、以下の通りです。
【在宅介護サービスにかかる1か月あたりの平均費用(2016年調査)】
要介護度 | 介護サービスへの支出 | 介護サービス以外への支出 | 合計 |
---|---|---|---|
全体平均 | 1.6万円 | 3.4万円 | 5.0万円 |
要介護1 | 0.7万円 | 2.6万円 | 3.3万円 |
要介護2 | 1.4万円 | 3万円 | 4.4万円 |
要介護3 | 2.5万円 | 3.5万円 | 6.0万円 |
要介護4 | 1.7万円 | 4.2万円 | 5.9万円 |
要介護5 | 2.1万円 | 5.3万円 | 7.4万円 |
(出典:家計経済研究所「在宅介護にかかる費用」)
これらのデータから、介護費用が各家庭や要介護度によって大きく異なることが読み取れます。
仕事を続けながらの在宅介護は、心身に大きな負担をかける可能性があります。日本には、介護者を支援するための制度がいくつかあるので、以下で代表的なものを3つ取り上げて解説します。
介護休業 |
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介護休業給付金 |
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その他の制度 |
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他にも複数の制度が存在します。
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これらの制度を有効に利用することで、在宅介護の負担を軽減し、介護者が健康を守りながら仕事と介護を両立しやすくなります。地域包括支援センターやケアマネジャーなどの専門家と相談しながら、これらの支援の活用も検討してみるとよいでしょう。
生命保険文化センターの調査によれば、介護費用(月額)は在宅介護の平均が4.8万円で、施設介護では12.2万円と施設介護側が高くなる傾向があります。単純に介護費用だけで見れば、在宅介護のほうがおすすめと言えるでしょう。
しかし、在宅介護と施設介護のどちらがよいかは一概に言えず、要介護者の状況や家族の事情などによって当然異なります。
在宅介護のメリットは、住み慣れた自宅で生活できること、家族との時間を多く持てること、自分のペースで生活できることなどです。一方、デメリットは、介護者の負担が大きくなること、夜間は家族での介護が基本的に必要となること、介護者の不在時に何か起こった際の対応が難しいことなどが挙げられるでしょう。
施設介護のメリットは、介護の負担が軽減されること、専門スタッフによる質の高い介護を常時受けられること、24時間365日の介護体制があることなどです。一方、デメリットは、住み慣れた場所を離れること、家族との時間が減ること、在宅介護よりも費用がかかることなどが挙げられます。
まずは、ケアマネジャーなどの専門家に相談しながら、本人と家族で十分に検討することをおすすめします。
在宅介護は、介護を受ける方が住み慣れた自宅で生活できることや、施設介護よりも費用が抑えやすいといったメリットがあります。一方で、介護者の負担が大きくなりやすい点に注意しましょう。最悪の場合、介護離職につながってしまうケースもあるので、できる限り在宅介護で受けられるサービスを利用することが推奨されます。
在宅介護・施設介護ともに、メリットとデメリットがそれぞれあるので、自分やご家族に合った方法を選ぶことが大切です。
在宅介護に関するお悩みがある場合は、マイナビあなたの介護でLINEや電話で相談することができます。最適な施設探しから介護準備のお手続きのサポートなど幅広く対応します。
どんな些細なお悩みでも、お気軽にご相談ください。
参考URL
健康長寿ネット「居宅サービス」
厚生労働省「在宅サービスについて」
厚生労働省「公表されている介護サービスについて」
厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業のサービス利用の流れ」
厚生労働省「令和元年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」
家計経済研究所「在宅介護にかかる費用」
生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」
厚生労働省「介護休業制度 特設サイト」
公益財団法人 生命保険文化センター「介護離職者はどれくらい? 介護離職をしないための支援制度は?」
生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」
厚生労働省「在宅医療・介護の推進について」
※当記事は2024年4月時点の情報をもとに作成しています
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
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