親が高齢になってくると、思わぬ病気やケガをする可能性が高くなります。ある日突然、親に介護が必要になったとき、介護保険をどう使えばよいのかわからず、不安になる人もいるのではないでしょうか。
親に介護が必要になったときにあわてないためにも、介護保険の使い方を知っておく必要があります。
この記事では、介護保険とは何か、使い方について、詳しく解説します。
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親が高齢になってくると、思わぬ病気やケガをする可能性が高くなります。ある日突然、親に介護が必要になったとき、介護保険をどう使えばよいのかわからず、不安になる人もいるのではないでしょうか。
親に介護が必要になったときにあわてないためにも、介護保険の使い方を知っておく必要があります。
この記事では、介護保険とは何か、使い方について、詳しく解説します。
介護保険制度とは、社会全体で高齢者の介護を支え合う仕組みで、2000年に始まった社会保険のなかでは新しい部類に入る制度です。
介護保険制度は、市区町村と特別区(※)が保険者として運営されており、その地域に住む40歳以上の人が介護保険の加入者、つまり被保険者となります。
なお、介護保険は強制加入の社会保険であり、必要ないから加入しないという選択はできません。
介護保険の仕組みについて詳しく見てみましょう。
(※)広域連合を設置している場合は広域連合
介護保険の被保険者は、年齢によって第1号被保険者と第2号被保険者に分けられます。
「特定疾病」とは、加齢と関係があり、要介護状態の原因となる心身の障害を引き起こす疾病のことです。具体的に次の16種類が該当します。
介護保険の被保険者が、何らかの理由で介護が必要になった場合、在住地となる市区町村または特別区に申請をします。
申請を受けた市区町村または特別区は、介護認定調査員による調査を行い、非該当、要支援1・2、要介護1~5のいずれかの判定を行います。要支援以上であれば、介護保険のサービスが利用できます。
具体的には、以下のような理由で介護や日常生活の支援が必要となった場合に、介護保険の利用を開始するケースが多いでしょう。
介護保険で使えるサービスは大きく7種類に分けられます。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
介護に関する相談などを請け負うサービスを「居宅介護支援」といいます。
居宅介護支援では、介護全般の相談やケアプランの作成などをケアマネージャーが行います。
また、定期的に訪問して利用者の健康状態やサービスなどのモニタリングを行ったり、利用者に代わって介護保険の申請を代行したりする仕事も、居宅介護支援として行われます。
利用者の自宅などに訪問して、さまざまなサービスを提供する「訪問サービス」には、以下の6種類があります。
利用者が施設などに出かけていき、さまざまなサービスを受ける「通所サービス」には、以下の5種類があります。
介護保険のサービスには、利用者の状態や希望に応じて、訪問と通い、宿泊を自由に組み合わせることができる「小規模多機能型居宅介護」サービスがあります。
基本的には、通いのサービスを中心とし、短期間の宿泊や自宅への訪問を組み合わせることで、住み慣れた地域での生活が継続できることを目的とするものです。組み合わせのサービスには、小規模多機能型居宅介護に訪問看護を合わせた「看護小規模多機能型居宅介護」もあります。
普段は家族の介護を受けているものの、家族に用事があるときや家族のリフレッシュのために、施設に短期間宿泊し、介護サービスを受けるものを「短期入所」といいます。
短期入所には、介護老人福祉施設(特養)などで生活面の支援や機能訓練などを受ける「短期入所生活介護」と、医療機関や介護老人保健施設、介護医療院で生活面の支援と医療や看護などを受ける「短期入所療養介護」があります。
▶ 介護老人福祉施設(特養)とは?
▶ 介護老人保健施設(老健)とは?
自宅での生活が難しくなった人が、施設に入所してさまざまな支援を受けるのが「施設入所」です。
入所できる施設には、介護老人福祉施設(特養)や介護老人保健施設、介護医療院があります。
また、有料老人ホームや軽費老人ホームなどのうち指定を受けたものは、「特定施設入居者生活介護」と呼ばれ、施設入所と同じようにサービスが受けられます。特定施設入居者生活介護のなかには、外部の事業者と連携してサービスを提供している場合もあります。
さらに、認知症の方が少人数で生活を送るグループホームは介護保険制度上、居宅サービスに分類されていますが、居住系サービスともいわれており、施設サービスとほぼ同様のサービスと考えてよいでしょう。
▶ 介護医療院とは?
▶ 有料老人ホームとは?
▶ 軽費老人ホームとは?
▶ 認知症グループホームとは?
介護保険サービスとして、福祉用具のレンタル・購入も可能です。レンタル品は13品目あり、要介護度によってはレンタルできないものもあるため注意が必要です。
介護保険を利用して購入できるものは6品目あり、入浴や排泄などで使うものが該当します。令和6年度からはそれまでレンタルしかできなかったスロープ・歩行器・歩行補助つえが、レンタルと販売のどちらかを選ぶことができる選択制の対象になりました。(※それぞれ除外品があります)
その他に、手すりを工事して設置する場合などは、条件を満たせば住宅改修として介護保険が使えます。
介護保険の実際に使うときの流れは、以下のとおりです。それぞれの段階について、詳しく見ていきましょう。
図表1:介護保険を使うときの流れ
※一般的にケアマネがケアプランを作成しますが、必須条件ではありません
出典:サービス利用までの流れ|厚生労働省
介護保険を利用するためには、まず要介護認定を受ける必要があります。
住所地の役所にある高齢担当部署に申請を行いましょう。
申請は、お住いの地域を担当する地域包括支援センターや居宅介護支援事業所での代行も可能です。
申請時には、第1号被保険者は介護保険被保険者証を、第2号被保険者は医療保険証が必要です。
また、主治医の意見書も必要となるため、申請の1ヶ月以内に受診し、意見書を取得しておきましょう。主治医がいない場合には、市町村の指定医を教えてもらい、診察を受けます。ここで必要となる意見書については、作成料の自己負担はありません。
申請後、介護認定調査員から、調査の日程調整のための連絡が入ります。
ここで決まった日程に調査員が訪問し、心身状態の確認をするための調査が行われます。
初めての調査では、本人だけでは状態がうまく伝わらないことも多いので、本人のことをよく知る家族が同席したほうがよいでしょう。
本人の状態や家族の介護状況をしっかり伝えることで、実態に近い結果が出る可能性が高くなります。
介護認定の結果は、原則30日以内に出ることになっています。
しかし、自治体や申請の状況によっては、1~2ヶ月程度かかることもあるでしょう。
認定結果により、要介護度と認定期間を記した新しい介護保険証が郵送で送られてきます。
介護保険証が送られてきたら、ケアマネージャーにケアプランの作成を依頼するのが一般的です。(※)
ケアマネージャーは、利用者が自由に選ぶことができます。
ただし、要支援の場合は地域包括支援センターまたは居宅介護支援事業所が、要介護の場合は居宅介護支援事業所が担当することになっています。
ケアマネージャーには、実際に困っていることや使いたいサービスを伝えます。
すでに使いたいサービス事業所が決まっているときには、そのことも伝えましょう。
介護保険証が届いていないけれども、急いでサービスを使いたいという場合は、申請日以降であれば暫定利用ができます。
利用を急ぐときには、窓口や地域包括支援センターなどでその旨を相談しておきましょう。
介護保険サービスには、見学や体験ができるものもあります。利用者本人に合うサービスが利用できるよう、急ぐ場合でも見学や体験はしておいたほうが安心かもしれません。
(※)プランを自分で作成する「セルフプラン」という選択肢もありますが、制度の知識が必要になるため一般的ではありません。また、実際に介護保険のサービス利用した際に一旦、利用料金の全額をサービス事業者に支払い、後に市町村から自己負担分を除いた金額を払い戻す仕組み「償還払い」の場合は、ケアプランなしでサービスを利用できます。
使いたいサービスが決まり、ケアマネージャーがケアプランを作成する場合、ケアマネージャーがサービスを提供する事業所の担当者を招集して担当者会議を開催し、利用開始にあたっての情報共有が行われます。
事業所に伝えておきたいことや要望がある場合には、会議に参加して意見を述べるか、ケアマネージャーに事前に伝えておきましょう。
担当者会議でケアプラン内容を確認し、利用者本人又はその家族が同意すると、それぞれの事業所と契約を交わします。契約締結後は、いよいよサービスが利用できるようになります。
介護保険をどう使うかは、介護保険を利用する人がどのような生活を望んでいるかによって大きく異なります。
介護保険の使い方について知っておけば、もし急に、親に介護が必要となっても、相手の望む生活に合わせた使い方ができます。
親が元気なうちから介護保険の使い方を学び、いざというときに落ち着いて対応できるようにすれば、お互いに満足いく使い方ができるのではないでしょうか。
▶ 初めての介護でも安心!介護保険の使い方をわかりやすく解説
参考URL
介護保険制度の概要(PDF)|厚生労働省
公表されている介護サービスについて|厚生労働省
サービス利用までの流れ|厚生労働省
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
北海道介護福祉道場あかい花・代表/あかい花介護オフィス CEO
菊地 雅洋
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
社福の総合施設長から独立後、現在はフリーランスとして介護事業者の顧問指導・講演講師などを行っている。
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