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介護サービスの費用はいくら?自己負担額や保険の対象サービスを解説

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介護サービスを利用するにあたって、費用面が気になっている方も多いはずです。介護サービスの自己負担額や、介護費が高額になった場合の補助制度などを把握しておきたいという方もいるでしょう。

今回は、介護サービスの自己負担割合や、在宅介護と施設入所にかかる費用の違いなどについてわかりやすく解説します。介護サービスの自己負担額を軽減できる制度も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

1. 介護サービス利用時の自己負担割合はいくら?

介護保険制度(介護保険)とは、介護が必要と認定された場合に、介護費用の自己負担額を抑えられる制度のことです。日本では40歳以上の人に公的介護保険への加入が義務付けられています。

介護サービスを利用する場合、自己負担額は所得に応じて1割、2割、3割のいずれかが適用されます。

介護サービスの自己負担割合の確認方法は下記のとおりです。

■介護サービスの自己負担割合の判定の流れ

※厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.658」(2018年6月)

例えば、65歳以上の人で合計所得金額が160万円未満の場合、介護サービスの自己負担割合は1割になります。この人が毎月2万円の介護サービスを利用する場合、月々の自己負担額は2,000円です。さらに、実費で支払う食費や日用品の購入費などが追加された金額が、介護にかかる総費用となります。

なお、ケアマネージャーによるケアプランの作成費については、費用の全額を市区町村が負担するため自己負担は発生しません。

▶ 介護保険とは?
▶ 初めての介護でも安心!介護保険の使い方をわかりやすく解説

 

2. 介護サービスの自己負担割合が決まる時期

要介護度が書かれたブロック

介護サービス利用時の自己負担割合は、要介護認定が下りると同時に決定されます。自己負担割合は前年の所得にもとづいて決定され、その後は毎年7月に自動更新される仕組みです。

要介護認定は、申請から約1ヵ月で承認されるのが一般的です。要介護認定が承認されると「介護保険負担割合証」が発行され、自宅に郵送されます。この書類に記載されているのが、次の更新までに適用される自己負担割合です。65歳以上の人全員に送付される「介護保険被保険者証」とともに大切に保管してください。

自己負担割合は世帯構成の変更や所得に応じて1~3割のあいだで見直され、変更となった際には都度新たな介護保険負担割合証が交付されます。

▶ 要介護認定とは?

 

3. 介護サービスの支給限度基準額

介護施設の模型と積まれたコイン

特定のサービスや費用には、介護保険の支給限度額が設けられており、これを「(区分)支給限度基準額」といいます。

支給限度基準額が設けられているのは、在宅サービスや地域密着型サービス、特定福祉用具の購入、住宅改修費などです。

ここからは、各サービスや費用における支給限度額について解説します。

在宅サービス、地域密着型サービス

在宅サービスや地域密着型サービスを利用した場合、支給基準限度額を超えた分のサービス利用料が全額自己負担となります。在宅サービスとは、自宅で生活する要介護1~5の人が介護保険を使って受けられる介護サービスのこと。地域密着型サービスとは、市区町村指定の事業者が地域住民に提供する介護サービスのことを指します。

在宅サービス、地域密着型サービスの支給限度基準額は、下記のとおりです。

■在宅サービス、地域密着型サービスの支給限度基準額

要介護度

支給限度基準額

(月額)

利用者負担限度額

(1割)

利用者負担限度額

(2割)

利用者負担限度額

(3割)

要支援1

5万320円

5,032円

1万64円

1万5,096円

要支援2

10万5,310円

1万531円

2万1,062円

3万1,593円

要介護1

16万7,650円

1万6,765円

3万3,530円

5万295円

要介護2

19万7,050円

1万9,705円

3万9,410円

5万9,115円

要介護3

27万480円

2万7,048円

5万4,096円

8万1,144円

要介護4

30万9,380円

3万938円

6万1,876円

9万2,814円

要介護5

36万2,170円

3万6,217円

7万2,434円

10万8,651円

※厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「サービスにかかる利用料
※1単位=10円の地域(三大都市圏や一部都道府県の主要都市などを除いた地域)の場合の例です。地域によって金額が異なる場合があります。

例えば、要介護2で自己負担割合1割の人が介護サービスを利用した場合、月額利用料が19万7,050円までであれば自己負担割合は1割です。一方、19万7,051円以上利用した分に関しては10割負担となります。

なお、介護サービスの利用料は、全国一律の単位で決められています。基準値は「1単位=10円」です。1単位の金額は地域によって異なり、地価や人件費、運搬費などが高い都市部は単価が高く設定されています。三大都市圏や一部都道府県の主要都市では、基準値に3~20%上乗せされた単価となっています。
 

特定福祉用具・福祉用具の購入

特定福祉用具とは、腰掛便座や入浴補助用具といった介護に必要な物品のことで、購入して使用します。特定福祉用具購入費の支給限度基準額は、要介護度にかかわらず一定で、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間で10万円です。この範囲内であれば、利用者は購入費の1~3割のみの負担で済みます。

さらに、2024年6月からは、これまで貸与のみが可能だった一部の福祉用具について、貸与か購入かを選べるようになりました。

介護保険の対象となるのは下記の特定福祉用具と福祉用具です。

<介護保険の対象となる特定福祉用具と福祉用具>

  • 腰掛便座
  • 自動排泄処理装置の交換可能部品
  • 排泄予測支援機器
  • 入浴補助用具
  • 簡易浴槽
  • 移動用リフトのつり具の部品
  • スロープ(貸与または購入から選択可能)
  • 歩行器(貸与または購入から選択可能)
  • 歩行補助つえ(貸与または購入から選択可能)

住宅改修費

住宅改修費とは、要支援者・要介護者が自宅で安全に暮らし続けられるよう、自宅に手すりを取り付けたり、段差を解消するための工事をしたり、引き戸などへの扉交換を行ったりする際にかかる費用のことを指します。

住宅改修費は要介護度にかかわらず支給限度基準額が決められており、1軒の住宅につき20万円までです。利用者の自己負担は、このうち1~3割となります。1回分の改修費用が20万円に達しなかった場合には、複数回に分けて使うことも可能です。

介護保険の対象となる主な住宅改修費としては、下記が挙げられます。

<介護保険の対象となる主な住宅改修費>

  • 手すりの取り付け
  • 段差の解消
  • 滑りの防止および移動の円滑化などのための床・通路面の材料の変更
  • 引き戸などへの扉の取り替え
  • 洋式便器などへの便器の取り替え

なお、支給限度基準額は建物単位で適用されるため、転居した場合には新たに20万円までの支給限度基準額が設定されます。

 

4. 在宅と施設の介護費用の違い

介護施設と車いすの模型

在宅で介護サービスを利用する場合と、介護施設に入所する場合とでは、費用面にどのような違いがあるのでしょうか。それぞれ必要な費用について、介護保険の適用範囲と併せて解説します。

在宅介護の費用

在宅介護の場合、訪問介護などの介護サービス利用料のほか、簡易浴槽やポータブルトイレといった福祉用具の購入・レンタル費、食費、バリアフリーにするための住宅改修費などがかかります。

介護サービスには介護保険が適用されるものの、要介護度が上がるにつれて必要な介護サービスも増える傾向があります。支給限度基準額を超えてしまうと、超えた分の介護サービス利用料は全額自己負担となる点に注意が必要です。

なお、民間の介護サービスを利用した場合には、介護保険の対象にはなりません。民間介護サービス事業者に支払った費用は全額自己負担となることは覚えておきましょう。

施設入所の費用

介護施設に入所する際の費用は、要介護度や入所する施設、住環境(個室、相部屋など)によって自己負担額が変わります。

加えて、施設によっては居住費や食費、そのほかの日用品費など、介護保険の対象外となる費用が多く発生する場合があるので注意が必要です。公的介護施設であれば比較的費用を抑えられますが、選ぶ部屋によっても居住費は異なります。

例として、介護保険施設のひとつである特別養護老人ホーム(指定介護福祉施設)に入所した場合にかかる費用を見ていきましょう。

要介護3で介護保険の自己負担割合1割の人が、特別養護老人ホームの多床室を1ヵ月(30日間)利用した場合にかかる費用は下記のとおりです。

<要介護3、自己負担割合1割の人が、特別養護老人ホームを利用する場合の月額費用>

  • 介護サービス費用:2万1,960円(※)
  • 居住費:2万5,650円(855円/日×30日)
  • 食費:4万3,350円(1,445円/日×30日)
  • 日常生活費:1万円
  • 合計:10万960円

※多床室、要介護3、732単位で自己負担金額を計算(1単位=10円の場合):732単位×30日×10円×0.1(1割)=2万1,960円

上記のほか、医療費や理美容代などがかかる場合があります。なお、同じ要介護度であっても、地域によって単位ごとの料金設定が異なる点には注意が必要です。

 

5. 介護サービスの自己負担を軽減できる制度

介護サービスの費用が高額になってしまう場合、自己負担額を軽減できる制度を利用することをおすすめします。

主な制度として「特定入所者介護サービス費(補足給付)」「高額介護サービス費」「高額医療・高額介護合算療養費制度」の3つをご紹介します。

特定入所者介護サービス費

特定入所者介護サービス費(補足給付)は、介護保険施設などを利用する人のうち、所得や資産などが一定以下の人に対して、食費と居住費の負担限度額を設け、これを超えた分を介護保険から支給する制度です。対象者となる条件は、世帯全員が住民税非課税であることや、預貯金が一定の金額以下であることなどです。

特定入所者介護サービス費の対象となるためには、下記の条件をすべて満たす必要があります。

<特定入所者介護サービス費が支給されるための条件>

  • 要介護認定を受けている
  • 世帯全員が住民税非課税である(別世帯の配偶者を含む)
  • 下記の資産要件を満たしている

■ 特定入所者介護サービス費の対象となる資産要件

負担段階

所得状況

預貯金などの金額

第1段階

生活保護や老齢福祉年金を受給している人

単身1,000万円以下

夫婦2,000万円以下

第2段階

前年の合計所得金額と年金収入額の合計が80万円以下

単身650万円以下

夫婦1,650万円以下

第3段階(1)

前年の合計所得金額と年金収入額の合計が80万円超120万円以下

単身550万円以下

夫婦1,550万円以下

第3段階(2)

前年の合計所得金額と年金収入額の合計が120万円超

単身500万円以下

夫婦1,500万円以下

※厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「サービスにかかる利用料
 

高額介護サービス費

高額介護サービス費は、月々の自己負担額(福祉用具購入費や食費、居住費など一部を除く)の合計金額が一定額を超えた場合、超えた分が介護保険から支給される制度です。支給限度基準額を超えた分を市区町村に申請すると、高額介護サービス費として払い戻されます。

自己負担額には個人または世帯の所得に応じて上限が設けられています。具体的な上限額は次のとおりです。

■高額介護サービスの自己負担上限額

設定区分

対象者

負担の上限額(月額)

第1段階

生活保護を受給している方など

1万5,000円(個人)

第2段階

市町村民税世帯非課税で公的年金などの収入金額+そのほかの合計所得金額の合計が80万円以下

2万4,600円(世帯)

1万5,000円(個人)

第3段階

市町村民税世帯非課税で第1段階および第2段階に該当しない人

2万4,600円(世帯)

第4段階

市区町村民税課税世帯~課税所得380万円(年収約770万円)未満

4万4,400円(世帯)

課税所得380万円(年収約770万円)~690万円(年収約1,160万円)未満

9万3,000円(世帯)

課税所得690万円(年収約1,160万円)以上

14万100円(世帯)

※厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「サービスにかかる利用料

なお、上記の「個人」は介護サービスを利用した本人の負担上限額、「世帯」は介護サービスを利用した世帯における負担上限額を表しています。

また、第4段階の判定基準となる課税所得は、同一世帯内の介護サービスの利用者または65歳以上の人の課税所得で判断されます。
 

高額医療・高額介護合算制度

高額医療・高額介護合算制度は、医療保険と介護保険における1年間の自己負担額が高額になった場合に、自己負担額を軽減する制度です。

自己負担の額は、医療保険上の世帯単位で合算することができます。自己負担限度額は、加入している医療保険の制度や、被保険者の年齢・所得などの条件によって細かく設定されています。

条件ごとの自己負担限度額は下記のとおりです。

■高額医療・高額介護合算療養費制度の自己負担限度額(世帯単位)

 

後期高齢者医療制度

+介護保険(75歳以上の人がいる世帯)

被用者保険または国民健康保険+介護保険(70~74歳の人がいる世帯)

被用者保険または国民健康保険+介護保険(70歳未満の人がいる世帯)

年収約1,160万円

212万円

年収約770万円~約1,160万円

141万円

年収約370万円~約770万円

67万円

年収約370万円まで

56万円

60万円

市町村民税世帯非課税など

31万円

 

 

34万円

市町村民税世帯非課税かつ年金収入80万円以下など

本人のみ

19万円

介護利用者が複数

 

31万円

※厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「サービスにかかる利用料

例えば、夫婦共に75歳以上で、市町村民税世帯非課税の世帯の場合、自己負担額は下記のようになります。

<夫婦共に75歳以上(市町村民税世帯非課税)の場合の自己負担額の例>

  • 夫婦共に75歳以上(市町村民税世帯非課税)
  • 夫が医療サービスを受けており、入院費として30万円を負担
  • 妻が介護サービスを受けており、介護サービス費として30万円を負担
  • 年金収入は夫婦で年間120万円程度

この夫婦の自己負担限度は31万円であるため、夫の医療サービス費と妻の介護サービス費を合算した60万円のうち、29万円の支給を受けることができます。

 

6. 介護サービスの自己負担額を試算しておこう

白いブタの貯金箱と電卓

介護サービスを受けるための費用は、介護保険によって負担が軽減される場合があります。利用者の年収や年齢、要介護度、利用する介護サービスによって自己負担金額は大きく変わりますので、この記事を参考に費用を試算してみてください。

予算に合った介護施設を探す際には、信頼できるウェブサイトを利用し、正確な情報を収集することが大切です。例えば、厚生労働省の「介護事業所・生活関連情報検索」や一般社団法人高齢者住宅協会「サービス付き高齢者向け住宅 情報提供システム」のほか、一般社団法人東京都老人保健施設協会「施設・空床検索」、マイナビ「マイナビあなたの介護」などを活用するといいでしょう。

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参考URL

介護サービスの自己負担額はいくら?軽減制度も紹介
【介護の基礎知識】介護保険サービスの自己負担分はいくら?介護保険の自己負担額の考え方
【ゼロからわかる介護保険】介護保険サービスの自己負担額は?
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介護費用は平均でいくらかかる?期間や自己負担額を軽減する制度もくわしく解説!

監修

北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO

菊地 雅洋

北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO

菊地 雅洋

社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。

社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。

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